妊娠中に動悸や息切れが起こりやすい原因は何?

2017/3/14 記事改定日: 2018/3/22
記事改定回数:1回

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

妊娠中、特に妊娠初期と出産が近くなる妊娠8ヶ月以降になると「動悸」や「息切れ」が起こりやすくなるといわれています。
この記事では、妊娠中に動悸や息切れが起こりやすい原因と対処法をご紹介していきます。

妊娠初期に起こる動悸・息切れについて

妊娠初期には「プロゲステロン」という女性ホルモンの産生量が増えることで呼吸中枢が刺激され、動悸や息切れが起こりやすいといわれています。

また、貧血(鉄欠乏性貧血)も原因のひとつだと考えられます。
鉄欠乏性貧血は主に鉄不足によって起こる貧血で、鉄欠乏性貧血になると〈疲れやすい、動悸、息切れ、めまい、立ちくらみ、頭痛〉などの症状があらわれます。
これは、妊娠すると母体の体重が増加することと、胎児の血液を必要になるという理由で血漿量(液体成分)と赤血球量をあわせた血液量が増えても、赤血球よりも液体成分の血漿の増加量が多いために血液が薄まった状態になるからです。
貧血は妊娠中に起こりやすい生理的現象ですが、妊娠前から貧血気味の人は妊娠初期から鉄欠乏性貧血を発症する傾向があります。

〈貧血が動悸・息切れを引き起こすメカニズム〉

貧血になると動悸・息切れが起こるのは、酸素を運ぶ役割がある「ヘモグロビン」が不足するからです。
ヘモグロビンが不足すると酸素不足となり、酸素不足になると心臓が酸素を補おうとするために動悸・息切れ、めまいなどの症状があらわれます。

〈妊娠初期は安静に〉

動悸・息切れの症状があってもなくても、妊娠初期には激しい運動は控え、ゆったりと日常生活を送るように心がけましょう。
辛い場合は我慢せずに横になって休み、なかなか改善しない場合は医師の診察を受けてください。

妊娠後期の動悸・息切れの原因

個人差はありますが、妊娠後期(妊娠8ヶ月以降)もまた動悸・息切れが起こりやすい時期です。

〈1〉貧血(鉄欠乏性貧血)

妊娠初期と同様に、妊娠後期にも貧血による動悸・息切れが起こりやすくなります。
全身の酸素不足のために疲れやすさや倦怠感を感じる妊婦さんもいますが、自覚症状がないことも少なくないようです。
重度の貧血の場合は、子宮にも酸素がいきわたらずにお腹の赤ちゃんに影響が出る可能性もあるため、きちんと予防・対策する必要があります。

〈2〉血圧の低下

動悸を感じる原因2つ目は低血圧です。
この時期は子宮の底部がみぞおちにまで達していることも多く、胃が圧迫されて食事が取れずに血圧が下がりやすくなってしまいます。
また、特に妊娠8ヶ月頃になると大きくなった子宮に圧迫されるため、妊婦さんの心臓に負担がかかりやすくなることも動悸・息切れが起こりやすくなる原因のひとつです。

〈3〉自律神経の乱れ

自律神経は心臓を動かしたり汗をかいたり・・・など、意識しなくても自動的に働いている神経のことで、交感神経と副交感神経の2つに分類され、必要に応じて自動的に切り変わっています。
妊娠後期になると動悸・息切れが多くなるのは、出産に向けたホルモンバランスの変化によって自律神経が乱れやすくなるためだと考えられています。

動悸・息切れの予防・改善方法について

妊娠中の動悸・息切れは生理現象なので完全に防ぐことはできませんが、ある程度予防&改善することができます。
貧血や低血圧にお悩みの場合は、以下にご紹介する方法を参考にしてみてください。

〈1〉貧血を予防・改善するには

貧血の改善には鉄分の多い食品と、鉄分の吸収を高めるビタミンCを同時に摂取する方法がおすすめです。
具体的に鉄分を多く含む食材には
・レバー
・うなぎ
・豚肉
・牛もも肉
・ひじき
などがあり、植物性食品よりも動物性食品の方が体内にやや吸収されやすいといわれています。
ただし、レバーやうなぎには鉄分と同じくビタミンAが多く含まれているため、妊娠中特に初期は過剰に摂取すると赤ちゃんが天性異常につながる危険性があるため、摂取量には注意が必要です。

また、鉄分は食品からとるだけではなく、内服薬や注射から摂り入れる方法もあります。
胃腸障害により鉄吸収が低下した場合や、早急に鉄分が必要な場合には注射を用いることが多いです。

〈2〉低血圧を予防・改善するには

低血圧の予防や対策に効果的なのは塩分やタンパク質の摂取です。
塩分は血管を収縮させて血圧を上げたり食欲を増進させる働きがありますが、高血圧やむくみの原因になるので、とりすぎには注意してください。
また、血圧は毎日同じタイミングで食事をとることで正常値を保ちやすくなるので、できるだけ同じ時間に食事をすることも大切です。

安静にしていても動悸・息切れが治まらない場合は注意!

妊娠中に動悸や息切れが起こるのは珍しくないことですが、まれに合併症のサインとしてあらわれている可能性もあります。
代表的なのは「周産期心筋症」という妊娠の合併症で、それまで心臓に異常がなくても妊娠によって突然心機能が低下して心不全を発症する病気です。
安静にしても動悸や息切れが治まらない、倦怠感や全身のむくみ、咳など、他の症状が同時に見られる場合は、できるだけ早く産婦人科で診察を受けてください。

おわりに:妊娠中は動悸・息切れが起こりやすい

特に妊娠初期と妊娠後期には体の変化によって、普段よりも動悸・息切れが起こりやすくなります。
心配しすぎる必要はありませんが、症状が辛い場合や動悸・息切れの他に倦怠感や咳などの症状があらわれている場合は、できるだけ早く産婦人科を受診してください。

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