高齢者は特に注意が必要! 肺炎球菌感染症とは

2017/9/27

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

現在、日本人の死因の第3位である肺炎は、年間12万人の命を奪っていますが、そのうちの95%以上が65歳以上です【※厚生労働省:人口動態統計】。高齢者にとっての肺炎予防は、自分の健康を守るための非常に重要なファクターなのです。ここでは、肺炎球菌が引き起こす感染症について解説しています。

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肺炎球菌とは

細菌やウイルスなどの病原微生物が肺に入って感染し、炎症を起こしてしまう状態を肺炎と言います。
この肺炎を起こす「細菌やウイルス」の中で、最も多いといわれているのが「肺炎球菌」です。肺炎球菌は「きょう膜」という膜で覆われているため、人が持つ免疫系からの攻撃に強い性質を持っているため、薬などで退治するのが難しいと考えられています。

また、細菌性髄膜炎や肺炎、肺血症、気管支炎、中耳炎などの感染症を引き起こすうえ、それらが重篤化しやすいという特徴を持ち、さらに最近では抗菌薬が効かない耐性を備えたものも現れている、危険な細菌なのです。

肺炎球菌感染症は、風邪や疲れなどで免疫力が低下しているときに発症することが多く、もともと免疫機能が未熟な乳幼児や免疫が弱ってきている高齢者にとっては、とくにリスクの高い細菌であるといえるでしょう。

なぜ肺炎球菌感染症を発症するのか

肺炎球菌が鼻や口から人体に侵入し、感染を広げることによって引き起こされる疾患を肺炎球菌感染症といいます。感染源は以下とされています。

直接的接触

咳やくしゃみをすると、細菌を含む微量の液体が空気中に放出され、それを他の人が吸いこむことで感染します。

間接的接触

例えば、肺炎球菌が付着した手でドアのノブに触れたあと、他の人がそのノブを触ることで手に肺炎球菌が付着してしまうと、その手で鼻や口に触れたときに感染する可能性があります。

免疫が低下したときに感染リスクが上がる

多くの人が肺炎球菌を鼻や喉の粘膜などに持っていますが、普段は免疫力で増殖を押さえ込んでいます。しかし、なにかのきっかけで免疫力が落ちることで、気管粘膜などが炎症を起こし発症します。

肺炎球菌感染症は風邪やインフルエンザよりもはるかに伝染性が低いため、免疫系がきちんと働いていれば感染が起こる前の段階で細菌を殺すことができます。ただし、子供の保育園や介護施設、ホームレスの避難所など、免疫システムの機能が不十分な人が多い環境では、肺炎球菌が流行しやすいため注意が必要です。

肺炎球菌感染症の症状

肺炎

肺炎球菌が起こす病気の中で最も多いものが肺炎です。前兆として、発熱と倦怠感、胸の痛み、悪寒が起こり、その後咳や胸の痛み、赤茶色の痰、頭痛、痙攣、さらには首が動かしにくくなるなどの症状が現れるようになります。重くなると、呼吸困難を起こすこともあります。

髄膜炎

発熱や頭痛、嘔吐などの症状が現れ、重症化すると意識障害や痙攣が起こることもあります。ただし、このような症状が現れないまま敗血症に進行することもあるので注意が必要です。特に乳幼児は、発熱以外にはっきりした症状が現れない傾向があるといわれています。

中耳炎

肺炎球菌による中耳炎は子供によく現れます。鼓膜の奥に細菌が入ることで炎症を起こして耳が痛み、鼓膜が赤く腫れます。小児用の肺炎球菌ワクチンの接種で、重篤化を防ぐことが可能です。

敗血症

感染による炎症がほぼ全身に起こります。悪寒の次に発熱、錯乱などの症状が現れ、悪化すると臓器不全となることもあります。

気管支炎

細菌が気管支の粘膜で炎症を起こすことで発症します。風邪の症状から始まり、発熱と激しい咳が続き、さらに重症化すると呼吸困難を起こします。

どうすれば肺炎球菌感染症を予防できる?

まずは、自分自身で以下のようなことに気をつけましょう。

・鼻や口に触れた後、そして食べ物を扱う前に、定期的、かつ徹底的に手を洗う
・ティッシュで覆って咳やくしゃみをし、すぐに捨てて手を洗う
・他人とコップや台所用品を共有しない

そして、肺炎球菌によるさまざまな感染症の発症や重症化を防いでくれるワクチンを接種することも大切です。

おわりに:ワクチンを接種して感染を予防することが大切

現在、日本で採用されているワクチンは非常に効果があるということが証明されています。高齢者は積極的にワクチンを接種し、肺炎や重い合併症などから自分の身を守りましょう。

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