記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
甲状腺機能低下症とは血液中の甲状腺ホルモン濃度が低くなり、身体の新陳代謝(エネルギー代謝)が悪くなり、体を動かしたり考えたりすることが鈍くなる状態です。ここでは甲状腺機能低下症の症状と原因についてご紹介します。
甲状腺は首の前部にあり、からだの代謝を活発にするホルモンを作る役割があります。その甲状腺が何らかの原因で十分なホルモンを産生しなくなり、甲状腺ホルモンの血中濃度が低下して代謝が滞る状態が甲状腺機能低下症です。
幼児や思春期の青少年、成人や高齢者の誰もが発症する可能性がありますが、特に50歳以上の女性は男性よりも甲状腺機能低下症になる可能性が高くなっています。また、甲状腺機能低下症は未治療のまま放置すると、肥満、関節痛、不妊症および心臓病などの病気を引き起こす恐れがあります。
甲状腺機能低下症になると血液中の甲状腺ホルモン濃度が低くなり、身体の新陳(エネルギー)代謝が悪くなります。そのため、以下のような症状が見られることが多いです。
・甲状腺腫(前頸部の腫れ)
・体重増加
・倦怠感がある
・疲れやすい
・まぶたが腫れぼったい
・寒気がする
・動作が遅くなる
・いつも眠たい
・物覚えが悪くなる
・便秘
・声がかすれる
また、小児の場合は学業不振(学校の成績が悪くなるなど)、身長の伸びの停滞などが認められることもあり、女性の場合は症状として月経過多が現れる場合があります。一般的に、症状はわずかな疲労からはじまり、ゆっくりと進行する傾向が高いです。
甲状腺機能低下症の最も一般的な原因は「橋本病」と呼ばれる自己免疫疾患です。橋本病は甲状腺の疾患で、免疫系が甲状腺を攻撃して腫れて炎症を起こします。それによって、甲状腺はホルモンを作ることができなくなるのです。
その他にも、甲状腺機能低下症を引き起こす主な要因として以下のものが挙げられます。
・甲状腺機能亢進症の治療による体内の甲状腺ホルモン量の過多
・先天性疾患
・下垂体障害
・妊娠
・ヨウ素欠乏
・自己免疫疾患の家族歴がある
甲状腺機能低下症は、主にヨード剤、ヨード含有薬剤、リチウム製剤、インターフェロン製剤などに誘発される可能性があります。また、甲状腺ホルモン剤と抗てんかん薬などを併用している場合、服用している抗てんかん薬の種類によっては甲状腺ホルモン剤の吸収を悪くしたり、甲状腺ホルモン剤の代謝(分解)を促進してしまうために症状が現れることもあります。
甲状腺ホルモンが過剰な状態で見られる症状は、脈が速い、心臓がドキドキする、体重減少、手のふるえ、汗をかきやすいなどがあります。
【出典: 厚生労働省ホームページを編集して作成 http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1d09.pdf】
「甲状腺機能低下症かな?」と思われる症状が見られた場合には、放置せずに医師や薬剤師に連絡し、医療機関を受診してください。その際には治療薬が原因となる、さらなる症状の悪化を避けるために、服用している医薬品の種類、量、期間などに加え常用している健康食品やサプリメントなどについても知らせるようにしましょう。