ADHD(注意欠陥・多動性障害)とアスペルガー症候群の違いは?

2017/9/15 記事改定日: 2018/3/16
記事改定回数:1回

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

「ADHD」(注意欠陥・多動性障害)と「アスペルガー症候群」はそれぞれ異なる病気ですが、一見してどちらか見分けるのは難しいともいわれています。今回は、そんな両者の違いについて詳しく解説していきます。

ADHD(注意欠陥・多動性障害)の特徴

ADHD(注意欠陥・多動性障害)とは発達障害の一種で、「多動―衝動性」あるいは「不注意」、または両方の症状が7歳までに現れます。学齢期の子供の約3~7%がADHD患者と考えられており、女の子よりも男の子のほうが発症率が数倍高い傾向にあります。

ADHDの診断基準

ADHDは診断が非常に難しい病気ですが、アメリカ精神医学学会の診断基準は次の5つが全て満たされることとされています。

1.「不注意(活動に集中できない・気が散りやすい・物をなくしやすい・順序だてて活動に取り組めない)」と「多動―衝動性(じっとしていられない・静かに遊べない・待つことが苦手で他人の邪魔をしてしまうなど)」が同程度の年齢の発達水準に比べて頻繁に強く認められること
2.症状のいくつかが7歳以前より認められること
3.2つ以上の状況において(家庭・学校など)障害となっていること
4.発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されている
5.広汎性発達障害や統合失調症など他の発達障害・精神障害による不注意・多動―衝動性ではないこと

【出典: 厚生労働省ホームページを編集して作成】

http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-003.html

アスペルガー症候群の特徴

アスペルガー症候群も発達障害の一種ですが、広い意味では「自閉症」のカテゴリーに分類されます。ただ、自閉症の特徴である言語発達の遅れはみられず、知的発達の遅れもない場合がほとんどですが、対人関係がうまく築けないという大きな特徴があります。ADHDと同様、男性のほうが発症率が高いといわれています。

アスペルガー症候群の診断基準

アスペルガー症候群も明確な検査結果の基準がないため、診断が難しい病気です。しかし、患者には以下のような特徴があり、診察や面談を重ねることで診断されます。

アスペルガー症候群の患者は認知や言語発達に遅れがないため、コミュニケーションを取ることは可能ですが、人の気持ちを推し量り、その場に適した行動をするなどの能力が低く、対人関係や社会生活に大きな障害を抱えていることが診断の基準のひとつとなります。

【出典: 厚生労働省ホームページを編集して作成】

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-006.html

ADHDとアスペルガー症候群の違いは?

ADHDもアスペルガー症候群も発達障害という点は共通していますが、特徴的な症状はそれぞれ異なります。

まずADHDの場合、「多動―衝動性」か「不注意」の症状がみられるので、具体的には「じっと座っていられない」「物凄くよく喋る」「順番を待てず、友達の遊びなどに割り込む」「大人しく遊ぶことができない」という落ち着きのなさや、「忘れ物が多い」「作業でのうっかりミスが多い」「ひとつのことに集中しつづけるのが難しい」「整理整頓ができない」「物事を順序だてて行えない」といった注意力の問題が現れます。

一方のアスペルガー症候群では、「対人関係の障害」と「興味や活動のパターン化」が顕著にみられます。アスペルガー症候群の人は知的発達に問題はないものの、相手の気持ちを推し量るのが苦手で皮肉や冗談もわからないため、親しい友人関係が築けず、対人関係でのトラブルを抱えます。また、特定の物事に強いこだわりや関心をもつため、同じ作業や遊びを同じパターンで繰り返す傾向が強く、変化が加わると非常に戸惑います。ひとり遊びを好み、集団行動を苦手とする傾向があるといわれています。

【出典: 厚生労働省ホームページを編集して作成】

http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-003.html
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-006.html

併発・混合することはある?

発達障害には色々な病気がありますが、単純に一つの病気に絞り込むことはできず、いくつかの病気を同時に発症することも多いのです。ADHDとアスペルガー症候群は症状が異なる病気ですが、例えばADHDの特徴である「不注意」は、アスペルガー症候群の特徴である「特定の物事へのこだわり」によく似た側面も持ちます。
アスペルガー症候群の人は興味のある事柄以外のことに無関心であり。それは時に「不注意」と捉えられることもあるのです。

このように、ADHDとアスペルガー症候群は似たような症状が出ることもあり、同時に起きる発達障害として注意する必要があります。

仕事や学校など、社会生活を送るうえでの注意点

ADHDの人は、集中力に欠けるため、しっかりと落ち着ける環境を作ることが大切です。集中力が途切れたときに何かを無理強いするのは症状を悪化させることがありますから、そうならないように先回りする必要があります。
逆に言えば、興味や集中力が維持されやすい職種に就くと非常に優れた才能を発揮できる可能性があります。

アスペルガー症候群の人は、興味の範囲が極端に狭く、他人の気持ちを推し量ることが苦手なので対人関係でトラブルを生じやすくなります。時には「性格の悪い人」と思われることもありますが、それは個性ではなく病気なのだと周りの人が認識することが必要です。
興味の範囲は狭いですが、その範囲内にあることに関しては優れた集中力を発揮し、偉業を成し遂げることもあります。特に理系分野に才能を持つことが多く、プログラマーなどの比較的対人関係の少ない職種に就くとよいでしょう。

おわりに:どちらも発達障害ではあるものの、症状の特徴に違いがある

ADHDとアスペルガー症候群はどちらも発達障害ではありますが、特徴となる症状には違いがあります。専門医に相談する前に、お子さんにどんな症状がみられるのか、しっかりと観察しておくことが重要です。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

発達障害(19) 症状(559) 特徴(49) アスペルガー症候群(11) 違い(36) ADHD(18) 注意欠陥・多動性障害(3)