過敏性腸症候群とは、どんな病気?克服する方法はある?

2017/10/18 記事改定日: 2018/10/10
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

腹痛や下痢が慢性化してしまい、通勤中も便意に苦しんだりする「過敏性腸症候群」ですが、過敏性腸症候群は何が原因で引き起こされるのでしょうか?
対処法とあわせて紹介していきます。

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過敏性腸症候群(IBS)とは?

過敏性腸症候群とは、主にストレスがきっかけとなって腹痛が起こり、下痢や便秘を頻繁に繰り返す病気です。会議前やテスト前といったストレスが強くかかりそうな場面だけでなく、毎日行うような行動、例えば授業や仕事、アルバイト、電車やバスでの通学通勤などもきっかけとなり得るのですが、このようなストレスに腸が過敏に反応してお腹が痛くなり、トイレに駆け込みます。

どんなストレスでもきっかけとなり得るため、普段の生活の中で突然腹痛に襲われるのが特徴ですが、腸自体には問題がないことも多く、トイレに行ってもいまいち排便がなく、帰ってきてまたトイレに行きたくなるのを繰り返すことも少なくありません。

重要なのは、この腹痛が悪循環に陥りやすい点にあります。具体的には、「大事なテストや会議で抜けられない」「電車やバスに乗っていて目的の駅まで降りられない」といったすぐにトイレに行けない状況がさらに不安を駆り立て、腹痛を増幅させてしまうのです。その結果、不安な状況と腹痛という体験が強く焼き付き、再びテスト前や会議前、満員電車の前に立つとその体験が思い出され、お腹が痛くなるというサイクルを繰り返すこととなります。

下痢型、便秘型、ガス型の特徴の違いとは?

過敏性腸症候群は、便の性状や症状などによって大きく「下痢型」・「便秘型」・「ガス型」の3つに分類されます。
「下痢型」とは、下痢を繰り返すタイプで、男性に多いのが特徴です。感染症などの原因がないにも関わらず、腹痛を伴う下痢が突然襲ってくるため、公共交通機関の利用ができなくなったり、ひどい場合には外出すら困難になるケースもあります。

「便秘型」とは、慢性的な便秘が生じるタイプで、女性に多いのが特徴です。食生活や運動習慣の乱れなど便秘を引き起こす明らかな原因がないにも関わらず、固い便が多く慢性的な便秘を生じるもので、腹部膨満感や吐き気などの症状を伴うことも少なくありません。また、便意は感じるものの排便に至らないことが多いため、トイレから離れられない患者もいます。

「ガス型」とは、便の性状や排便習慣には異常がないものの、おならが出やすくなるタイプです。常におならが出やすい状態となるため、自制することが困難なケースも多く、場合によっては人前に出られないなど対人恐怖症に類似した症状を伴うこともあります。

過敏性腸症候群の原因は?

過敏性腸症候群の主な原因はストレスですが、日常生活の中の些細な出来事でも引き金となり得ます。ストレスや些細な出来事をきっかけに不安や緊張、苦手意識が強まると、腸の運動を司る神経が過敏になり腹痛を引き起こすようになるのです。またほかに、睡眠不足や運動不足、栄養バランスの偏りといった生活習慣の乱れによっても、腸が過敏になることがあります。

過敏性腸症候群は、自分で改善できる?

過敏性腸症候群のセルフケアの本筋は、ストレスがかかる出来事を目の前にしてもお腹が痛くならないという経験と、もしお腹が痛くなっても何とかなるという経験を自分に繰り返し積ませることです。

そのためには、日常生活の中でできることから始めていくのが良いでしょう。例えば、仕事中はトイレに行きやすい状況を作っておく、テストや会議ではドアの近くに座る、先生や上司に先に事情を説明しておく、といった対策が有効です。電車やバスに乗るのが不安なときは、早く家を出ておくのも手です。

また、生活習慣の改善を心がけることも大切ですが、規則的な生活に縛られることがストレスになるようなら、できる範囲でほどほどからスタートするのをおすすめします。

セルフケアでは症状が改善しない場合は?

過敏性腸症候群は、血液検査や内視鏡検査をしても腸に異常が見つからないことが多いため、整腸剤や抗菌薬を飲んでも効果がないことがほとんどです。そのため、過敏性腸症候群を疑う場合は心療内科の受診がおすすめです。専門の医療機関では、腸自体に作用するというより、腸の運動を司る神経や、ストレスを強く感じやすい精神面に作用する薬を処方してくれることがあります。

また、カウンセリングを受けられたりするところもあります。悩みや不安を誰かに打ち明けることや、ストレスを感じる出来事への対処法を第三者からアドバイスしてもらうことは、自分一人で考えるよりも別の糸口が見つかりやすく、心が軽くなりやすいです。

おわりに:整腸剤を飲んでも症状が改善しないことも。早めに適切なケアを

過敏性腸症候群の原因の多くはストレスによるものです。そのため、整腸剤などを飲んだだけでは症状が改善しないケースも多く見られます。長引く症状でお困りの方は、ぜひ一度専門の医療機関で治療を受けたり、日頃から不安を和らげる工夫を行うようにしてください。

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