記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/22 記事改定日: 2018/11/7
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
食道裂孔ヘルニアは、横隔膜にあいている食道が通る穴(食道裂孔)が緩くなることで胃が胸部に上がってしまう病気です。
無症状であれば問題ありませんが、胃酸が逆流するようになると治療が必要になることもあります。食道裂孔ヘルニアの基礎知識を紹介するので、心当たりのある人は参考にしてください。
横隔膜は胸のあたりで体内の臓器を上部と下部を分かれるように存在し、横隔膜に開いた穴を、食道と胃がチューブのようにつながりながら通っています。この穴を食道裂孔といいます。
通常は、横隔膜より上に食道があり、横隔膜の下に胃がありますが、なんらかの原因で、胃が横隔膜の下から上に出てきている状態が食道裂孔ヘルニアです。
横隔膜は呼吸によって動き、身体を起こしているか、寝ているかによって場所が変わってくるため、食道裂孔ヘルニアの状態もそれに合わせて変化します。また、腹圧がかかるときには胃が下から押されて胃が上がりやすくなるため、このことが起因して食道裂孔ヘルニアの状態が変化することもあります。
食道裂孔ヘルニアになっても身体の中の機能が正常に保たれていれば、自覚症状がないままに経過します。しかし症状はなくても、食道裂孔ヘルニアは胃が胸腔内にあるため胃酸が逆流しやすく、逆流性食道炎を起こすリスクが高くなるので注意が必要です。
胃酸が逆流することで胸やけや胸痛、つかえ感といった症状が出現するようになり、悪化してくると胸にある臓器を押し上げてしまうことにより呼吸困難の症状が出ることもあります。
これらの症状は、横になって寝ているときや、食後で食べ物が胃に入っているとき、前かがみの姿勢になっているときなどに強く感じやすくなることが特徴です。その他、アルコールや油ものをとったときに症状が強くなることがあります。
食道裂孔は筋肉から成る横隔膜の穴です。加齢による筋肉の萎縮や肥満などによる腹圧の上昇によって食道裂孔が広がることで、胃の一部が食道裂孔よりも上位に飛び出すのが食道裂孔ヘルニアです。
食道裂孔ヘルニア自体には痛みはなく、特に症状もない場合には治療の必要はありません。しかし、胃の一部が飛び出すことで、食道と胃の境目にある筋肉がゆるみ、胃の内容物が食道へ逆流することがあります。
胃の内容物には酸性度の高い胃酸が含まれています。胃の粘膜は酸性度の高い胃酸に晒されてもダメージを受けない構造になっていますが、食道の粘膜にはそのような仕組みはなく、長期間にわたって胃酸に晒されると粘膜が荒れて痛みを生じることがあります。
痛みの部位は前胸部が中心ですが、横たわった姿勢で逆流が生じると喉まで胃の内容物が逆流し、喉の痛みを感じることも少なくありません。
食道裂孔ヘルニアは食道裂孔が緩いとなりやすいとされ、食道裂孔は生まれつき緩い人もいれば、加齢によって緩くなってしまうこともあり、どちらも食道裂孔ヘルニアの原因になります。
また、姿勢も食道裂孔ヘルニアの発症に関わってきます。
前かがみになると、食道が胃よりも下になるので、重力の力で胃が身体の上部に動きやすくなり、食道裂肛ヘルニアを起こしやすくなります。その他にも、喘息を持っている人は、強い咳を繰り返すことで、腹圧が強くかかる状態が続き、食道裂孔ヘルニアを起こしやすく、肥満の人も食道裂孔ヘルニアになりやすいといわれています。
胃酸の分泌を抑える薬を内服する薬物療法や日常生活の中で胃酸の分泌を抑えるための生活指導が行われ、それでも症状が改善しない場合は、胸の方まで上がってきてしまっている胃を正しい位置に移動させる手術を行うことがあります。
手術では、まず胸の位置にきてしまっている胃を腹腔内に戻し、そこから再び胃が胸の方まで出てしまわないように食道裂孔を縫合して小さくします。その後、逆流を防ぐために食道を胃で巻きつけ、逆流を防ぐ弁を形成します。
食道裂孔ヘルニアは無症状のことも多いので、何も処置せずそのまま過ごしてしまうことも多いです。
しかし、悪化が進み胃酸が逆流するようになると、逆流性食道炎のリスクが高まります。胸やけや胸のつかえ、胸痛などの症状がある場合は、病院を受診し適切な治療をしてもらいましょう。
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