空腹時血糖値が高くなる 原因と対処法とは!?

2017/8/10 記事改定日: 2018/8/27
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

一般的に空腹時には血糖値が下がりますが、何らかの原因によって血糖値が下がらない「空腹時血糖値が高い状態」が続くと糖尿病の発症リスクが高まります。今回は空腹時に血糖値が高くなる原因と対処法について解説します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

空腹時血糖値が高くなる原因とは!?

空腹時血糖値とは、文字通り空腹のときの血糖値のことであり、一般的には夕食後に水以外のものを口にせず、10時間から14時間絶食したあとの翌朝に計測します。

通常、食後は血糖値が上がります。血糖値が上がると膵臓のベータ細胞からインスリンが放出され、インスリンの働きでブドウ糖が体の細胞に入り、エネルギーのために使われたり、必要なものの一部はグリコーゲンとして脂肪細胞や肝臓に蓄えられます。このようにブドウ糖が血液から細胞へと移って代謝すると、血糖値は下がり、正常の範囲内の血糖値(70 mg/dl~120 mg/dl)を保つことができます。

空腹時血糖値が正常値よりも高くなる原因には、以下のようなものがあります。

遺伝
血糖値が高くなりやすい体質が遺伝する場合があります。家族に糖尿病患者がいる場合は、可能性が高くなるので注意しましょう。
肥満
肥満の人は中性脂肪を蓄える脂肪細胞が多く、この脂肪細胞がインスリンの効きを悪くする「インスリン抵抗性」を生じさせます。また、肥満になると必要なインスリンの量も増えるため、結果としてインスリンが不足してしまい血糖値は高くなります。
食事
血糖値は、摂取したものに含まれる糖質の量に影響されます。たくさん糖質を摂取すると、インスリンの分泌が間に合わず血糖値が高くなります。
過剰なストレス
ストレスを感じると、交感神経が刺激され、血糖値を高くするホルモンが分泌されます。
喫煙
喫煙している場合、糖尿病になる可能性が高くなるといわれています。また、すでに糖尿病の人は、喫煙によって適切な量のインスリンを投与したり、血糖をコントロールすることが難しくなる可能性が高くなります。
病気
  • 肝臓の疾患が原因で肝臓の機能が低下すると、糖代謝が上手くできなくなります。その結果、血糖コントロールできなくなり血糖値が高くなります。
  • 膵臓の疾患により、膵臓の「インスリンを分泌する機能」が低下すると血糖値が高くなります。
  • 内分泌疾患により、血糖を上昇させる作用を持つコルチゾールや成長ホルモン、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると血糖値が高くなります。

空腹時血糖値が高いまま放置するとどうなる?

空腹時に血糖値が高いからといって、何らかの症状が引き起こされるわけではありません。しかし、血糖値が高い状態のまま放置すると、2型糖尿病を発症するリスクが高くなるのです。

正常値であっても、上限に近い値の人は10年後に2型糖尿病を発症するリスクが正常な人に比べて6倍以上高くなっていることが分かっています。
2型糖尿病を発症した場合でも初期段階ではほとんど自覚症状がなく、視力障害や腎障害などの合併症を併発して初めて病院を受診して発見されるケースもあります。また、一度2型糖尿病を発症してしまうと厳密な血糖コントロールを生涯に渡って続ける必要があり、日常生活にも大きな支障が出てくるでしょう。
2型糖尿病の発症を予防するためにも空腹時血糖が高い人は放置せずに血糖値を下げる努力をしましょう。

空腹時血糖値を下げることはできる?

空腹時血糖値を下げるには、食事と運動の二つが基本です。以下に空腹時血糖を下げる食事と運動をご紹介します。

食事

以下のことに気をつけ、炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン・ミネラル、食物繊維の栄養バランスが整った食事を心がけましょう。

間食を控え、不規則な食事をしない

間食で糖質を摂取すると血糖値を上昇します。これは血糖値が高いまま次の食事を摂ることになるため、さらに血糖値が高くなりますし、血糖値が高い状態が長く続くことにもなります。また、食事の時間が不規則になると、血糖値が不安定になりるため、なるべく決まった時間に食事をするようにしましょう。

ゆっくりと、良く噛んで食べる

食事を摂る時は、良く噛み、ゆっくり食べて消化吸収のスピードを抑え、血糖値が急に上がらないようにしましょう。よく噛むことは満腹感を得やすくなるので、食事量を抑えることにも役立ちます。また、食べる順番を工夫することも大切です。野菜やキノコ、海藻類から食べ始め、次に肉や魚などのタンパク質、最後に米などの炭水化物を食べることで糖質の吸収が緩やかになり、血糖値の急上昇を予防できます。

運動

ウォーキングや簡単な家事のような軽い運動でも、血糖値を下げる助けになります。運動の目安は以下のとおりです。

  • 食後30分~2時間の間に運動を行う
  • 20分以上の有酸素運動
  • ストレッチと筋力トレーニング
  • 生活の中にも運動を取り入れる

おわりに:生活習慣や食事を見直して、空腹時血糖値を下げよう

空腹時血糖値が高いと、糖尿病の発症リスクが高まります。できるだけ運動したり、健康的な食事をとるように心がけ、血糖値が上がらないような対策をしましょう。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

血糖値(78) 高血糖(32) 空腹時血糖値(7)