記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
「食べ過ぎると頭痛の原因になる」と言われる食べものの代表にチョコレートがあります。しかし、中には「チョコレートを食べて頭痛が治った」という声もあります。チョコと頭痛の関連性やチョコの持つ効果などについて、以降で詳しく見ていきましょう。
片頭痛(ズキンとした脈打つような痛みが、こめかみ周辺に突発的に現れるタイプの頭痛)は脳の血管の拡張が原因で起こる症状ですが、チョコに含まれるポリフェノールには血管を拡張する作用があるため、食べ過ぎると脳血管が拡張しすぎて神経が刺激され、頭痛が出てくることがあります。
また、チョコはチラミンという成分も多く含んでいます。チラミンは血管を収縮させる効果がありますが、その効果が切れると脳の血管は反動を起こして急に拡張し、片頭痛が引き起こされることがあります。
ワイン、ナッツ類、柑橘系の果物、レバー、キムチなどは、チラミンを豊富に含んでいるため注意が必要です。
また、アルコールには血管拡張作用があるため、アルコール飲料全般も片頭痛を引き起こす可能性があります。
その他、ホットドッグやハムなどに含まれ、発色剤として使われる亜硝酸ナトリウムも、血管を拡張させる作用があるため、片頭痛発症の可能性を高めるといわれています。
さらに、うまみ調味料(化学調味料)の主成分、グルタミン酸ナトリウムもまた片頭痛の引き金のひとつです。グルタミン酸ナトリウムはインスタント麺やスナック菓子に含まれていることが多いので、習慣化しないよう気をつけましょう。
カフェインはコーヒーだけでなくチョコにも含まれており、一般的なミルクチョコレートには約30mg/100g、高カカオチョコレートには約70~120mg/100gのカフェインが含有されています。
カフェインは中枢神経を刺激し、集中力を高める作用がありますが、日頃からコーヒーなどを摂取している人の場合はカフェイン耐性がつき、摂取をしなかったときに頭痛や眠気、集中力の低下などの離脱症状に見舞われることがあります。
安全に摂取できるカフェインの量は、その人の体重によって異なります。欧州食品安全機関(EFSA)の発表した「成人が摂取しても安全なカフェインの量」によれば、体重が60kgの人なら1回あたりのカフェイン摂取量は180mgまで、1日あたり342mgまでとなっています。ただ、カフェインの感受性が高い人は、基準量よりも少ない摂取量でも頭痛が引き起こされる恐れがあります。
チョコには多量の糖分が含まれているため、たくさん食べすぎると血糖値の乱高下を繰り返す「血糖値スパイク」と呼ばれる現象が生じることがあります。
「血糖値スパイク」では、急激に上がった血糖値をいち早く低下させようと、血糖値を下げるインスリンが多量に分泌されるようになります。その結果、血糖値が急激に下がりすぎて、低血糖状態になることがあります。
血糖値が過度に低下した状態が続くと、血糖値を上昇させようとアドレナリンと呼ばれるホルモンの分泌量が増加します。アドレナリンには血管を収縮する作用があり、過度な血管収縮が生じることで頭痛を引き起こすことがありますので注意しましょう。
血糖値の低下によって起きた片頭痛の場合はチョコを食べると症状が和らぐ場合があります。これは低血糖状態になると脳の血管が拡張して頭痛が起こることがありますが、チョコを食べて血糖値が上がると脳血管の広がりが抑えられ、頭痛が緩和されるからです。
ただ、チョコをたくさん食べてしまえば血糖値スパイクを引き起こしてしまいます。
チョコに頼るのではなく
などして血糖値を安定させるように心がけましょう。
チョコレートは上で述べたように頭痛を改善することもあります。チョコレートで頭痛が治るという人は、ついつい食べ過ぎてしまうこともありますがチョコレートは高カロリーなため食べすぎると血糖値の上昇や肥満などを引き起こします。
健康を害することなくチョコレートを摂取するには、1日に1~2かけら(5~10g)を目安にしましょう。また、より高い頭痛改善効果を得るにはカカオ成分が多く含まれたものを選ぶのがポイントです。
頭痛の原因によってはチョコによって頭痛が治る場合もありますが、食べ過ぎるとチラミンやポリフェノールの摂取量が増えて、頭痛を引き起こす可能性もあります。
チョコ以外の食品にも言えることですが、偏食や食べ過ぎは避けて適量を楽しむようにしましょう。
また、頭痛が長期間続くようであれば、自己判断せずに医師の診察を受けることをおすすめします。