腰椎椎間板ヘルニアとは ~ 突然、腰に痛みが走る症状 ~

2017/11/2 記事改定日: 2018/5/16
記事改定回数:1回

記事監修医師

日本赤十字社医療センター、脊椎整形外科

河村 直洋 先生

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

腰痛、そして肩こりは、国民病と呼ばれるほど多くの日本人を悩ませていますよね。もしかしたらあなたもそのひとりかもしれません。ここでは、腰痛の主な原因といわれている腰椎椎間板ヘルニアについての基礎知識をお伝えします。

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腰椎椎間板ヘルニアの症状

椎間板ヘルニアは、ぎっくり腰の要因のひとつです。重いものを持ち上げたときや急に姿勢を変えたタイミングで激しい痛みが生じることがあります。また、腰の痛みの他にも、お尻から太もも、足先に痛みやしびれが現れたり、下肢の筋力が低下するなどの症状が現れることがあります。ただし、ぎっくり腰のように急な痛みが現れず、慢性腰痛に隠れて進行することもあるので注意が必要です。
また、重症化すると歩行困難になったり、排尿や排便の異常が現れる場合もあります。

その他、疼痛性側弯(腰の痛みをかばうことで背骨が歪んで見えること)が現れ、まっすぐ立つことが困難になったり、少しずつ体全体が動きにくくなったり、足や腰の痛みがさらに激しくなることもあります。

原因

椎間板ヘルニアの原因は完全に解明されていませんが、単独の原因でなく、いろいろな要素が影響しあって発症すると考えられています。
その中でも、特に大きな要素を占めるといわれているものは、「加齢」による変性と度重なる椎間板への負担です。運転手や運搬業など、常に腰に負担のかかる動作や体勢を強いられている場合にも発症しやすいといわれているので注意しましょう。また、喫煙などの環境因子、さらには遺伝的因子の影響もあることも示唆されています。

その他、仕事や日常生活、家族生活、将来への不安などで日常的に感じているストレスや、それによる抑うつ状態が症状を悪化させる要因になるともいわれています。

気をつけたいお尻や股関節の痛み

腰椎椎間板ヘルニアの症状は腰痛だけでなく、神経自体が圧迫されることよるお尻のしびれや痛み、股関節の痛みや股関節の動きが悪くなるなどの違和感が生じることがあります。

ただし、お尻や股関節に同様の症状を引き起こすものには、加齢による脊柱管狭窄症やお尻の筋肉が硬くなることで神経を圧迫するなど、様々な原因があります。なかには、がんが腰の骨に転移して症状を引き起こすこともあるのです。お尻や股関節の症状といっても生命に大きく関わる病気が隠れている可能性もあることはきちんと理解しておきましょう。

長く続く違和感や痛みがどんどんひどくなるような場合には、早めに病院を受診して適切な検査・治療を受けるようにしましょう。

腰椎椎間板ヘルニアの初期症状 ― 病院へ行くべきサインをチェックしてみよう

腰椎椎間板ヘルニアには以下のような初期症状が見られます。

  • 中腰や座っている状態などを長時間続けていると腰やお尻、脚に違和感が生じる
  • 前かがみの姿勢になると腰やお尻、脚にしびれや痛みが生じる。
  • お尻や足の先端にかけてのしびれや痛みがある
  • ふくらはぎが疲れやすく重苦しい感じがする
  • お尻やふくらはぎがほてる
  • 寝た状態で脚を直角に上げようとすると腰に強い痛みが生じる

これらの症状が一週間以上続く場合には腰椎椎間板ヘルニアの可能性があります。また、これらの症状が生じている間は、背中や肩に過剰な力が入るため疲れやすくコリがひどくなる場合がありますが、治りにくい背中や肩のコリも腰椎椎間板ヘルニアの重要な初期サインである可能性がありますので注意が必要です。
放置せずに早めに病院を受診し、医師の診察を受けるようにしましょう。

腰椎椎間板ヘルニアの診断・治療法

検査・診断

椎間板ヘルニアは問診で症状や病歴を確認した後、SLRテスト(Straight Leg Raising Test :下肢伸展挙上テスト→L5からS1までの下位腰椎の椎間板障害で陽性が出やすい)やFNSテスト(Femoral Nerve Stretching Test:大腿神経伸長テスト→L2からL4までの上位腰椎の椎間板障害で陽性が出やすい)、徒手筋力検査、感覚の検査を行い、X線(レントゲン)やMRI検査などの画像を確認し、総合的に診断が確定されます。

ただし、MRI検査でヘルニアが認められても、症状がない場合は治療の必要がないと判断される場合もあります

治療

椎間板ヘルニアは、突出した髄核(ヘルニア部分)が完全に線維輪を突き破り、さらに後縦靭帯まで突き破って硬膜外腔に脱出すると、飛び出してしまった髄核がマクロファージやT細胞などの免疫細胞の作用により分解、吸収され、ヘルニアは自然に縮小、消失する可能性が高いと考えられています。

そのため、進行性の麻痺症状がある、膀胱直腸障害を発症しているなど、重症の場合を除き、椎間板ヘルニアの治療は基本的に「保存療法」(手術をしない治療法)が選択されることが原則です。

保存療法

保存療法には、コルセットをつけての安静、腰椎牽引療法、腰部マッサージ、温熱・電気療法などのほか、消炎鎮痛剤や筋緊張弛緩剤、ビタミンB剤などで症状を緩和させる薬物療法があります。上記で痛みがよくならない場合は、硬膜外ブロックや神経根ブロックといったブロック療法が行なわれることもあります。

外科療法(外科手術)

保存療法でも痛みが全く改善しない場合や運動麻痺が進行する場合は、外科手術でヘルニア部分を除去することになります。ただし、手術を行なっても症状がすぐに改善しない場合や再発することがあるため、手術前によく医師から説明を受けておきましょう。

おわりに:痛みがひどいときは、放置せずに受診しましょう

腰椎椎間板ヘルニアは、自然軽快することも多いため、「ほっておいたら治った」という人が周りにいるかもしれません。しかし、悪化すると歩行困難になったり、排尿・排便の問題が起こり日常生活がままならなくなってしまうこともあるのです。ひどい腰痛やお尻や脚のしびれがあるときは、放置せずに医師の診察を受けるようにしましょう。

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