記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/3/16 記事改定日: 2018/10/10
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
下痢や便秘などの辛い胃腸症状を繰り返す「過敏性腸症候群」。いま、この過敏性腸症候群の新しい治療法として注目を集めているのが「腸内フローラ移植」です。
詳しくは以下でご紹介していきます。
近年、過敏性腸症候群の原因のひとつとして、腸内細菌が関与していることがさまざまな研究で指摘されるようになりました。
ある研究によると、過敏性腸症候群の患者は、そうでない人と比べて腸内細菌の種類が少なく、食事や薬の影響を受けやすいということがいわれています。また別の研究によると、ストレスによって腸の善玉菌が減って、悪玉菌が増えたとの報告もあります。
脳と腸には、このように強いつながりがあります。脳にストレスを感じると腸の動きが悪くなったり、逆に腸内の状態が悪いと脳の働きに影響を与えたりと、密接に関わっているのです。
過敏性腸症候群は、腹痛や便秘、下痢などの症状が長期にわたって繰り返し起こる病気のことを言います。検査をしても大腸に炎症などの異常はみられず、はっきりとした原因はわかっていません。
腸の動きは、自律神経を介して脳によって制御されています。ここに何らかのストレスがかかると、自律神経のバランスが悪くなって、腸の運動が激しくなったり、痛みに敏感になったりします。この傾向が強くなった状態が、過敏性腸症候群だとされています。
症状がひどくなると、突然起こる腹痛や下痢などの症状のために通勤・通学ができなくなったり、外出がしにくくなったりすることもあります。過敏性腸症候群の患者は若い世代に比較的多くみられ、日本人全体では7人に1人程度の割合で発症するともいわれています。
過敏性腸症候群の原因と考えられる、腸内細菌のバランスの乱れを整える方法として「腸内フローラ移植」という方法が注目されています。まだ一般的には行われていない治療方法ですが、一部の医療機関で研究目的で実施されています。
腸内フローラ移植とは、ドナーから提供された便をもとに菌液をつくり、腸内細菌を移植するというものです。健康な人の腸内細菌を移植することでバランスを整え、過敏性腸症候群やクローン病といった腸の病気を改善させる効果が期待されています。
腸内フローラ移植を受けるためには、まずは実施している医療機関に問い合わせる必要があります。医師の診察を受けた上でドナーを選定し、つくられた菌液を肛門からカテーテルで注入するという流れです。移植された腸内細菌が定着するのは数分から10分程度ですが、複数回行うことでより定着率は上がるといわれています。
過敏性腸症候群の発症原因は、腸内フローラの異常以外にも、ストレスや疲れなどが原因となることがあります。また、過度なストレスがかかることによって、IBSの症状が悪化しやすいこともわかっています。
このため、IBSの発症を予防したり、症状を改善するためには十分な休息・睡眠を確保してなるべくストレスや疲れが溜まらない生活を心がけることが大切です。また、日常生活の中では適度にストレスを解消できる方法を身につけておくのもよいでしょう。
腸内細菌と脳の関連性や、過敏性腸症候群の治療に関しては、まだまだ研究段階です。しかし、この研究で関連や治療効果が証明されていけば、将来的には腸内フローラ移植もスタンダードな治療方法となるかもしれません。
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