記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
「認知症」と「アルツハイマー」は広く知られた言葉ですが、両者の違いとは何でしょうか?
この記事では、認知症の種類やそれぞれの違いについて解説していきます。
基礎知識として覚えておきましょう。
認知症には発症原因によって様々なタイプがあります。アルツハイマー病や脳血管性認知症など、多くのタイプは根本的な治療ができずに症状の進行を遅らせることが治療の目的となります。
一方、慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症、甲状腺機能低下症などによる認知機能の低下は原因となる病気の治療を行うことで認知機能の回復を見込むことができます。
以下のような症状を伴う認知症は、完治する見込みがありますので早めに病院を受診しましょう。
そもそも認知症とは病名ではなく、記憶力や判断力、認識力が障害され、日常生活に支障をきたす状態を指します。この認知症を引き起こす原因の一つが、アルツハイマー(アルツハイマー病)であり、アルツハイマー病による認知症を「アルツハイマー型認知症」と呼びます。
アルツハイマー型認知症とは、脳にアミロイドβというたんぱく質が蓄積し神経細胞が壊れ、脳萎縮が起きたことが原因で引き起こされると考えられています。ただ、このアミロイドβが蓄積する原因についてはわかっていません。
また、アルツハイマー型認知症にはApoEという遺伝子が発症に関係している可能性も示唆されていて、この遺伝子を持っている人は、家族にアルツハイマー型認知症の人がいない場合でもアルツハイマー型認知症を発症しやすいということがわかっています。ただし、この遺伝子をもっているからといって必ずアルツハイマー型認知症を発症するわけではありません。
その他、糖尿病や高血圧などの持病がある人や、頭のケガをした経験がある人などもアルツハイマー型認知症になりやすいとされ、加齢自体もアルツハイマー型認知症の発症要因ではないかと考えられています。
アルツハイマー型認知症は、ゆるやかに進行していくのが特徴です。初期の段階では記憶力の低下やもの忘れなどの症状が見られます。もの忘れといっても、例えば朝ごはんの内容を忘れるのではなく、朝ごはんを食べたこと自体を忘れるのが特徴です。
症状が少し進むと、近い時期の記憶からなくなっていき、現在と過去の区別ができなくなっていきます。日付や今いる場所がわからなくなり、徘徊や失禁といった症状が出るようになります。また症状の出方には個人差がありますが、イライラして怒りやすくなったり、お金や物を盗られたと言い張る被害妄想といった症状も現れるようになります。
そして脳萎縮がさらに進行すると、言語能力が失われたり、食事が困難になったり、寝たきりになりやすくなります。
認知症にはアルツハイマー型認知症のほか、「レビー小体型認知症」、「脳血管性認知症」などさまざまな種類があります。
レビー小体型認知症とは、レビー小体というたんぱく質が脳に溜まることで脳の萎縮が発生し、引き起こされると考えられています。レビー小体は認知症を伴うパーキンソン病の原因とも言われるものですが、このレビー小体が溜まる原因については明らかになっていません。
レビー小体型認知症の主症状は、歩行困難や転倒、幻覚などです。また認知機能も影響を受けるため、気分がころころ変わることも少なくありません。
脳血管性認知症とは、脳出血やくも膜下出血、脳梗塞などの脳の血管の病気によって引き起こされる認知症です。高血圧や糖尿病、脂質異常症など生活習慣病の人はこれらの血管障害を起こしやすいため特に注意が必要です。
脳血管性認知症になると、初期の段階では意欲の低下や不眠症状などが見られ、症状が激しく変動するのが特徴です。脳血管性認知症では損傷した脳の部位が限定的なため、できることとできないことがはっきりしています。原因となる脳血管疾患の発作が起こると、認知症も重症化します。
認知症には根本治療ができるものとできないものがあり、治療方法が変わってきます。ただ、アルツハイマー型認知症のように根本治療が難しい認知症でも、進行を遅らせる薬はあるので、早期に治療を始めることが大切です。
少しでも疑わしい変化に気づいたら、すぐに病院に連れていき検査を受けてもらいましょう。