過敏性腸症候群の治療薬と、相談しにくいガス型の改善方法について

2017/12/28 記事改定日: 2018/10/10
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

辛い腹痛や下痢を引き起こす「過敏性腸症候群」。この過敏性腸症候群を改善するために、効果のある治療薬とはどのような薬なのでしょうか?また、おならの回数が増えたり、臭いがきつくなるガス型の過敏性腸症候群は薬で治療できるのでしょうか。
以降で詳しく解説していきます。

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過敏性腸症候群とは?

過敏性腸症候群は、精神的ストレスを受けることで便秘、下痢、腹部膨満感など、痛みや不快感を伴う排泄異常が生じ、それを繰り返す病気です。通勤中や会議前などに突然痛みや下痢などの異常が発生することが多く、その時間帯が限られているのが特徴です。

なかなか便が出ず、出ても固い便が少量だけの便秘型、軟便や水様便が続く下痢型、便秘と下痢を繰り返す混合型、この3種類に特定できない分類不能型の4種類に過敏性腸症候群は分類されます。

過敏性腸症候群では、検査を繰り返しても器質的な異常が発見できないことがほとんどです。このため整腸剤や下剤など便秘や下痢の症状を和らげる対症療法しかできず、結果として病状が改善せず長期間苦しまれる方も少なくありません。

ストレスによる症状悪化に注意!

過敏性腸症候群の原因は、現時点でははっきりとわかっていません。ただし最近の研究では、何らかのストレスが加わることで、ストレス関連ホルモンが脳下垂体から放出され、その刺激により腸の働きが乱れ、下痢や便秘といった過敏性腸症候群の症状が出ると考えられています。

またこのような腹部症状を繰り返すと、症状そのものへの不安や「仕事中に症状が出たらどうしよう」という不安が新しいストレスとなってしまい、症状を悪化させることもあります。また、腸が刺激に対して知覚過敏になることで、ほんの少しの痛みや動きでも脳のストレス反応を引き出してしまい、症状が起こってしまうこともあります。

過敏性腸症候群では心身に受けたストレスにより、脳でストレス関連ホルモンを分泌する動きが繰り返されることで、症状が増幅、悪化してしまうことがよくあります。これをIBSスパイラルと呼んでいます。

過敏性腸症候群の治療薬とは?

治療では、刺激物を避け、できるだけ同じ時間帯に食事を摂るなど食習慣の改善、十分な睡眠や適度な運動などの生活習慣の改善、ストレスを認識した上で解消・発散する方法を探るストレスマネジメント、腹部症状を改善する薬物療法をバランス良く組み合わせて行います。

薬物療法においては、便の固さをほどよくし便通を整えるゲル形成薬、胃腸の調子を整え特に下痢を抑える消化管運動調律薬、便秘を伴わない下痢型に用いられる5-HT-3受容体拮抗薬、腸管に作用し腸内の水分量を増やし腸管運動を活発にする、便秘型に用いられるGC-C受容体作動薬、整腸作用のある乳酸菌製剤、腸の運動を抑え腹痛を伴う下痢に効果のある鎮けい剤や、諸症状に合わせた漢方薬などが用いられます。

ガス型の過敏性腸症候群も、薬で治る?

ガス型の過敏性腸症候群は、便の性状や排便回数などに異常がないものの、おならが出やすくなるタイプのものです。

おならは自制できないことも多く、特に若い女性の場合は周囲に相談できず深刻な悩みを抱えているケースも多々あります。中には、無意識におならが出てしまうことで「人前に出るのが怖い」といった対人恐怖症様の症状が現れたり、自分は常に臭いと思い込む自臭症を発症することもあり、日常生活に大きな支障を来たすケースも少なくありません。

ガス型の過敏性腸症候群は、積み重なったストレスや不規則な食生活などが発症原因として考えられています。症状を改善するには、しっかりと休息・睡眠をとってなるべくストレスや疲れの溜まらない生活を送り、食物繊維の摂りすぎや油分、塩分、糖分、刺激物、アルコールなど胃腸に負担がかかる食事を控えることが大切です。

また、治療法としては、整腸剤の内服を行うことが多いですが、不安感が強い場合や悩みによる抑うつ状態などが見られる場合には抗不安薬や向精神薬が使用されることもあります。
また、適度な運動習慣を身に着けることで、腸の蠕動運動を正常化することにもつながりますので、腹筋を適度に使うような運動を生活の中に取り入れるとよいでしょう。

薬剤は医師の指示通りに!自己判断で市販薬の併用は止めよう!

過敏性腸症候群は心身ともにデリケートな人がなりやすく、なおかつすぐには治らない病気です。そのため、病状だけでなく体質や生活習慣も含めて医師が総合的な判断を行い、必要な薬と服用量を決定し、さらに病状の変化に合わせて投薬量や内容を適宜改めていく、という長期的な治療が必要になるのです。

例えば、「数日服用してみたけれど下痢が治らないから」といった理由で市販の止瀉薬を追加すると、病状の変化の判断も難しくなりますし、場合によっては薬の副作用や相互作用により別の異常が出現してしまうかもしれません。いずれにしても過敏性腸症候群の治療においては障害以外のなにものでもないのです。

過敏性腸症候群は時間はかかりますが、改善する病気です。早く治すためにも、医師の指示通りに薬を服用しましょう。

おわりに:医師の指示通りの服薬と、生活習慣の改善を!

過敏性腸症候群を治療するには、薬物療法だけでなく生活習慣の改善など、多面的なアプローチが必要になります。また、薬物治療の効果を判断するには、医師の指示通り服用することが非常に重要なので、自己判断で服薬をやめたり、追加で薬を飲んだりすることは避けましょう。

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