記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/13 記事改定日: 2018/6/4
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
シェーグレン症候群とは、全身に「乾き」の症状が現れる自己免疫疾患です。特に顕著とされる症状が「目と口の乾き」であり、この症状が長く続くとQOL(生活の質)が著しく低下することもあります。この記事ではシェーグレン症候群の症状について解説しています。
シェーグレン症候群は、自己免疫疾患の一種です。口が乾いた状態が続く慢性唾液腺炎と、目が乾いた状態が続く乾燥性角結膜炎が主な症状ですが、それ以外にも関節炎や全身性の臓器変形を伴うことがあります。
シェーグレン症候群は膠原病に分類されますが、そこからさらに膠原病に合併する二次性シェーグレン症候群と、それとは合併のない原発性シェーグレン症候群に分類されます。なお、シェーグレン症候群の名は1930年代に症例報告をしたスウェーデンの眼科医、ヘンリック・シェーグレンに由来しています。
シェーグレン症候群の患者は人口10万人に対して15人とされており、男女比は1対14で圧倒的に女性が多く、発症年齢は40~60代がとくに多いといわれています。
シェーグレン症候群の主な症状としては、最も顕著なものはドライアイと口の乾燥です。
などが症状として挙げられます。
その他にも
といった鼻腔内の乾燥や
といった症状が現れたり、全身症状として
といった症状も現れることがあります。
ただ、発症したからといってこれら全ての症状が現れるわけではなく、またこの中のどれかの症状が現れたからといってシェーグレン症候群であるとは限らないため、専門の医療機関にて検査を受け、判断する必要があります。
シェーグレン症候群は、様々な全身症状が現れます。自己免疫性疾患に生じやすい関節炎が引き起こされ、これに伴う発熱が生じます。また、腎障害による夜間の頻尿や皮膚が紫外線に当たるとアレルギー反応を生じる日光過敏症などが特徴です。
さらに、シェーグレン症候群の患者の三人に一人は、寒い場所にいると指先が非常に冷たく青くなり、しびれや痛みを生じ、温めると紫色に変色して徐々に正常な皮膚の色に戻るというレイノー現象を生じることが知られています。
このような症状がある場合にはシェーグレン症候群の可能性があるので、膠原病内科などで検査を受けることをおすすめします。
シェーグレン症候群の原因についてはっきりしたことはわかっていませんが、ひとつの原因として免疫異常が挙げられています。私たちの体は外部からバクテリアや異物が混入すると、それを撃退するための免疫反応が働きます。
しかし、何らかの原因で免疫異常が生じると、自分の体の中のたんぱく質を抗原と認識し、リンパ球や自己抗体が自らの体を攻撃してしまいます。つまり、正常な細胞を攻撃してしまうため体にさまざまな障害が起きてしまうのですが、シェーグレン症候群の場合は主にリンパ球が腺細胞や導管細胞を攻撃するために、諸症状が起きると考えられています。
現在のところは上記の免疫異常のほか、環境、遺伝的要因、女性ホルモンによる影響などの要因が組み合わさって起きるという説が有力視されています。
現段階では、シェーグレン症候群に対する根本的な治療法は確立されていません。そのため、乾燥状態を軽減させるための対症療法が中心となります。
まず、ドライアイについてはステロイド薬を使用して涙の分泌を促進させたり、人工涙液などの点眼液を使用したりします。また、涙の蒸発を防ぐために専用の眼鏡を装着することもあります。
口の乾燥に対しては、薬剤や漢方薬を用いて唾液を促進するのが一般的です。唾液の分泌が低下すると虫歯になりやすくなるため、人工唾液を使ったり、また虫歯予防のために抗真菌薬を使用することもあります。また、虫歯や歯周病予防のために、禁煙や禁酒など食生活を見直して口腔内の刺激を減らすことも有効な対処法です。
シェーグレン症候群は自己免疫疾患であり、体の免疫力が低下している時に症状が悪化する可能性があります。このため、日常生活の注意点としては、十分な免疫力を維持するために規則正しい生活、十分な睡眠、バランスの取れた食事などを心がけ、疲れやストレスを溜めないようにしましょう。
また、寒さが症状を悪化させることも知られており、季節によっては十分な防寒を行い、手袋を着用するなどして指先を冷やさないように注意が必要です。
日常的にドライアイや過度の口の渇きなどの症状に悩まされている場合、シェーグレン症候群の症状として起こっている可能性があります。40歳以降になってから発生することが多いので、疑わしい症状がみられたら一度専門の医療機関で検査を受けましょう。