記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/8/31 記事改定日: 2018/4/13
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
高血圧の状態が続くと、深刻な合併症に発展する可能性があります。高血圧は体にどのような悪影響を及ぼすのでしょうか?合併症が起こるメカニズムと合併症リスクを高める原因について解説していくので、予防対策に役立ててください。
血圧が高い状態が続くと、動脈が硬くなり、動脈硬化という病気に進行します。そのまま放っておくと、やがて脳、心臓などに悪影響を及ぼし、さまざまな合併症を引き起こします。
脳の血管が脆くなったり、詰まりやすくなります。例えば脳血管が破裂した場合は脳出血となり、脳血管がつまってしまった場合は脳梗塞が起こります。
高血圧が持続すると、心臓が血液を送り出そうとするときに心臓に強い負担がかかります。心臓は代償しようとして次第に大きくなり心肥大を起こし、それでも代償できなくなってしまうと心不全が起こります。
心臓に栄養を送っている細い血管である冠動脈も不具合を起こします。動脈硬化が原因で冠動脈が狭くなる狭心症や、冠動脈が完全に閉じてふさがれ、心筋が壊死してしまう心筋梗塞を起こしてしまいます。
日本人を対象とした研究では、高血圧の人はそうでない人に比べ、脳卒中や心筋梗塞などの脳心血管疾患で死亡するリスクが高くなるという結果が出ています。
腎臓は血液中の老廃物をろ過して、尿を生成する働きを持ちます。
このため、腎臓には細かい血管が多くあり、効率的にろ過を行える構造になっています。この細かい血管は糸球体と呼ばれる塊になって存在しており、高血圧によって動脈硬化が進むと構造が破壊され、機能を維持できなくなります。
その結果、腎不全となり十分な尿の生成や老廃物のろ過ができなくなるために最終的には人工透析が導入されることもあります。
目の奥には網膜という光や色を感知する細胞が多く分布する薄い膜が存在しています。網膜には細かい血管がたくさんあり、物を見るのに重要な役割を持つ網膜に酸素や栄養を届けています。
これらの血管は高血圧などによる動脈硬化の影響を受けやすく、網膜の血管が動脈硬化を起こすと、網膜に十分な栄養や酸素が行き届かなくなります。その結果、網膜にダメージが加わり、網膜症を引き起こすことがあります。また、動脈硬化でもろくなった血管は破れやすいため、眼底出血の原因にもなります。
網膜症や眼底出血は自覚症状がないこともあり、徐々に視力が低下して最終的には失明に至ることもあります。また、一度進行してしまうと回復するのは困難なことが多く、これらの合併症を未然に防ぐことが重要です。
脂質異常症や糖尿病は、高血圧と同じく動脈硬化の重大な原因の一つです。高血圧の人は、しばしば脂質異常症や糖尿病を合併していることがありますが、これらの病気を合併すると動脈硬化のリスクは更に上昇し、高血圧による上記のような合併症が更に起こりやすくなります。
高血圧の人は、血圧のコントロールだけでなく、脂質異常症や糖尿病などの病気にも注意が必要なのです。
高血圧の治療は、血圧を下げ心臓病のリスクを軽減するために生活習慣を見直すことから始まります。慢性的な高血圧になってしまい、生活習慣の改善で血圧が管理できなくなった場合は病院での治療が必要となります。
病院では降圧薬が処方され、血圧を正常レベルに下げます。服薬中に、医師と相談しないで薬を飲むことをやめると、脳卒中や心臓発作などの危険性を高めることがあるので自己判断で服薬中止することは絶対にしないでください。また、薬だけに頼るのではなく、生活習慣を改善していくことも必要です。
歩く、サイクリング、水泳など、週に5回、少なくとも30分間運動をすることをおすすめします。
ただし、運動に慣れていない場合は急に始めないでください。い運動量や運動の強度については、医師に相談しながら決めていきましょう。
運動を始めるときに以下のものがおすすめです。
・ウォーキング
・サイクリング
・水泳
・ランニング
健康的でバランスの取れた食事は血圧を下げます。以下のような食事を目指しましょう。
・塩分少なめ
・飽和脂肪少なめ
・1日に果物と野菜を5種類
料理のときに塩の量を減らすことは当然ですが、買い物を中にラベルを見て塩分量を確認する習慣をつけましょう。
また、脂肪の摂取にも注意が必要です。バター、ラード、脂の多い肉、ソーセージ、ケーキ、ビスケット、ココナッツオイルやパーム油などは飽和脂肪酸が多く、血管の病気のリスクを高めるといわれていますので、控えるようにしましょう。
運動と健康的な食事は体重を減らすのに役立ちます。肥満は高血圧のリスクを高めるので、健康的な体重にすることが重要です。
男性も女性も、常に週に14杯以上の酒を飲むのは避けるようにしましょう。また、週に14杯飲む場合は、3日以上に分散させてください。
常に週に14杯を超える量を飲んでいると、高血圧などの健康上の問題が発生するリスクがあります。
喫煙が高血圧を引き起こすわけではありませんが、心臓病のリスクを高めます。禁煙はこのリスクを軽減するので、高血圧の場合は特に重要です。
高血圧の状態が長く続くと命にかかわる合併症を発症してしまうリスクがあります。予防するためには、生活習慣の見直しが重要です。家庭用の血圧計でかまわないので、血圧を定期的に測るように心がけ、減塩や減酒、禁煙など生活習慣の改善に努めましょう。