記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
生理(医学的には月経というのが一般的です)が近づくと、イライラや頭痛、眠気、胸の張り、下腹部痛、むくみ、便秘、腰痛といった不快症状が現れる「PMS(月経前症候群)」。このPMSを治療するには、どんな方法が有効なのでしょうか?今回の記事では、PMSに効く主な薬やその副作用などについてご紹介します。
PMSの治療は、主に投薬によって行われます。基本的には、頭痛や腰痛などがあれば鎮痛薬を、イライラには抗うつ薬や精神安定剤を、むくみには利尿剤を、といったふうに各症状に合わせた対症療法になります。
ピルの服用によってPMSの治療を行うケースもあります。
PMSの発生メカニズムとして、そもそも排卵から月経までの期間(黄体期)には、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されるのですが、黄体期の後半には卵胞ホルモンと黄体ホルモンの分泌量が急激に低下し、脳内のホルモンや神経伝達物質が異常を起こすようになります。このホルモンバランスの乱れこそがPMSの主な原因と考えられていますが、ピルはエストロゲンとプロゲステロンを合わせた薬であり、排卵を抑制することでホルモンバランスをコントロールする効果があるため、PMSの緩和に効果的と言われているのです。
なお、通常処方されるのは低用量ピル(OC)になります。服用することによって、PMSだけでなく生理痛の緩和につながることも大きなメリットです。
低用量ピルは服用を開始したばかりの間は、頭痛や吐き気、胸の張り、不正出血などの副作用が現れることがあります。ただ、服用を続けていくうちにこれらの副作用は軽減する場合がほとんどです。
また、他の副作用として血栓ができやすくなるという点が挙げられます。低用量ピルは血液を固まりやすくする作用があるため、ピルを服用していない人と比べると、血栓の発生率がおよそ3〜6倍に上昇するとも言われています。これらの副作用が気になる場合は、自己判断で服用を中止せず、まず医師に相談することが大切です。
PMSの治療薬として、近年処方されることが増えているのが漢方薬です。
漢方では、PMSは子宮内膜や骨盤内の血液循環の変化に伴う「血」の異常、ホルモン量の変化による「水(水分)」の蓄積、「気」の流れの異常などが原因で引き起こされると捉えます。漢方薬は、体質に働きかけ、「血」「水」「気」を整える作用があるとされています。具体的にPMSで処方される漢方には、以下の種類があります。
イライラや不眠、冷えなどの改善に効果的とされます。虚弱体質な方に特に効果を発揮します。
めまいや頭痛、腰痛、足腰の冷え、動悸などの緩和に効果的とされます。虚弱体質な方に効果を発揮します。
イライラや抑うつ、めまい、肩こり、頭痛、ほてり、下腹部痛の緩和に効果的とされます。比較的体力のある方に向いた漢方です。
人によっては、漢方の服薬後に発疹やかゆみ、吐き気、食欲不振などの副作用が見られることがあります。症状に気づいたら服薬を一度中止し、医師や薬剤師に相談してください。
鎮痛薬や抗うつ薬、ピル、漢方など、PMSの治療に用いられる薬にはさまざまなものがあります。症状や体質によって合う薬は異なるので、専門医と相談の上、どの薬にするか決めていきましょう。また、投薬だけに頼るのではなく、日々の食生活などの生活習慣を改善することもPMSの治療の上では重要です。