糖尿病の低血糖症の原因とリスクとは!?対処や予防はどうすればいい?

2017/7/24 記事改定日: 2018/9/19
記事改定回数:2回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

糖尿病は体内でインスリンがうまくはたらかず、血糖値が下がらない病気です。一方、インスリンや薬などによって血糖値が正常値以下になってしまうことを低血糖症といいます。糖尿病治療につきものの、やっかいな症状です。
この記事では、糖尿病の人が陥る可能性がある低血糖について紹介しています。低血糖の原因や対処法をきちんと身につけておきましょう。

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糖尿病で低血糖が!?診断基準と症状

低血糖症は突然起こりやすく、その症状は様々です。自分だけで症状に対処できない状態を重度とし、とても危険な状態で直ちに治療が必要です。この状態は、1型糖尿病患者でより顕著といわれています。

低血糖の診断基準

低血糖症は、単に血糖値が低いだけでなく、低血糖特有の症状があることをいいます。血糖値は60mg/dl以下と定義されることが多いですが、人によっては60mg/dl以下でも全く症状がないこともあれば、60mg/dl以上でも強い症状が現れることもあります。

軽度から中度の症状

低血糖の症状には、大きく分けて低血糖のときに分泌が盛んになるカテコールアミンによる交感神経症状と糖分が足りないことで脳へのエネルギーが不足することによる中枢神経症状の2つがあります。

交感神経症状としては、震え、発汗、空腹感などを感じる人が多いです。一方、脳への糖分が不足した状態が続くと、視界がぼやけたり、眠気、めまい、混乱、集中力の欠如などが生じます。また、更に血糖値が下がると、顔色が悪くなり、体の動きがぎこちなく、過敏で神経質になったり、論争的になるなどの性格変化が生じることがあります。

重度の症状

血糖値が30mg/dl以下になると、脳だけでなく全身のエネルギーが不足して体が動かせなくなります。また、意識を失って痙攣することもあるでしょう。
しかし、突然これらの症状が生じるわけではなく、前段階として交感神経症状や軽度な中枢神経症状が出現しますから体からのサインを見逃さないことが大切です。

高血糖も低血糖も、認知症のリスクが上がるって本当?

糖尿病で高血糖状態が続くと、脳の血管に動脈硬化を引き起こし、認知症の中でも特に脳血管性認知症を発症しやすくなります。その発症リスクは血糖値が正常な人の2.5倍とされており、認知症の中で最も患者数が多いアルツハイマー型認知症も発症リスクが1.5倍になることが分かっています。

また、低血糖状態が続くことも、脳の活動に必要なエネルギー源であるブドウ糖が十分に補給されないため、脳の活動性が低下し、認知機能の悪化につながることもあります。
このように、認知症は血糖値に異常がある場合に発症するリスクが上昇します。認知症を予防するためにも適正な血糖値を維持するように心がけましょう。

低血糖発作が起こったときの対処法

低血糖発作は予期せず突然起こるものです。軽度な症状から重篤な症状まで様々ですが、糖尿病治療をしている人はいつ低血糖発作が生じてもいいように日頃から備えておくことが重要です。
低血糖特有の症状を自覚したら、できるだけ早く糖分を補給するようにしましょう。それは特別な薬でなくても、砂糖が多く含まれた飴や飲料でもよいのです。

では、低血糖特有の症状にはどのようなものがあるのでしょうか。低血糖症状を早い段階で自覚するために、低血糖の特徴と症状についてきちんと理解しておきましょう。

糖尿病で低血糖が起こる原因は?

低血糖はインスリンやスルホニル尿素薬などの比較的急速に血糖値を低下させる糖尿病薬の副作用として起こることがほとんどです。主治医とよく相談するとともに、食生活や運動習慣を薬に適応させていくことがたいせつです。また次のような要因でも、低血糖症が起こりやすくなるといわれています。

炭水化物の摂取量が少ない

糖尿病治療に合わせた炭水化物量を足らないと、血糖値が下がりすぎてしまう可能性があります。

食事を抜いたり、遅らせる

食事を抜いたり、遅らせたりすると、血糖値が低くなりすぎる可能性があります。低血糖は、睡眠で数時間開いたときにも起こることがあります。

身体活動の増加

日常の運動習慣よりも、運動をレベルを上げると、運動後24時間まで血糖値が低下する可能性があります。

お酒の飲みすぎ

特に空腹の状態でアルコールを摂取すると、血糖値を安定に保つのが難しくなります。アルコールの影響で重度の症状に気づけないこともあります。

体調を崩している

体調を崩すと、食べる量が不十分で低血糖を引き起こす可能性があります。

症状が現れない無自覚性低血糖に注意

無自覚低血糖とは、何の症状も感じていなかったにも関わらず、突然重度な低血糖発作を生じて昏睡状態となることをいいます。

通常、低血糖発作では、交感神経症状が出現し、次に中枢神経症状が現れます。多くの人は交感神経症状が生じている時点で体の異変に気づくものですが、高齢者などで自律神経に障害がある人、低血糖発作を繰り返していて体が低血糖に慣れてしまっている人などは交感神経症状を自覚できず、突然意識消失を来たすことがありますから注意しましょう。

低血糖の予防対策

インスリン、スルホニル尿素薬を服用している場合は、主治医の指示に従いながら、自らも血糖コントロールを意識しながら日常生活を送ることが重要です。

血糖値をチェックする
血糖値を知ることで、どれくらいの薬を飲むべきか、何を食べればいいか、そしてどれくらいの運動をすればよいのかを決められます。
こまめに軽食をとる
食事の管理は、低血糖を防ぐための鍵になります。三食以外にもこまめにビスケットのような軽食やおやつで炭水化物を補給すると、血糖値の低下を防ぎやすいです。また、アルコール飲料を飲むときは、つまみを一緒に食べるようにしましょう。
運動量を管理する
運動は、活動中およびその後数時間、血糖値を低下させる可能性があります。低血糖症を予防するために、運動の最中、前後に必ず血糖値を確認し、薬や炭水化物の摂取量を調整しましょう。

おわりに:生活習慣の把握・見直し、血糖コントロールを徹底しよう!

低血糖は、十分に注意していても発症してしまうことがあります。生活の中でどんなときに起こりやすいかなど、生活パターンと照らし合わせながら自分の低血糖症状を把握しておくと、事前に察知しやすくなるでしょう。また、過去に低血糖が起こった状況を踏まえ、主治医と相談のもと治療法を見直す必要がある場合もありますし、再発を起こさないようにライフスタイルを見直すことも重要です。

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