ノロウイルスで出勤していいのはいつから?職業別の対処法について

2017/8/17 記事改定日: 2018/3/31
記事改定回数:2回

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

毎年冬に大流行する「ノロウイルス」ですが、もし感染してしまった場合、出勤していいのはいつからでしょうか?職場復帰時期の目安と注意点をお伝えしていきます。
また、ノロウイルス感染症に注意するべき業種、飲食店と保育施設での対処法についても紹介しています。

症状が落ち着いたら、会社に行っても大丈夫?

「ノロウイルス=生牡蠣を食べると感染する」と思っている方はたくさんいるかと思いますが、ノロウイルスの感染経路はそれだけではありません。

ノロウイルス患者からの接触感染、比較的狭い空間ではウイルスのエアロゾル(微小な液体や固体の粒子)による空気感染によってもうつることがあります。そしてその感染力は非常に高く、症状が消失した後も14日間ほど患者の便中にウイルスが排出されると考えられています。以上のことから、症状が落ち着いてからも1週間程度は出勤を控えることが望ましいといわれています。

職場に復帰したときの注意点

出勤せざるを得ないときは、周囲の人への感染拡大を予防するために、必ずマスクを着用し、徹底的な手洗いを行うようにしてください。手洗いは、手指に付着しているノロウイルスを減らす最も有効な方法といわれています。爪は短く切っておき、指輪をはずし、石けんを十分泡立てて手指を洗いましょう。すすぎを十分に行い、清潔なタオルかペーパータオルで拭くのがベストです。

飲食店は特に注意が必要!

飲食店に勤務する人は大勢の人が口にする食品を扱います。ですから、飲食店に勤務する人がノロウイルスに感染して、ウイルスを排出している状態で仕事をしてしまうと、お客さんに提供する食品にウイルスが混入し、大勢の感染者を出すことがあります。

日本で起きる食中毒の中で最も患者数が多いのはノロウイルスといわれています。ノロウイルスは感染力が強く、ごく少量のウイルスでも感染したしまうため、大規模な食中毒事件に発展しやすいです。保健所に食中毒と認定されると営業停止命令が発動され、風評被害や損害賠償などを受けることがあります。ですから、飲食店でのノロウイルス対策は非常に重要になってくるのです。

飲食店では、職員の体調管理だけでなく、職員の家族がノロウイルスに感染していた場合にも直接食品に触れるような業務は外れた方が無難です。また、トイレや厨房などの消毒は徹底しましょう。ノロウイルスは一般的に消毒に使われるアルコールが効かず、消毒にはハイターなどの次亜塩素酸を用いるようにしましょう。

保育施設に潜伏する可能性も

保育園や幼稚園では、園児同士の密接な触れ合いが多い上に、排便後の処理や手洗いなどがうまくできない年齢ですから、ひとたびノロウイルス患者が出ると園内での大流行へと発展します。

保育施設での対策として重要なことは、ノロウイルスを持ち込まない・広げないということです。持ち込まないためには、下痢や嘔吐を繰り返す園児の登園を控えるように指導することも重要ですが、職員がノロウイルスに感染しないように日頃から職員自身や家族の感染予防が大切です。
また、ノロウイルスを広げないためには、施設内でノロウイルス患者が嘔吐や下痢をした場合、次亜塩素酸での消毒など適切な処理を行うように心がけましょう。

ノロウイルスの治療について

ノロウイルス腸炎の主な症状は、吐き気や嘔吐、下痢です。その他にも、腹痛や頭痛、発熱、だるさなどが現れることがあります。基本的には特別な治療をしなくても1~2日で回復していきますが、乳幼児や高齢者など免疫力の弱い人は、脱水症状や窒息を起こす可能性があります。

重症になったときの治療方法は?

ノロウイルスにはウイルスを殺すような特異的な治療はありません。基本は下痢や嘔吐による脱水症の治療になります。下痢や嘔吐を繰り返していてもきちんと水分が摂れているようであれば問題ありませんが、水分が十分に摂れないときや、水分の摂取量に対して下痢や嘔吐がひどいときには、点滴をすることがあります。

また、自己判断で市販の下痢止めを飲むのはやめましょう。下痢止めを飲んでしまうと、体の外に排出されるはずのウイルスが体の中に留まってしまい、かえって症状を悪化させる可能性があります。

おわりに:仕事も気になるけれど、まずは自分の体を健康にすることを優先しよう

仕事内容や職場環境によっては、なかなか仕事を休めない人も多いかと思います。ただ、ノロウイルスは胃腸症状が辛いだけでなく、感染力が強いので、無理して出勤すると職場の人にうつしてしまう恐れも出てきます。自分のためにも周囲のためにも、まずは自分の体を健康にすることを優先させましょう。

【出典: 国立感染症研究所HP 厚生労働省HPを編集して作成】

https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/452-norovirus-intro.html 
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html

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