バッド・キアリ症候群とは ~ 肝臓から出る血流が悪くなる難病 ~

2017/11/22

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

日本では年間300人程度の患者さんが治療中で、難病にも指定されている「バッド・キアリ症候群」。以降で、その原因や症状、治療法などについて詳しく解説していきます。

バッド・キアリ症候群とは

バッド・キアリ症候群とは、肝臓から流れ出る血流が停滞することによって、肝臓・脾臓や体の各所にさまざまな症状が引き起こされる病気です。

通常、肝臓からの血液は肝静脈を通って肝臓の外に出て、その先にある肝部下大静脈を通って心臓に到達します。しかし、この肝静脈あるいは下大静脈が血栓によって詰まったり、狭まったりすると、肝臓を通過する血液の循環に支障が生じ、肝臓内部に血液が滞った状態になってしまいます。そうなると肝臓がうっ血を起こし、肝臓に血液を注ぐ静脈(門脈)の血圧が高まるため、結果として体の色々な箇所に症状が引き起こされるのです。これがバッド・キアリ症候群です。

バッド・キアリ症候群の原因は

バッド・キアリ症候群のうち、7割ほどは原因をはっきりと特定することができません。このような原因が不明なものを原発性バッド・キアリ症候群といいます。一方、残りの約3割は他の病気や服薬などが原因や契機となって発生するもので、これを続発性バッド・キアリ症候群と呼びます。

続発性バッド・キアリ症候群の原因と考えられているものは、血液疾患や血液凝固異常、血管炎、肝腫瘍、腹腔内感染、腹部の外傷などです。また女性の場合は、妊娠・出産や経口避妊薬の服用によって血栓が生じやすくなることも原因とされています。さらに、そもそも血管が詰まりやすい根本的な原因として、先天的な肝静脈・下大静脈の形成異常が指摘されているほか、近年では血液凝固に関する遺伝子異常の可能性も考えられています。

バッド・キアリ症候群の症状

バッド・キアリ症候群の症状は、肝臓に血液が溜まることと、それにより血流の一部が肝臓の他に流れてしまうことによって発生します。具体的には、肝臓が腫れる、お腹や胸の部分の静脈が怒張する、食道・胃・下肢などに静脈瘤ができる、腹水がたまるといった症状が起こります。また、肝臓以外へ流れる新しい血流のために脾臓が腫れて機能が阻害され、貧血や疲れやすいという症状も発生します。

なお、症状には急性型と慢性型があり、急性の場合は腹痛や静脈瘤の破裂による吐血、嘔吐、肝臓の腫れ、腹水の症状が強く表れ、命の危険がある状態に陥ります。ただし、日本ではほとんどの患者さんは慢性の症状で、当初はほとんど症状が自覚されず、数週から数か月かけて少しずつ症状が進んでいきます。

この病気になると、どんな治療が行われるのか

バッド・キアリ症候群の治療の基本は、肝静脈や下大静脈の詰まりを解消して、血流を正常な状態に戻すことです。そのため、血管をふさいでいる血栓を溶かし、新たな血栓を作らないための治療法を実施します。また、カテーテルで血管を拡張する処置や、血管の詰まりを直接取り除く手術が行われることもあります。

さらに、できてしまった静脈瘤が破けて出血が起きた際には、ショック症状から重篤な状態に陥る危険があるため、緊急の対応が必要になります。この場合、速やかに点滴や輸血を行い、静脈瘤からの出血を止血します。止血の処置としては、薬物療法やカテーテルで圧迫止血する方法、内視鏡による処置、手術により患部の食道を切り離す方法がとられています。

おわりに:継続的な貧血や疲労感が、症状のサインの可能性も

初期段階では自覚症状のないケースが多い半面、命を落とす危険性もあるバッド・キアリ症候群。妊娠や出産などで血栓の生じやすい女性は発症リスクが高いとされているので、貧血や疲労感などの症状が慢性的に続いた場合は、念のため病院で検査を受けてください。

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