記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
摂食障害の治療は、普通の病気のように薬や手術ですぐに治るというものではありません。家族や専門家のサポートを得ながら根気強く向き合うことが大切です。しかし、摂食障害は治らない病気ではありません。然るべき治療を受けて正常な状態に戻るために、この記事を参考にしてください。
摂食障害の治療は、外来治療が基本です。食行動の改善、それに伴う身体面の改善、心理面の改善、学校や職場での適応などを目標とし、認知行動療法、家族療法などの心理療法が効果を示すことが報告されています。外来治療で改善しない場合は入院治療へと移行することもあります。
摂食障害の治療における一番の問題点は「本人が自分が異常な行動をしていることに気づきにくい」ということです。自己のボディー・イメージが歪んでおり、また自分で食行動を制御することができないため、なかなか治療を開始しにくい面があります。まずは周りの言葉にきちんと耳を傾け、体重を「標準値と比べてどうか」ということを基準に気にするようにしましょう。
もし体重が標準値の60%未満であれば、摂食障害の疑いが強くなります。
摂食障害において、対人関係療法が治療効果と有効性が示されています。対人関係療法とは、家族やパートナーなどのような「重要な他者」との現在の関係に焦点を当てる精神療法です。
自分の気持ちを振り返りながら行動を改善し、他者との関係を改善していくことを目標にしながら治療が進められ、最終的には自己志向と協調性のバランスを安定させ、症状に振り回されないようになることを目指します。
摂食障害を抱える人は、様々な意見に流され自分にマイナスのボディイメージを抱きやすく、自尊心を失いやすい傾向にあります。対人関係療法で正しい自己理解と社会的コミュニケーションを獲得していくことは、自尊心を取り戻すことにつながり、摂食障害の改善や再発防止にもつながると考えられています。
カウンセリングは対人関係療法よりも広い概念で、摂食障害の患者さんがなぜ食べなかったり食べ過ぎたりしてしまうのか、どういう心の問題を抱えているのかを明らかにしていきます。
摂食障害の人は、心の傷や認知の歪みを抱えていることが多いため、医師や臨床心理士によるカウンセリングを介して心の問題を改善していきます。摂食障害の人は、食べたいから食べるというよりもストレスに対処するために食べる・食べないという行動を選択していることが多いとされ、心理面の改善をすれば食行動の改善が期待できると考えられています。
その他にも、オランザピンという非定型抗精神病薬が、強迫性の低減、体重増加の助けになる可能性があることが報告されています。
また、健康的な食生活を取り戻すために、栄養士にアドバイスをもらいながら食事を改善する食餌療法も重要です。健康状態によっては、補助的に栄養補給の必要がある場合もあるでしょう。
上記でお伝えしたように、まず摂食障害かどうかは自分では気付きにくく、症状が進行すると職場や学校で社会的な活動をすることが難しくなります。心理面・精神面での回復には時間がかかり、無理して頑張り続けると症状が悪化し、さらに回復に時間がかかる恐れもあるので、一旦社会的な活動を軽減したり、休んだりすることを検討してみてはいかがでしょうか。
また、専門家や家族のサポートを十分受けながら治療を続けていくことが重要です。体重や食行動がおかしいと指摘され、自分ではどうにもできないと感じたら、周りの人に早めに相談しましょう。