糖尿病網膜症の症状の特徴とは? 治療や予防はできるの?

2017/8/1 記事改定日: 2018/8/1
記事改定回数:2回

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

糖尿病網膜症は最終的には失明してしまう可能性のある、糖尿病になったら特に注意したい合併症のひとつです。今回の記事では、糖尿病網膜症の詳しい症状、治療法、予防法といった全般的な知識をお伝えしていきます。

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糖尿病網膜症はどんな病気?

糖尿病網膜症は糖尿病によって高い血糖値が持続することで引き起こされる細い血管の障害が原因で、目の奥にある血管豊富な網膜に問題が起こる病気です。
初期段階の症状から糖尿病網膜症には気づけないことが多いですが、以下のような症状があらわれると糖尿病網膜症である可能性が高くなります。

  • 徐々に視力が悪化する
  • 視界にもやもや(黒い点のようなもの)が浮かんで見える
  • 視界がぼやける
  • 色を識別しにくい
  • 目の痛み、または目が赤くなる
  • 失明する(通常、失明するまでには数年かかります)

糖尿病網膜症の発症段階について

精密眼底検査をすると、糖尿病網膜症は進行状況によって大きく三段階に分けられます。
それぞれの特徴を以下の文で見ていきましょう。

〈1〉単純糖尿病網膜症

この段階では細い血管の壁が盛り上がってできる毛細血管瘤や小さな出血がみられます。また、蛋白質や脂肪が血管から漏れ出て網膜にシミ(硬性白斑といいます)を形成することもあります。
この時期には自覚症状はほとんどなく、血糖値のコントロールが良くなれば症状が改善する可能性もあります。

〈2〉前増殖糖尿病網膜症

単純網膜症より一歩進行した状態で、網膜の細い血管が広い範囲で閉塞してしまうことで網膜に十分な酸素が供給されなくなり、新しい血管を作り出す準備(前増殖)を始めている段階です。
この時期になると目のかすみなどの症状を自覚することが多いのですが、全く自覚症状がないこともあります。

〈3〉増殖糖尿病網膜症

さらに進行した糖尿病網膜症は重症で、新生血管が網膜や硝子体に向かって伸びていきます。
その新生血管の壁が破れると、硝子体出血を起こすことがあります。
硝子体は眼球の中の大部分を占める透明な組織ですが、硝子体出血が起こると視野に黒い影やゴミのようなものが見える飛蚊症と呼ばれる症状を自覚したり、出血量が多いと急な視力低下を自覚したりします。
さらに、増殖組織といわれる線維性の膜が出現し、これが網膜を引っ張って網膜剥離を起こす危険性もあります。

また、この時期になると血糖の状態にかかわらず、網膜症が進行していきます。特に、年齢が若いほど進行が早い傾向があるので注意が必要です。

糖尿病網膜症になりやすいのはどんな人?

1型糖尿病または2型糖尿病の人は潜在的に糖尿病性網膜症を発症する危険性がありますが、以下に該当する人は特に発症リスクが高いといわれています。

  • 長い間糖尿病を患っている
  • 高血糖の状態が続いている
  • 高血圧である
  • 脂質異常症である
  • 妊娠している

上記に当てはまる場合は特に、定期的に眼科で検査を行って目の状態を医師に確認してもらうようにしてください。

糖尿病網膜症の治療法

糖尿病網膜症の治療で眼科医が一般的に推奨しているのはレーザー手術です。
レーザー手術では網膜の血管の成長や漏れを封鎖する、または破壊します。
術後の痛みは少ないというメリットがありますが、色の識別(特に夜間)が難しくなる可能性があるというデメリットがあります。

また、網膜と硝子体液(眼球を潤すゼリー状の物質)に血管が漏れていた場合は、「硝子体切除術」と呼ばれる手術が実施されるケースもあります。この手術では血液を取り除くので、術後の視界がよくなることが多いです。

目の状態によって適した手術法は異なるので、医師に相談しながら自分に合った治療法を選びましょう。

糖尿病網膜症の治療費に高額医療制度は使える?

糖尿病網膜症はレーザー治療など高額な医療が必要になることがあります。高額医療費制度を利用して家計への負担を少なくしましょう。

高額医療費制度とは、毎月1日から末日までにかかった医療費の自己負担額が上限を超えた場合、後から上限を超えた分の金額が払い戻される制度です。上限額は、年齢や世帯の所得によって異なりますが、70歳未満であれば約3万5千円~25万円、70~75歳未満の人では約8千円~25万円と幅があります。

払い戻しは、医療機関から発行される診療報酬明細書の審査後に行われますので、一般的には申請から払い戻しまでには3か月以上必要となります。事前に高額な医療がかかることが分かっている場合には、限度額認定証の交付を受ければ医療機関での支払いは限度額までとなりますので、ぜひ利用してください。
また、医療機関から発行された領収書などは医療費控除にも必要となりますので忘れずにとっておくようにしましょう。

糖尿病網膜症はどうやったら予防できる?

糖尿病網膜症は重篤な合併症ですが、適切な治療を行うことで予防できます。
また、一旦発症したとしても重症化するのを予防することができます(特に単純網膜症の場合は、適切な対処をすることで改善する可能性もあります)。
どのような予防方法があるのかを、以下にご紹介します。

眼科の定期検診を受ける

少なくとも年に1回は受診してください。糖尿病網膜症は初期段階ではほぼ何の症状も起こらないですが、未治療のまま放置すると失明の危険性があります。だからこそ、事前に検査を行い、視野に影響を及ぼす前に発見する必要があります。

血糖値、血圧、コレステロール値をコントロールする

血糖値が高い、血糖値が変動する、糖尿病にかかっている期間が長い、高血圧や脂質異常を合併しているなどの状態は糖尿病網膜症の発症リスクを高めるといわれています。
また、HbA1c、空腹時血糖値、食後2時間の血糖値が高いほど、網膜症が悪化することもわかっているので、予防のために血糖値、血圧、コレステロール値をコントロールを適切に行うことが大切です。

  • 処方された通りに糖尿病薬を服用する
  • 視野に何らかの変化があった場合はすぐに医師の診察を受ける
  • バランスの取れた食事と定期的な運動で適正体重を維持する
  • 禁煙する(タバコには糖尿病の合併症を早める働きがあるため)

おわりに:糖尿病網膜症は早期発見・早期治療が大切

糖尿病網膜症は最悪の場合は失明する危険性もある恐ろしい合併症です。
しかし、早い段階で治療をすれば症状の進行を食い止めることができます。現在糖尿病を患っている方は、定期的に眼科を受診して早期発見に努めるよう心がけてください。

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