記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/10/30 記事改定日: 2018/11/2
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
インフルエンザになると高熱や吐き気だけでなく、全身に筋肉痛のような痛みが現われることが多いです。
では、インフルエンザになると筋肉痛のような痛みが現われるのは何故でしょうか?
この記事で痛みが生じる原因と対処法を解説します。
インフルエンザによる痛みは眠れないほど酷い場合もあり、十分な睡眠がとれなくなってしまう患者さんも少なくありません。特に熱が上がっている途中には、歩くことや階段を上ることをはじめ普通に動くことさえも辛く感じることも多いです。
インフルエンザによる筋肉痛は激しい運動をした後に起きる筋肉痛とは少し異なります。
通常の筋肉痛は負担をかけすぎた筋肉が回復することによって現われますが、これに対してインフルエンザの場合はウイルスが体の中に入った時に放出される物質が原因で痛みが生じます。
インフルエンザウイルスが体内に侵入するとウイルスを攻撃する免疫細胞が活発に働き、「サイトカイン」という物質が作られます。また、サイトカインに反応して、「プロスタグランジン」という物質が同時に生成されます。つまり、筋肉痛のような痛みの原因はこのプロスタグランジンなのではないかと考えられています。プロスタグランジンによる関節痛や筋肉痛などの体の痛みは、身体がインフルエンザウイルスと戦っている証拠でもあるのです。
プロスタグランジンは発熱を促してリンパ球を活性化させ、ウイルスの増殖を防いだり免疫反応を高める働きをしています。また、上の項目で説明した「サイトカイン」の過剰な分泌をおさえる働きもあります。
サイトカインは脳にウイルスの侵入を伝える大切な役割がありますが、過剰に出過ぎると臓器不全などを起こす可能性があるため、分泌量のコントロールが重要なのです。
では、インフルエンザになったときの筋肉や関節の痛みを緩和するにはどんなことをすれば良いのでしょうか?
この項目で、代表的な痛みの改善方法を紹介します。
あまり知られていませんが、インフルエンザによる痛みは炎症が原因のため、体の痛む部分を冷やすことで血管の拡張が抑えられて痛みが緩和されやすくなります。
冷却剤やアイスノンをタオルに巻いて患部に当て、じっくりゆっくり冷やすとよいでしょう。
上の項目で説明したように、インフルエンザによる関節痛・筋肉痛を引き起こす原因はインフルエンザウイルスではなくプロスタグランジンなので、プロスタグランジンの生成を抑える働きがある解熱鎮痛剤を服用することで痛みが緩和することがあります。
ただし、「ジクロフェナクナトリウム・メフェナム酸」が入っている解熱鎮痛剤は、インフルエンザ脳症の症状に関わる場合があります。そのため、けいれんや意識障害などインフルエンザ脳症が疑われる場合には使用することができません。中でも「メフェナム酸」はインフルエンザ脳症の疑いがない場合でも、インフルエンザで発熱している小児に対して原則として使用できないことになっています。
解熱鎮痛剤の中にはインフルエンザのときに使用すると危険なものがある(例えば「アセチルサリチル酸」や「サリチルアミド」は、インフルエンザを発症している15歳未満の小児には原則使用しません。)ので、市販の解熱鎮痛剤や手元にある薬の使用は避け、医師に処方された薬を使うようにしてください。
土日祝日や夜間などの病院に行けない場合に急場をしのぎたいときは、安全性が高いといわれている成分である「アセトアミノフェン」が配合された鎮痛剤を使用しましょう。成人に限ってはイブプロフェンを使用することも可能です。
また、解熱鎮痛剤としてよく使われている「ロキソプロフェン」は、医療の現場ではインフルエンザ治療における有効性について意見が分かれています。
基本的にインフルエンザによる筋肉や関節の痛みは熱が出ている時に生じるものになります。そのため、熱が下がると同時に体の痛みも消えていくことがほとんどです。
インフルエンザの場合は熱が下がってもしばらく体内にウイルスが滞在していますが、一般的には体内にウイルスが残っている状態でも、高熱が出てから2日ほどすると熱が下がり始めて痛みが和らいでいきます。
個人差はありますが、体温が37度程度までに下がった頃には痛みがなくなっていることが多く、平熱になったころには痛みも消えていくので、熱が下がるまではできるだけ体を動かさず安静にして過ごしましょう。
上でも述べましたが、インフルエンザウイルスに感染すると、体の中では急激に免疫力が働いて炎症性物質であるプロスタグランジンなどの物質が産生されるようになります。これらの炎症性物質はインフルエンザウイルスを攻撃するだけでなく、正常な細胞や組織にもダメージを与えることがあります。
インフルエンザにかかったときの筋肉痛はインフルエンザウイルスに感染することによって産生されるプロスタグランジンが筋肉にダメージを与えることによって引き起こされます。インフルエンザの症状は人によって異なり、中には熱が出なかったり微熱に留まることもあります。つまり、はっきりとした発熱がなくても筋肉痛のような痛みがでるということです。
激しい運動をした後ではないのに、全身の筋肉痛が生じた場合、熱がなくてもインフルエンザにかかっている可能性があります。
疑わしい症状がある場合はなるべく早めに病院を受診するようにしましょう。
インフルエンザの時に生じる筋肉痛のような痛みは、免疫細胞がウイルスをやっつけようと発熱を促すことで発生するものです。そのため、たいていは熱が下がると同時に痛みが和らいでいきます。
熱が高い間は安静にして過ごし、熱が早く下がるようにしましょう。痛みが強い場合には、痛みのある部位を冷やしたり医師から処方された解熱剤を使たりして対処してください。
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