記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
“万能薬”のような感覚で、簡単に飲んでしまうアスピリン。身近な薬ですが、正しい飲み方を守らず過剰服用してしまうと、重篤な副作用のリスクがあるので注意が必要です。ここでは、アスピリンに関して、さまざまな角度からの情報をお届けします。
アスピリンは、軽度から中程度の痛み(頭痛、偏頭痛、喉の痛み、筋肉痛や生理痛など)を和らげたり、熱を下げたり、炎症を抑えたりするために使われます。また、アスピリンには抗凝血作用があるので、血栓を予防するために使われ、脳卒中や心臓発作のリスクを減らすためにも役立ちます。
・入手できる形態:錠剤、発泡錠
・はたらき:痛み、熱、炎症を軽減する
・過剰服用のリスク:高い
・依存するリスク:低い
・ジェネリック医薬品として入手できるか:できる
・処方薬でしか入手できないのか:処方薬でなくても入手できる
アスピリンには、消化不良や胃の内壁の炎症、胃潰瘍や出血の副作用が起こるリスクがあります。ただし、分散性、あるいは腸溶コーティングのアスピリンであれば、このような副作用を軽減することができます。
胃への炎症作用を軽減するために、アスピリンは食後の服用が推奨されています。
アルコールと一緒に服用してはいけません。アルコールによって胃への副作用が起こる可能性が高くなるかもしれないからです。
また、喘息持ちの人はアスピリンが発作の引き金となるおそれがあるため、アスピリンを服用できない場合があります。
16歳以下の子供(若年性特発性関節炎―子供の関節炎で、最低でも3ヵ月は持続し、原因が明らかになっていない―である子供は除く)もアスピリンを服用すべきではありません。非常にまれではありますが、ライ症候群という、脳と肝臓に関する死に至る可能性のある病を引き起こすかもしれないからです。
その他、痛風の人もアスピリンの使用は避けるようにしましょう。アスピリンは尿酸(組織内、ときには関節の周りに結晶沈殿物を形成するおそれのある代謝老廃物)を増やし、尿酸の代謝を抑制する作用があるためです。
アスピリンは推奨された以上の量は服用せず、4時間ごとより短い間隔では服用しないようにしましょう。
・効果の発現:およそ60分以内
・作用の持続時間:最大12時間(高凝血効果は数日間続きます)
・食事のアドバイス:アスピリンは、腸溶コーティングの錠剤を服用していたとしても、いつも食事と共に、あるいは食後すぐに服用することが望ましいです。
・薬の服用を止める判断:凝血を防ぐために医者からアスピリンを処方されたのであれば、服用を止める前に医者に相談しましょう。
痛みや熱、炎症を和らげるために市販のものを使っていた場合には、必要でなくなったときに服用を止めることができます
・長期的な使用:少量(主に抗凝血作用のため)の場合のみ、長期的に服用することが望ましいです。量が多い場合には、医者の相談なしに2日以上服用しないようにしましょう。
以下のようなケースに当てはまる場合には、服用前に医師に知らせましょう。
・ぜんそくである
・16歳以下である
・鼻ポリープがある
・非ステロイド性抗炎症薬に対してアレルギー反応を起こしたことがある
・ワルファリンを服用している、あるいは出血障害がある
・脱水症状である
・胃潰瘍、あるいは十二指腸潰瘍である
・痛風である
・手術をする予定である
・他に薬剤を服用している
・妊娠中である:服用を避けましょう。胎児への潜在的なリスクが報告されています。妊娠している、あるいは妊娠する予定である場合には、服用前に医師に相談しましょう。
・母乳育児中である:服用を避けましょう。この薬剤は母乳の中を通っていってしまうので、逆に赤ちゃんの方に影響が及ぶかもしれません。服用前に医師に相談しましょう。
・ポルフィリン症:服用することができます。
・乳幼児と子供:この薬は子供を対象としたものではありません。
・高齢者:高齢者は副作用が起こりやすいので気をつけましょう。
・運転や有害業務:特別な注意事項はありません。
・アルコール:アルコールと一緒に薬を服用しないようにしましょう。アルコールによって胃腸における症状が悪化してしまうリスクがあります。
アスピリンに関して、その飲み方や副作用、とくに注意すべきことなどをお届けしました。大人なら簡単に手に取ってしまう、なじみの深い薬だけに、その特徴をよく理解したうえで服用しましょう。