糖尿病だとアルコールは絶対に飲んじゃだめ?

2017/8/30 記事改定日: 2018/3/9
記事改定回数:2回

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

飲酒が健康に与える影響やリスクに関しては、いろいろな情報やうわさ話を効くことが多いかもしれません。中でも、「適量のお酒であれば体によい効果がある」という話は、聞くことが多いと思います。
ただし、これは健康な人に対してのアドバイスです。それでは、糖尿病を発症した方の場合、アルコールとどのように付き合っていけばいいのでしょうか。

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糖尿病になったら、アルコールはもう飲めない?

糖尿病になったら、基本的にアルコールは飲まないほうがよい、と認識しておいたほうがよいでしょう。おそらく、医師からは「禁酒」を指示されることが多いと思います。また、合併症を発症していたり、糖尿病そのものの症状が進行してしまっている場合は「絶対禁酒」との指導を受けると思います。

アルコールには肝臓からブドウ糖を放出するのを抑える働きがあるため、血糖値が下がりやすくなります。このため、血糖値を下げる薬や、インスリンを投与している人の場合、血糖値が下がりすぎて低血糖に陥る恐れがあります。また、アルコールには食欲を増進させる働きがあるため、食事をたくさん食べてしまったり、おつまみを食べ過ぎてカロリーや塩分を摂りすぎてしまったりする可能性もあります。このような理由から、糖尿病になるとアルコールは控えるように、という指導がされるのです。

糖尿病でもアルコールが飲める!その条件とは?

でも、お酒が好きな人にとって、食事療法と禁酒を同時に実践することは非常に辛いことだと思います。

実は、血糖値の管理がうまくいっていて、肝機能障害や三大合併症(糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害)を発症していなければ、アルコールの摂取が許されることがあります。

ただし、アルコール摂取を許可された場合、厳しく自己管理をすることが欠かせません。なぜなら、アルコールによって、脳梗塞や心筋梗塞といった病気を併発する恐れがあるからです。このため、アルコール摂取量の自己管理はもちろん、規則正しい生活習慣を心がけたり、バランスのとれた食生活を維持することがますます重要になります。

どのくらいだったら、アルコールを飲んでも大丈夫?

糖尿病がどのくらい進行しているかは人によって異なるため、どのくらいの飲酒量なら大丈夫、という具体的な量を提示することは難しいです。

ただ、おおよその目安として、「1日のアルコール量20g程度まで」を指すことが多いようです。ビールで言うなら缶ビール1本(350ml)、日本酒は1合弱(150ml)、梅酒なら120ml、ワインならグラス3杯(200ml)程度が目安になります。

糖尿病でも安心して飲めるお酒は?

血糖値を上げにくいものなど、アルコールの種類によってお酒の種類によってどのような違いがあるのかを理解しておくことは、今後アルコールを飲むときに重要な情報になると思います。

糖尿病を発症した方がアルコールを摂取する場合、できる限り血糖値を上げにくいものを選んで飲むのがおすすめです。血糖値を上げにくいお酒として、以下のようなものがあります。

・焼酎
・ウイスキー
・ブランデー

上記のお酒は「蒸留酒」と呼ばれるものです。蒸留酒であれば、比較的糖尿病の方にも安心して飲んでいただけると思います。

ただし、アルコール自体にインスリンの分泌を抑える働きがあるため、低血糖状態に陥らないよう気をつける必要があります。また、ブランデーの中には、シロップなどが添加されているものもありますので気をつけてください。

一方、糖質を上げやすいお酒には以下のようなものがあります。

・ビール
・日本酒
・ワイン

上記のお酒は「醸造酒」と呼ばれるものです。これらのお酒には糖質が多く含まれています。できるだけ控えましょう。

「糖質ゼロ」のお酒だったら多めに飲んでも大丈夫?

スーパーやコンビニに行くと、「糖質ゼロ」といった記載があるビールや発泡酒を見かけることがあるかもしれません。

これらのお酒は、糖質は確かに控えめですが、カロリーは「ゼロ」ではありません。「糖質ゼロ」だからといって、たくさん飲んでも大丈夫というわけではありませんのでご注意ください。

飲酒するときに気をつけることは?

アルコールを飲むときは、以下のようなことに気をつけましょう。

・アルコールは食欲を増進させますので、食べすぎにも注意しましょう。日頃の食事管理の努力がだいなしになってしまう可能性があります
・おつまみは塩辛いものが多いです。塩分の摂りすぎないためにも、慎重におつまみを選びましょう
・連続して飲まないようにしましょう。必ず休肝日を設けてください
・自分の決めた量は必ず守りましょう
・アルコールには利尿作用があるため、体内の水分が大量に奪われる場合があります。脱水状態に注意しましょう。

おわりに:アルコールを楽しむときは、飲みすぎないことが大切

糖尿病を発症したら、基本的には「禁酒」することが大切です。しかし、血糖値の管理がうまくいっているなど、場合によってはアルコールを飲むことができることもあります。アルコールを楽しむときは、主治医の指示を守るのはもちろん、決められた酒量を超えないよう、きちんとコントロールしましょう。

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