記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/16 記事改定日: 2018/9/17
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
食道裂孔ヘルニアは、横隔膜の隙間である「食道裂孔」から、胃が部分的に飛び出してしまう病気です。胃痛や吐き気、口臭などの症状が現れ、病院では薬物療法や手術療法などで治療が行われます。
この記事では、食道裂孔ヘルニアの治療方法と、食事の注意点について解説しています。
横隔膜は筋肉でできており、通常、食道裂孔では適度に食道が絞められているため、胃が突出することはありません。しかし、加齢によって横隔膜の力が衰えたり、肥満や妊娠などによって慢性的に強い腹圧がかかっている状態が続くと、胃の一部が食道裂孔から飛び出してしまうことがあります。
食道裂孔ヘルニアは高齢者を中心によく見られる病気であり、特に症状がない場合も多いとされています。しかし、胃の一部が突出することで、胃酸を含む胃の内容物が食道に逆流しやすくなって胸焼けや前胸部の灼熱感、痛み、呑酸などの症状を引き起こすこともあります。
食道裂孔ヘルニアの症状は「逆流性食道炎」が主体となります。このため、まずは薬物療法を行い、症状の改善が見られない場合に手術療法が検討されます。それぞれの特徴は以下の通りです。
主に胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬などの胃薬が使用されます。また、食後すぐに横にならない、消化の良い食事を心がける、減量するなどの生活習慣改善が指導されることもあるでしょう。
手術によって食道裂孔ヘルニアを治療することは稀ですが、薬物療法によっても治療効果が見られず、重篤な潰瘍などの形成を繰り返す場合や、食道裂孔から突出した胃が食道裂孔に締め付けられて嵌頓を生じる可能性のあるケースでは腹腔鏡手術などで食道裂孔を縫縮するなどの治療が行われることもあります。
食道裂孔ヘルニアの手術を受けた後の食事は、胃酸をあまり分泌させないことに気を付けなくてはいけません。食道裂孔ヘルニアの症状は逆流性食道炎として現れます。逆流性食道炎は胃酸が逆流して起こりますから、胃酸の過剰な分泌を防ぐことが大切です。また、治療のため手術を行った後も、胃酸が出すぎると胃にダメージを与えて回復を遅らせてしまいます。
胃酸をあまり分泌させないためにも消化によい食事を心がけ、油や調味料は控えめにして、柔らかく消化のしやすいものを食べるようにしましょう。
栄養バランスとしては低カロリーで高たんぱくのものがおすすめです。特に手術後は傷を回復させるためにたんぱく質が必要となります。低カロリーで高たんぱくな食べ物といえば、代表的なのが豆腐です。豆腐は柔らかいので消化もしやすく、特におすすめできる食材といえます。肉類なら鶏むね肉やささみ、豚や牛のひれ肉、魚ならタラやヒラメなどの白身魚を選ぶようにして、調理するときは柔らかく煮こむなどして消化を良くしておきましょう。
胃酸が過剰に分泌される原因となるのは、脂っこい食事やトウガラシなどの刺激物、甘いものです。揚げ物やカレーなどの刺激の多い食べ物、ケーキなど糖分の高いものは避けましょう。カレーは油分も唐辛子も使われていますし、ケーキは糖分だけでなく乳脂肪も高いため、胃酸をたっぷり分泌させる原因になります。また酸味が強いものも胃酸を出しますから、酸っぱいものも避けるようにしてください。
カフェインが入った飲み物も胃酸を過剰に分泌させます。コーヒーはもちろんですが、栄養ドリンクやエナジードリンクにもカフェインが多く含まれているので飲むのはやめましょう。そして、アルコールは胃酸を過剰に分泌するだけでなく、手術後の身体に負担をかけます。お酒は医師から許可が出るまで飲まないようにしてください。
食後、すぐに横になってしまうとお腹の圧が上がります。すると食べ物や胃酸が逆流して症状が悪化してしまうのです。食事のあと2~3時間は横にならず、イスなどに座った状態でゆったりすごしましょう。
お腹を締め付ける服装や、背中を折り曲げた姿勢や腹圧をかけてしまい症状の悪化につながります。お腹まわりはなるべくゆったりした服装を選び、背筋を伸ばすように心がけてください。
また、食事のときに一度にたくさん食べてしまうと胃酸が大量に分泌しやすくなります。何度かに分けて、ゆっくりとよく噛んで食べることも大切です。
食道裂孔ヘルニアがひどくなると逆流性食道炎を引き起こします。逆流性食道炎は胸やけや胃もたれ、胃の痛みなどの症状があり、とても不快なものです。食道裂孔ヘルニアの治療を行っても、きちんと注意点を守らなければ悪化や再発することもあるのです。医師の指示に従って正しい対処を行い、回復を促しましょう。
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