冬や夏に決まって気分が落ち込むのは、季節性情動障害かも!?

2017/10/10 記事改定日: 2018/12/5
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

季節性情動障害は、一年の特定の時期にだけ気分が落ち込む状態を指します。
大きく分けて夏季うつと冬季うつがありますが、どのような違いがあるのでしょうか。
この記事では季節性情動障害について、対処法とあわせて詳しく解説していきます。

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季節性情動障害とは

季節性情動障害とは季節性によって感情が障害を受け、一年のうちのある時期にだけ気持ちが落ち込む状態のことで、「季節性うつ」と呼ばれることもあります。
様々なタイプがありますが、代表的なものは夏季うつと冬季うつの2つです。

季節性情動障害の症状

季節性情動障害の症状は発症した障害のタイプによって異なりますが、どちらも思い当たる原因やストレスがないにも関わらず、一年の特定の時期になるとやる気が起きない、体にだるさを感じる、精神的に不安定になるという点で共通しています。
また、決まった季節が過ぎれば何事もなかったかのように症状が治まるため、本人や周囲の人も単に夏や冬が苦手なだけだと考えてしまう傾向が高く、自覚症状を持つのが難しいです。

上の項目で説明した夏季うつと冬季うつに注目し、それぞれの症状を見ていきましょう。

夏季うつ
個人差はありますが、多くの場合5月~9月ごろに発生し、食欲不振不眠、体重減少などの症状があらわれます。夏バテとの見分けが難しいですが、精神的な落ち込みがあるかどうかで見分ける方法が一般的です。
冬季うつ
冬季うつは10月~3月ごろにあらわれやすく、夏季うつとは反対に食欲増進(特に炭水化物や甘いものが欲しくなることが多い)、異常に眠くなるなどの症状がみられます。

季節性情動障害の原因は?

現在のところはっきりとした原因はわかっていませんが、世界の中でも日照時間が短い北欧で季節性情動障害の患者が多いことから、特に冬季うつの発症には日光を浴びる時間の長短が関係しているのではないかと考えられています。

これは、日照時間が短くなると日光からの刺激が減り、精神を安定させる作用をもつセロトニンという神経伝達物質の分泌が少なくなることが原因であり、セロトニンが不足してイライラしやすくなったり落ち込みやすくなったことで冬季うつに発展するのではないかといわれています。

季節性情動障害の治療法

冬季うつの治療法

医学的には、光療法が冬季うつ病の治療・対策の第1選択とされています。
光療法は、専用のライトなどを利用して日光に近い人工的な光を一定時間患者に浴びさせる治療法です。光を補うことで、乱れた昼夜のリズムや体温の降下のリズムが整い、全体的な生体のリズムを通常の状態に戻す効果があるといわれています。

尚、光療法を行っても冬季うつ病の症状が改善しないときには、抗不安薬や光に対する感受性を高めるビタミンB12、抗うつ薬の投与が検討されることが多いです。

夏季うつの治療法

夏季うつは、女性に多く見られ、冷房の効きすぎや冷たい飲食物の摂りすぎなどの夏季特有の環境や生活習慣の変化によって自律神経のバランスが乱れることが主な原因と考えられています。

このため、体の冷えを促すような生活習慣を避けることが症状改善のための第一の対策となります。しかし、生活習慣の改善を行っても抑うつ気分などの症状が改善しない場合には、抗うつ薬や抗不安薬などの投与が行われることも少なくありません。

冬季うつや夏季うつの予防対策はあるの?

季節性情動障害は前もって対策を行うことで、ある程度は予防することが可能です。
冬季うつと夏季うつ、それぞれの予防対策は以下の通りです。冬や夏など特定の季節にのみ変調がある人は以下のような対策を行ってみましょう。

冬季うつ

冬季うつの主な原因は、日光に当たる時間が短くなることから、メラトニンの産生量が低下することです。
冬季うつを予防するには、毎朝しっかりとカーテンを開けて日光に当たるようにする・日中は適度に外出したり窓際に行くなどして日光を積極的に取り入れるなどの対策が大切です。また、休日は室内に籠らず、積極的に外出するようにしましょう。

夏季うつ

夏季うつの主な原因は、外気温と室温の差が激しく、自律神経のバランスが乱れがちになることです。また、冷たい飲み物や食べ物を摂る機会が多くなることも、身体の冷えを促して自律神経バランスの乱れを引き起こす原因になります。

夏季うつを予防するには、過度な冷房の使用は避け、外出時にはカーディガンなどの羽織物を持参して身体の冷えを防ぐようにしましょう。また、室内と外気の温度差は5℃程度が理想です。猛暑日などは熱中症に注意して、室内の冷やしすぎに注意しましょう。

おわりに:冬や夏に気分が落ち込んでしまうなら、季節性情動障害の可能性も

冬や夏などの決まった時期に、ひどく気分が落ち込んでしまうという人は季節性情動障害かもしれません。
季節性情動障害は精神的な問題ではなく、きちんとした治療法がありますので、思い当たることがあるなら、専門家に相談して適切な療を受けましょう。
また、発症を防ぐためにも、季節が変わる前にきちんと対処するように心がけてください。

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