脂質異常症(高脂血症)の症状とは!?どんなリスクがあるの?

2017/12/7 記事改定日: 2018/10/25
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

脂質異常症(高脂血症)は、血中の悪玉コレステロールが過剰になった状態です。長期間この状態が続くと重篤な病気に発展する可能性があります。
この記事では、脂質異常症の症状やリスク、治療方法について解説していきます。

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脂質異常症になると、どんな症状や変化が現れるの?

脂質異常症を発症したとしても、発症初期から目立った自覚症状が現れることはほとんどありません。
長い期間、高脂質の状態が続くと脂質が肝臓に蓄積して脂肪肝を引き起こし、倦怠感や食欲不振などの症状が現れることや足の血管が動脈硬化を引き起こすことで血流が悪くなり、歩行時の痛みが現れることもありますが、発症初期にはほぼ症状はないと言っていいでしょう。

しかし、脂質異常症を発症すると徐々に血管内膜が傷つけられて動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中などの発症リスクが高くなります。このため、何の症状もないまま心筋梗塞や脳卒中などで突然死することもありますので、脂質異常症を指摘されたことのある人は必ず病院で適切な検査・治療を続けるようにしましょう。

脂質異常症になると、どんなリスクがある?

動脈の壁は、内側から内膜、中膜、外膜の3層によってなりたち、内膜は内皮細胞におおわれています。血液の中で過剰になったLDLコレステロールは、血管の内皮細胞を傷つけると共に、酸化LDLに変化します。それを処理するために白血球の一種である単球も内膜へと入り込み、マクロファージに変わります。

マクロファージは酸化LDLを取り込んで、やがて死んでいき、LDLに含まれていたコレステロールや脂肪が、柔らかい沈着物となってたまっていき、内膜はどんどん厚くなります。このようにして血管にプラーク(粥腫)ができていく状態を粥状(アテローム)動脈硬化といいます。

プラークができると、血管が狭くなって弾力性や柔軟性が損なわれます。動脈硬化が進行し血管の内側を血栓がふさぐと、血流が滞り、心筋が壊死して心筋梗塞が生じます。血栓の一部が血流に乗って脳などに運ばれ、細い動脈を塞ぐことで脳梗塞を起こすおそれもあります。

合併症

脂質異常症を発症すると、全身の血管に動脈硬化を引き起こして様々な合併症が生じる危険があります。
最も恐ろしい合併症としては、心筋梗塞や脳卒中が挙げられます。心臓や脳の血管が動脈硬化を生じることで血管が閉塞したり破裂する危険が高くなるのです。心筋梗塞や脳卒中は突然死することもあるため、しっかりと脂質異常症を改善する必要があります。

その他にも、足の血管が動脈硬化を生じることで発症する閉塞性動脈硬化症や脂肪肝などの合併症を生じることもあります。

脂質異常症の基準は?

脂質異常症の診断基準値は、日本動脈硬化学会によれば、次のとおりとなっています。空腹時の採血結果が下記の基準値のいずれかにあてはまると、脂質異常症と診断されます。

  • 高LDLコレステロール血症が140mg/dL以上
  • 高トリグリセライド(中性脂肪)血症が150mg/dL以上
  • 低HDLコレステロール血症が40mg/dL未満

脂質異常症の原因

脂質異常症とは、血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)やトリグリセライド(中性脂肪)が多すぎたり、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が少ない状態が続く病気です。

脂質異常症の発症には、生活習慣の乱れ(過食、運動不足、肥満、喫煙、アルコールの過剰摂取、ストレスなど)が関係しているといわれます。

また、遺伝性の脂質異常症も知られています。特に、脂質異常症の一種である家族性高コレステロール血症は、日本人では500人に1人の割合でみられるとされます。このタイプは、遺伝性ではないタイプに比べてLDLコレステロール値が著しく高く、動脈硬化が進行しやすいことが知られています。

甲状腺機能低下症や副腎皮質ホルモン分泌異常といったホルモンの分泌異常、糖尿病や腎臓病などの他の疾患、ステロイドホルモンや避妊薬なども影響するとされます。

脂質異常症(高脂血症)の治療法

脂質異常症の治療は通常、医師との相談をもとにした食事療法と運動療法から始まります。

食事療法については、摂取が望ましい食品や食材の選定、過食の抑止などが重要です。
運動療法では、ウォーキングや水泳などのような、酸素を取り込みながらゆっくり少しずつ力を出す有酸素運動がHDLコレステロールの調整に役立ちます。

薬物療法は、食事療法と運動療法を行っても脂質管理の目標値が達成できない場合、もしくは持っている危険因子が多く、動脈硬化や動脈硬化による疾患を起こすリスクが高い場合に開始することが多いとされます。

おわりに:脳梗塞や心筋梗塞に発展させないためにも、生活習慣を見直そう

脂質異常症は、自覚症状が乏しいまま、静かに進行して、突然脳梗塞や心筋梗塞を発症するおそれのある病気です。しかし基本的には食事療法と運動療法によって、改善や予防が可能とされます。健康診断などで脂質異常症を指摘された場合は、医師と相談しつつ生活習慣の見直しを始めましょう。

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