記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/8/22 記事改定日: 2018/9/25
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
健康診断などで、脂肪肝を指摘されたことはありませんか? 今までは、脂肪肝といえば大量飲酒が原因と捉えられていましたが、近年は飲酒が原因でない脂肪肝が増えています。この記事では、脂肪肝の原因や肝臓脂肪を減らす方法についてまとめています。
脂肪肝は、肝臓に中性脂肪がたまった状態のことをいいます。
摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ると、余分なエネルギーはグリコーゲンや中性脂肪につくり替えられ、体にたくわえられます。中性脂肪は内臓脂肪や皮下脂肪組織にたくわえられるほか、肝臓にも貯蔵され、肝細胞の30%以上に中性脂肪がたまると脂肪肝と診断されます。
脂肪肝の初期にはほとんど症状はありませんが、やがて肝炎を起こし肝硬変に進行することもあります。
肝臓にたまる脂肪そのものは内臓脂肪から区別されますが、脂肪肝の多くはメタボリックシンドロームを合併しており、脂質異常症(高中性脂肪・高LDLコレステロール・低HDLコレステロール)を起こしやすく、放置すると肝炎などを引き起こし、動脈硬化の重要な原因になります。糖尿病を合併する人も少なくありません。
非アルコール性脂肪性肝炎の場合、ほとんどの人では無害であり、肝臓の働きにも影響しません。 しかし、まれに肝臓の機能を停止させる可能性があります。早期に発見し、治療することが大切です。進行すると肝臓が腫脹し、肝硬変や肝がんになる恐れもあります。
脂肪肝からなる肝炎の原因のほとんどは過食と多量飲酒ですが、糖尿病・ステロイド剤の服用・栄養障害による代謝異常なども原因になります。
非アルコール性脂肪性肝炎の主なリスク要因は肥満、糖尿病、高コレステロールなどの生活習慣の乱れであり、 アルコールを飲むことによって引き起こされるものではありません。
また、特定の医薬品や遺伝病を含むさまざまなものが、非アルコール性脂肪性肝炎のリスクを増加させる可能性もあります。
なぜ肝臓の機能に問題が出るかははっきりわかっていませんが、糖尿病や太りすぎの人は腎臓の病気が関係していると考えられています。
脂肪肝は、生活習慣病を発端とする肝臓病のため、治療は食習慣や運動、睡眠など生活習慣の改善がメインになり、
脂肪肝と診断されると、動脈硬化による生活習慣病の予防の観点から生活指導や肥満・糖尿病・脂質異常症の治療が行われます。
しかし、非アルコール性脂肪性肝炎の場合、体重を急激に落とすと症状が悪化することがあります。 安全で健康的に体重を減らすためにどうしたらいいかを、医師に相談するようにしてください。
コレステロール値や血糖値が高い場合は、薬物療法が必要になることがあります。 服用している薬が非アルコール性脂肪性肝炎を引き起こしている可能性があるときは別の薬に切り替えます。
非アルコール性脂肪性肝炎は単なる脂肪肝ではなく、肝硬変へと進行したり肝臓がんになるケースがあるため、肝臓自体の予防の観点からも、医師の指導のもと、治療を行うことが重要です。
脂肪肝を予防するためには、適正カロリーを遵守したバランスの良い食生活を心がける必要があります。
適正カロリーは「標準体重×25~30kcal」で計算でき、豆腐や魚などの良質なタンパク質と野菜を中心として、脂質の摂取量を減らす必要があります。また、糖質の摂りすぎやアルコールの多飲は肝臓に脂肪を蓄える原因となりますので、完全に糖質やアルコールを断つ必要はありませんが、適度な摂取に控えるようにしましょう。
さらに、運動不足が続くと、エネルギーの必要量が減少し、適正カロリー量を遵守していても肥満傾向になることがあります。また、運動は体内の脂肪を燃焼させる効果があります。このため、脂肪肝を防ぐにはウォーキングやサイクリングなどの有酸素運動を一週間に3回程度30~60分を目安に行うのが理想的です。仕事などで忙しく、運動する機会が少ない場合でも、通勤時に一駅分歩く、階段を使いようにするなど日頃から体を動かす習慣を身に着けるようにしましょう。
脂肪奸が進行すると肝炎を起こす場合があり、肝炎には、アルコール性と非アルコール性の2種類があります。
2つの肝炎の組織像は類似しており、肝臓内の酸化ストレスなど共通の発症メカニズムが研究されています。
アルコール性肝炎は常習飲酒家で大量飲酒後に発症し、多くの場合、食欲不振・だるさ・発熱がみられます。肝臓自体は痛みを感じることがない臓器ですが、アルコール性肝炎のときは肝臓が腫れ右上腹部に痛みが出現し、黄疸も見られ、尿の色が紅茶色になります。ひどくなると腹水とむくみが出現することもあります。
飲酒歴がはっきりしていれば診断は容易といわれています。アルコール性肝炎にも重症型アルコール性肝炎と呼ばれる病態があり、いずれも救命率が低い重篤な肝炎です。
多量飲酒者が必ずアルコール性肝炎を発症するわけではなく個体差があり、女性のほうが少ない飲酒量で男性よりアルコール性肝障害を起こりやすいと考えられています。一度アルコール性肝炎を発症したことがある人は、飲酒によりアルコール性肝炎を繰り返しやすく、次第に肝硬変へと進行していくこともあります。また、アルコール性肝炎の発症歴がある人はアルコール依存症が背景にある人が多く、この場合アルコール依存症の専門治療も必要です。
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH: nonalcoholic steatohepatitis)は、過食・運動不足・肥満(特に内臓脂肪型)・糖尿病・脂質異常症などに合併した脂肪肝を背景として発症する肝炎です。飲酒しない人であれば非アルコール性ということは明白ですが、多くの脂肪肝は飲酒と飲酒以外の要因の両者が関しており、アルコール性肝炎や非アルコール性脂肪性肝炎にも当てはまる部分があるはずです。
非アルコール性脂肪性肝炎NASHは比較的新しい疾患概念であり、日本には経過を追った大規模な研究がなく、どの程度の頻度で発症し、どの程度の人が肝硬変や肝臓がんにまで進行するのが明らかになるまでには、今後の多くの研究を待たなければなりません。しかし肥満人口の増加とともに今後NASHの増加が予想されています。
非アルコール性脂肪性肝炎になっても、腹部の中央または右上側に充満または痛みを感じることがありますが、多くの人は何の症状もありません。ただ、非アルコール性脂肪性肝炎を患った人の中には、 疲れやすいと感じる人もいるようです。
脂肪肝を診断するためには、血液検査や、肝臓の検査、また、肝臓病の重症度が高い場合は、皮膚に針を挿入して肝臓から小さな組織片を採取し顕微鏡下で観察する肝生検が必要な場合があります。診断されたら、医師の指導の下、治療を行いましょう。
また、脂肪肝と診断されなくても、年齢とともに発症するリスクは誰にでもあります。健康診断などの定期的な検査を受け、医師の指導に従いましょう。
この記事の続きはこちら