記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
パーキンソン病と認知症は異なる病気ですが、2つの病気には密接な関係があります。
今回はパーキンソン病と認知症の違いと関係についての情報をお伝えします。
治療やリハビリについても解説しているので参考にしてください。
パーキンソン病と認知症は全く別の病気ですが、パーキンソン病を発症している患者のうちおよそ3割に認知症の症状がみられるというデータがあるほど、2つの病気には密接な関係があります。
また、パーキンソン病患者が認知症を併発するリスクは一般の人と比べると5倍ほど高くなるといわれています(若年性パーキンソン病の場合を除く)。
また、先に認知障害が発症してからパーキンソン病のような運動障害が起こる病気として「レビー小体型認知症」があります。
現段階では認知症を伴うパーキンソン病と同じものとはみなされてはいませんが、最近では本質的な違いはないのではないかという研究も出てきています。
パーキンソン病は比較的進行が遅いので、早い段階で適切なケアをすれば認知症の発症を防げる可能性もあります。パーキンソンと診断された場合や疑わしい症状がある場合は、できるだけ早く専門機関を受診しましょう。
パーキンソン病は脳内物質である「ドーパミン」の分泌量が不足することが原因で発症すると考えられていますが、認知症の原因は大脳深部の白質線維の連絡機能が断たれることではないかと考えられています(原因がはっきりしないケースもあります)。
また、認知症の初期段階の症状が
などの認知機能障害であるのに対し、パーキンソン病の代表的な症状は〈手足の震え、動きが遅くなる、筋肉が硬くなる、姿勢反射障害(体のバランスをとりにくくなること)〉などの運動機能の障害が多いという違いがあります。
(※ただし、パーキンソン病が進行するにつれて認知機能障害があらわれる可能性があります)
パーキンソン病患者を介護するときには、通常の方の介護よりも気をつけなければいけないことがあります。
この項目では、パーキンソン病患者さんの介護時の主な注意事項を紹介します。
パーキンソン病では不足しているドーパミンを薬で補う薬物療法が基本ですが、薬による副作用によって吐き気や幻聴、幻覚を伴う妄想等が起きます。
さらに突然飲まなくなるようなことがあると悪性症候群と言われる生命に危険を及ぼすような状態になるリスクもあるため、症状によって薬を調整して正しく服用することが重要です。
また、治療薬の影響で幻覚や幻聴が起こることもあります。
その場合には否定的な言葉をかけず、幻覚や幻聴からパーキンソン病患者の注意が反れるようにしてあげましょう。
パーキンソン病患者は転倒のリスクが高く、また転倒した場合のケガも重症になりやすいです。
歩行の介助をする場合は、患者の前に対面するように立って両手を引くように歩く「手引き歩行」をゆっくりと行うのが良いでしょう。手引き歩行を行うときには声を出して一歩ごとのリズムをとることと、大きくゆっくり動くことを意識するようにしてください。
パーキンソン病が進行するにつれて嚥下障害が起こりやすくなるため、食べ物や飲み物を飲み込むこと難しくなっていきます。
嚥下障害が起こると誤嚥性肺炎になるリスクも高まるので注意が必要です。
パーキンソン病患者の食事の介助をするときは、通常よりも時間をかけるようにしましょう。
むせ込みがひどい場合は食事内容の変更や流動食の導入などを、医師や栄養士と相談しながら検討して、嚥下障害を防ぐようにしましょう。
パーキンソン病は進行性に全身の様々な部位の動きが悪くなっていくため、適切なリハビリを継続することが大切です。
しかし、近年では高齢化の影響もあり、認知症を併発するパーキンソン病の患者も増えています。認知症では、正常な判断や危険回避能力が著しく低下することもあるため、リハビリによる転倒や思わぬ怪我をすることも少なくありません。
パーキンソン病のリハビリでは、歩行訓練や関節可動訓練、姿勢を正す訓練などが必要ですが、認知症を患っている場合は、必ず介助者が付き添ってケガを防ぐようにしましょう。
パーキンソン病と認知症は異なる病気ですが、「パーキンソン病患者の認知症発症リスクは一般の人に比べて5倍前後高い」というデータがあるほど、両者には深い関連性があります。
特にパーキンソン病の発症から10年以上が経過している場合や、患者の年齢が高くなるほど認知症を併発しやすくなるので、予防のためにも早いうちにパーキンソン病の治療を始められるようにしましょう。