記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
テレビや雑誌、ウエブサイトなどで、血糖値ということばがよく出てくるでしょう。特に、健康診断の時期では、その数値が話題になることが多いと思います。気になる血糖値とはどんなものでしょう? この記事でまとめてみました。
血糖値とは、血液の中の糖分の値です。その数値が高いと、体に悪影響が出ます。
グルコースは食べた食品から得られる糖分です。体はそれを活動のエネルギーとして使います。グルコースは血液の流れを通って細胞に届けられ、血液中に含まれる糖分のことを血糖と呼びます。
血糖値は、血液中に含まれる血糖の量を数値化したものです。血糖の量が増えると、血糖値が高くなります。
インスリンは、グルコースをエネルギーに変え、貯蔵するために、血液から細胞に移動しているホルモンです。何らかの原因で、血液中のインスリンがうまく働かずグルコース(糖分)がエネルギーに変わらないと、血液中の糖分の量が高くなってしまいます。これが血糖値が高い「高血糖」という状態です。
グルコースは主にパン、イモ類、果物といった炭水化物が豊富な食べ物から摂取されます。
食事をすると、食べ物は食道を下り、胃に到達します。胃では、酸と酵素と胃の蠕動運動によって食べ物が細かく分解され、粥状の内容物になります。その後、小腸でグルコースに分解されると、すぐに小腸で吸収され、血液中に入るのです。血流に入ったグルコースは、インスリンによって細胞に取り込まれるように促されます。
体は血液中のグルコースの分量を保つようになっています。膵臓のβ細胞は数秒ごとに血糖値を監視しています。
食後に血糖値が上昇すると、β細胞はインスリンを血流中に放ちます。インスリンは鍵のように、筋肉、脂肪、肝細胞を開くので、グルコースはそこから中に入り込むことができるのです。
体のほとんどの細胞はグルコースと並んでアミノ酸(タンパク質の構成単位)と脂肪をエネルギーに使います。しかし、グルコースは脳の主要な栄養源です。神経細胞と化学伝達物質は情報を処理するためにグルコースを必要とします。グルコースなしには、脳はよく働くことができないのです。
必要としていたエネルギーを燃焼した後、使われずに残ったグルコースは、グリコーゲンという形になり、肝臓と筋肉に貯蔵されます。体は約1日を過ごすのに十分なグルコースを蓄えることができます。
何時間か食べていないと、血糖値は下がります。膵臓はインスリンを作り出すのを止めます。膵臓のα細胞はグルカゴンという、違ったホルモンを作り始めます。グルカゴンは肝臓に貯蔵されているグリコーゲンを壊し、グルコースに戻すよう信号を出します。
再び食べることができるまで、グルコースは需要を満たすために血流に移動します。肝臓は不要物やアミノ酸、脂肪の組み合わせを使って独自のグルコースを作ることもできます。
食後、血糖値は上昇します。そして数時間後インスリンがグルコースを細胞に移動すると血糖値は下がります。
食事と食事の間の血糖値は100mg/dl以下が適当です。これは空腹時血糖値と呼ばれます。
糖尿病には2種類あります。
1型糖尿病は、体には十分なインスリンがありません。免疫システムがインスリンの作られる膵臓の細胞を攻撃し、破壊してしまうからです。
2型糖尿病では、細胞が本来のようにインスリンに反応しません。そのため膵臓はグルコースを細胞に動かすためにより多くのインスリンを作らなくてはなりません。働きすぎた膵臓は、損傷し、体が求めるだけのインスリンを作ることができなくなってしまうのです。
十分なインスリンがないと、グルコースは細胞内に移動できず、血糖値は高いままになってしまいます。食後2時間経っても200mg/dl以上、あるいは空腹時に125mg/dl以上であれば高血糖といわれます。
また、血液中のグルコースが多すぎる状態が長時間続くと、血液を臓器に運ぶ血管が傷つくことがあります。
そのため、血糖値が高いと、
・心臓病、心臓発作、脳卒中
・腎臓病
・神経損傷
・網膜症という眼の病気
のリスクが高まります。
糖尿病の人は、血糖値を頻繁に測る必要があります。運動、食事、薬で血糖値を健康な範囲に保つことで、上記にある合併症を防ぐことは可能です。