肝硬変の症状とは!?早期発見するにはどうすればいいの?

2017/9/7 記事改定日: 2018/11/20
記事改定回数:2回

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

肝硬変は、初期症状がほとんど現れないため、気がつくと病状が進んでいて、ほかの合併症に発展してしまうことも多い恐い病気です。
この記事では肝硬変の症状や発症のメカニズム、早期発見と治療の方法についてまとめています。

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肝硬変になるとどんな症状が現れるの?

肝硬変は、肝臓が損傷し、その傷を修復するための線維状のタンパク質が増加して、肝臓全体に拡がった状態をいいます。
肝硬変になると、腹に水がたまったり、食道静脈瘤ができたり、肝性脳症や黄疸などの問題が起こり、様々な問題が発生します。

肝臓の一部に傷がついても、初期のうちは損傷していない他の部分が働いてくれるため、ほとんど症状がでません。進行し線維化がひどくなると、肝臓が硬くなり肝機能が低下するため肝性脳症や黄疸などが起こり、くも状血管拡張や手掌紅斑、腹水、腹壁静脈拡張、羽ばたき振戦、女性化乳房などが見られるようになります。

肝硬変の症状が起こるメカニズム

肝硬変は肝炎ウイルス感染やアルコールの多飲、内臓脂肪の蓄積などによって肝臓の細胞が炎症を起こし、線維化して硬くなる病気です。
肝臓には腹部からの血流を集める「門脈」と呼ばれる非常に太い静脈が流入しています。門脈は各臓器を流れている様々な老廃物を含んだ血液を肝臓内に送り込み、肝臓は送りこまれた老廃物の代謝・分解を行います。

しかし、肝硬変が進行すると、肝臓内の血管が硬く細くなり、門脈内の圧が上昇するようになります。その結果、各臓器から肝臓へ送られる血流が停滞して、血管の蛇行や静脈瘤を形成します。

また、肝臓の機能が衰えるため、血清アルブミンの生成が低下してむくみや腹水を引き起こしたり、血小板や血液凝固因子の生成が減少して出血しやすくなるなどの症状が現れます。さらに、アンモニアを始めとした老廃物の分解や代謝が行われなくなることで、肝性脳症を引き起こすことも少なくありません。

このように、肝硬変は様々な器官に重篤な症状を引き起こすのです。

肝硬変の原因は?お酒だけじゃないって本当?

とくに多いとされる原因は、B型やC型などのウイルス肝炎です。また、過剰な アルコール摂取も肝硬変につながりますが、お酒を飲まなくても起こる非アルコール性脂肪肝炎(NASH)もあるため、飲酒の習慣がない人も注意が必要です。
その他、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変などが原因となる場合もあります。

肝硬変を引き起こす病気には次のようなものがあります。

ウイルス性

  • B型肝炎ウイルス
  • C型肝炎ウイルス

自己免疫性

  • 自己免疫性肝炎(AIH:Autoimmune hepatitis)
  • 原発性胆汁性肝硬変(PBC:Primary Biliary Cirrhosis)
  • 非アルコール性脂肪肝炎(NASH:Non-alcoholic steatohepatitis)

アルコール性

  • 代謝性
  • ヘモクロマト−シス
  • ウイルソン病

肝硬変の診断にはどんな検査が必要?

肝硬変は、画像検査と血液検査とをあわせて診断します。その後の確定診断には、針を皮膚から肝臓へと突き刺し、肝臓の一部を採取する肝生検も行います。

血液検査

血液検査を行い、下記の数値を見ます。

  • アルブミン値→肝硬変になると3.5 g/dL以下に低下することが多い
  • 血小板→血小板数が10万/mm3以下の場合、肝硬変が疑われる
  • コリンエステラーゼ→肝臓で作られるタンパク質。肝硬変では低下
  • プロトロンビン時間→血液が固まる時間のことであり、肝硬変では血液凝固因子が低下するためプロトロンビン時間が長くなる
  • アンモニア→肝硬変では分解が低下するため血液中に増加する。
  • 総ビリルビン→肝硬変で機能低下がおこると上昇する
  • M2BPGi (Mac-2 binding protein glycosylation isomer):2015年より保険適応された肝線維マーカー

画像検査

下記の画像検査を行います。

腹部超音波

超音波だけで診断は難しいですが、肝硬変が進行すると肝臓の凹凸がはっきりするようになり、超音波検査で内部が粗くうつるようになります。

肝硬度測定

弱い振動波を肝臓に当て、伝わる速度を超音波を使って測定することで肝臓の硬さを確認する検査です。

MR elastography (MRE)

肥満など、超音波で検査できない場合に行われることがあります。プラスチック板を胸に当て、肝臓を振動させることで肝臓の硬さを確認します。

腹部CTスキャン

CTだけで診断をすることは困難です。肝臓の表面の凹凸度合や、肝臓の右葉と左葉の大きさのバランスなどを調べるときに用いられます。また、造影剤を使うことでシャント(異常血管)を調べることも可能で、腹水、肝腫瘍、脾臓腫大などを目的に使用されます。

腹腔鏡

腹腔鏡を使うことで、肉眼で肝硬変を確認することができます。

肝生検

採取した細胞を顕微鏡で検査します。

肝硬変は完治できる?

肝硬変そのものを治療できる薬はほとんどなく、B型肝炎ウイルスが原因の慢性肝炎は、エンテカビルやテノホビルルジソプロキシルフマル酸塩(TDF)、テノホビルアラフェナミド(TAF) という抗ウイルス薬が使われ、C型肝炎ウイルスでは、インターフェロン単独治療、インターフェロン・リバビリン併用治療、ペグインターフェロン・リバビリン併用療法、インターフェロンフリーの経口剤が使われます。

その他、低下した分岐鎖アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)などの補充なども行われ、症状が改善しない場合は肝移植が行われることもあります。ただし、移植は基準を満たした場合のみです。

肝硬変を早期発見するにはどうすればいい?

肝炎から肝硬変へ進行すると、肝臓が元の状態に戻ることはありません。このため、肝硬変を防ぐには、肝炎の段階で見つけ、適切な治療を受けることが大切なのです。
日本で最も多い肝硬変の原因は、ウイルス性肝炎によるものとされています。ですから、一度は肝炎ウイルスの検査をしてみましょう。

また、健康診断はきちんと受け、肝機能に異常がないかを把握することも大切です。健康診断で肝機能に異常が見つかった場合には、放置せずに病院を受診し、しかるべき検査・治療を受けるようにしましょう。

肝硬変の予防と悪化防止のために日常生活で気をつけること

薬物療法を併せて、禁酒と食習慣の改善を行いましょう。食事は適切な摂取量を守り、栄養のバランスに気を配ってください。また、塩分の量にも注意が必要です。

ただし、合併症によっては推奨される食事内容が変わってきますので、主治医や管理栄養士の指示に従い、食事の計画をたてるようにしましょう。

おわりに:肝硬変の予防も、進行を遅らせるのも、日常生活の過ごし方しだい

肝硬変はじわじわと進行する恐ろしい病気です。日ごろからバランスのよい食事と適度な運度を行い、飲酒を控え、発症を防ぐことが大切です。また、進行しないうちに肝硬変を発見することも、治療のために重要になってきます。早期発見のためにも、定期健診を怠らないようにしましょう。

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