記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
椎間板ヘルニアは、頚椎・胸椎・腰椎それぞれで発症し、痛みやしびれなどの症状が現れる整形外科疾患です。 今回の記事では、推間板ヘルニアの原因や症状、治療法について解説します。
椎間板(ついかんばん)ヘルニアとは、椎骨の間にある椎間板の中心部の髄核が線維輪を破って飛び出し、神経を圧迫することで痛みや痺れなどの症状を起こす整形外科疾患です。
首(頸部)のものを頸部椎間板ヘルニア、腰を腰部椎間板ヘルニア、背中(胸椎)を胸椎椎間板ヘルニアと呼び、それぞれ悪化すると運動障害や歩行障害が現れ、日常生活に支障をきたすケースもあります。
椎間板ヘルニアの原因ははっきりしていませんが、加齢による変性、姿勢や動作などの環境要因、遺伝など主な原因と考えられています。
特に大きな原因と考えられているのは、長時間同じ姿勢でいることや同じ動作を繰り返すことによる椎間板への偏った負担の増加です。
このような物理的な要因に、加齢変性やストレス、喫煙、遺伝、栄養面などが複合的に関わることで発症する可能性も示唆されています。
飛び出した椎間板(髄核)が神経を圧迫すると、首や背中、腰や脚に痛みやしびれなどの症状が現れる場合があります。痛みやしびれが起こる部位や程度は、椎間板がどの神経をどのくらい圧迫しているかなどによって個人差があります。
腰椎椎間板ヘルニアでは、痛みが坐骨神経に沿って殿部(でんぶ)から大腿の後ろまで広がり、足先まで達するケースもあり、この症状のことを坐骨神経痛と呼びます。
また症状が進むと、頚椎・胸椎椎間板ヘルニアでは腕から手・指のしびれや麻痺、腰椎椎間板ヘルニアでは下肢から足の指のしびれや麻痺などが現れ、さらに進行すると歩行障害や排尿排便障害など、日常生活がままならなくなるような深刻な症状に発展することもあるので注意が必要です。
症状や病歴の問診後、体勢や動きによって痛みやしびれの増減がないかを確認します。
その後、皮膚感覚の知覚検査や徒手筋力検査、腱反射テスト、SLRテスト(Staraight Leg Raising test:下肢伸展挙上テスト→腰椎下部の検査)、FNSテスト(Femoral Nerve Stretching Test:大腿神経伸長テスト→腰椎上位の検査)、ジャクソンテストやスパーリングテスト(頚椎の検査)などで神経的学的所見を確認し、X線(レントゲン)検査とMRI検査などの画像で診断が確定されます。
ただし、MRIの画像で髄核の突出(ヘルニア)が確認されても、症状がないものについては治療が不要と判断される場合もあります。
椎間板ヘルニアの治療は、痛みなどの症状を和らげるための対症療法や保存療法が中心になります。
痛みが主症状の場合は、まず鎮痛薬を服用し経過観察を行います。痛みが出始めの炎症期では、安静が必要です。
鎮痛薬で改善がみられない場合は、硬膜外ブロック注射や神経根ブロック注射など神経や硬膜外腔に麻酔薬やステロイドを打ち痛みの軽減を目指し、必要に応じて牽引やリハビリなどが行われる場合もあります。
これらの保存療法で改善しない場合や、排尿障害、脚に力が入らない、歩行すると脚が痛みしばらく休むと和らぐ(間欠性跛行)などがみられ日常生活に支障がある場合は、手術が検討されるケースもあります。
近年は内視鏡手術が中心となっているので以前よりも手術のリスクは低くなりましたが、脊椎は重要な器官であり、万が一の場合は重篤な後遺症を抱える可能性があります。手術の際は、医師からメリット・デメリットの双方を説明してもらい、十分納得したうえで受けるようにしましょう。
椎間板ヘルニアの原因ははっきりわかっていませんが、偏った姿勢や繰り返しの動作による椎間板への負担による可能性が高いと考えられています。予防のため、正しい姿勢と正しい体の動かし方を身につけるようにしましょう。また、何度も繰り返す腰痛や首の痛み、首や腰の痛みに伴って腕や脚にしびれがある場合は、早めに整形外科を受診することをおすすめします。