記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
2017/8/9 記事改定日: 2018/8/2
記事改定回数:1回
記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
糖尿病の人が血糖値コントロールを怠って高血糖状態が続くと、糖尿病網膜症を合併することあります。糖尿病網膜症とは、どのような合併症なのでしょうか。
この記事では、糖尿病網膜症の特徴、発症のメカニズム、検査、治療と、一連の知識を紹介していきます。糖尿病の人はもちろんですが、最近太り気味という人や、血糖値が高くなりがちという人も参考にしてください。
糖尿病の患者は、糖尿病性網膜症にかかるリスクがあり、治療を受けないと視力を失う可能性があります。糖尿病性網膜症は、現役で働く人の視力喪失の原因の1つです。
糖尿病網膜症の初期段階では自覚症状はほとんど現れません。状態が悪化するにつれ、以下の症状が出ることがあります。
糖尿病性網膜症は、糖尿病(糖の蓄積)が小血管に影響を与え、網膜と呼ばれる目の部分が損傷されたときに起こります。網膜の中央領域(黄斑)の血管が障害を受けると、それは糖尿病性黄斑症という病気につながります。
血糖値が高い期間が長くなるほど、糖尿病網膜症を発症するリスクが高くなります。反対に、血糖値をきちんとコントロールできていれば、発症のリスクは低くなります。
糖尿病網膜症で失った視力を元の健康な状態に戻すことはできないので、早期に発見して進行を食い止めることが重要になってきます。そのため、糖尿病患者は、定期的な眼科医の診察が必要です。
目の検査は、視力の変化に気づく前の段階で網膜の異常を見つけるために行われます。
目の検査には約30分かかります
検査では、目の奥を調べ、網膜の写真を撮ります。
瞳孔を拡張させるための点眼薬(散瞳薬)を使って15〜20分経ったあと、網膜の撮影が行われます。
点眼薬を使うと、軽い目の痛みが起こったり、視界がぼやけるので、必要に応じて瞳孔が早く元に戻るような処置を行うことがあります。
通常、元の状態に戻るまでには2〜6時間かかるので、車やバイク、自電車での来院は控えましょう。
非常にまれなケースですが、散瞳薬の副作用が起こることがあります。
以下の症状が起こったときは、すぐに医師に伝えましょう。
検査結果は以下の種類に分けられます。
次の記載がある場合は、さらに検査が必要になる場合があります。
検査結果で異常がなくても、必ず1年ごとに検査を受けましょう。
糖尿病網膜症の治療では、次に挙げたものを管理しながら、糖尿病網膜症に対処します。
症状が改善しない時は、他の治療が必要な場合があります。
糖尿病網膜症の治療では、目に注射して黄斑浮腫を治療していきます。これは、異常な血管の成長や体液の漏れの原因となる体内のタンパク質をブロックすることが目的です。体液が漏れないようにすることで、浮腫を改善させ網膜を正常な厚さに戻すことができるといわれています。
レーザー治療では、目に点眼麻酔をして、網膜血管の漏れやすくなっている部分にレーザーを当て焼き固めて体液の漏れを少なくし、浮腫を軽減させます。
目の出血がひどい場合は、網膜硝子体手術と呼ばれる手術を受ける必要があります。この手術では、局所麻酔または全身麻酔を施します。眼球に3か所小さな穴をあけて細い器具を挿入し、血が混濁している硝子体のゲルを取り除きます。その後に、硝子体ゲルを灌流液に置き換えます。
糖尿病網膜症にならないように、目を健康に保つことができます。以下に挙げたことを試してみましょう。
糖尿病は薬によって血糖をコントロールすることも大切ですが、食事や運動などの生活習慣を見直すことも非常に重要です。糖尿病ですすめられる食事療法と運動療法は次のようなものです。
食事療法で大切なのは適正なカロリーの摂取と栄養素のバランスです。
一日に必要なエネルギー量は、「標準体重×身体活動量」で求められます。身体活動量とは、デスクワークなどが多い人を軽労作、立ち仕事が多い人を普通労作、力仕事が多い人を重労作とし、それぞれ20~30、30~35、35と決められています。
また、糖尿病の人の栄養バランスは全摂取エネルギーの内、炭水化物を50~60%、タンパク質を20%、脂質を25パーセント以下とすることが理想とされています。糖尿病の合併症である腎症が進行している人では炭水化物が更に制限されることもあるので、医師や栄養士の指示に従いましょう。
2型糖尿病の大きな原因の一つは「肥満」です。肥満解消には食事療法も大切ですが、運動習慣を身につけることで蓄えられた皮下脂肪を燃焼させ、減量を行うのが効果的です。
運動はウォーキングやスイミング、サイクリングなどのような有酸素運動が適しており、無理のない範囲で長く続けられることが重要です。年齢や体重、糖尿病の重症度によって行うべき運動の強度や時間などが異なるため、運動療法は必ず医師の指示に従って行うようにしましょう。
糖尿病網膜症は、糖尿病の人であれば誰でも起こりうるものです。定期的に目の検査を受け、見え方に異常を感じたらすぐに眼科を受診しましょう。
また、血糖値や血圧、血中コレステロールなどを管理するためには、健康的な生活を心がけることが大切です。摂取カロリーを控え、適度に運動するようにしてください。