脂質異常症(高脂血症)の原因と分類方法について

2018/1/22 記事改定日: 2018/10/24
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

脂質異常症(高脂血症)は、血液内に含まれる脂質の量が過剰な状態が続く病気です。長期化すると動脈硬化を引き起こすおそれがあり、脳梗塞のような重篤な病気の発症の原因にもなりかねません。この記事では、脂質異常症の原因や分類、診断基準について詳しく解説していきます。

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脂質異常症(高脂血症)の原因とは!?

脂質異常症は、脂質の代謝過程に先天的な異常が原因となる家族性脂質異常症などもありますが、多くは不適切な生活習慣が原因で引き起こされます。高カロリーで高脂肪・高糖分な食生活やアルコールの多飲、運動不足、喫煙などが主な原因です。

特に動脈硬化を引き起こしやすい高LDLコレステロール血症は、脂質やコレステロールを多く含む食事を続けることで発症しやすくなることがわかっています。
また、脂質異常症は年齢を重ねるごとに発症率が上昇します。女性では閉経を契機に女性ホルモンであるエストロゲンが減少することによって発症しやすくなり、男性では40歳後半から発症率が大きく上昇します。

脂質異常症の原因による分類

脂質異常症を発症する原因は大きく分けてふたつあります。

原発性脂質異常症

生活習慣の乱れや遺伝的な要因が原因となって起こるものを原発性脂質異常症といいます。これは過食や運動不足、肥満、喫煙、アルコールの取り過ぎ、精神的なストレスなどが大きく関わっています。特に内臓に脂肪がつく内臓脂肪型の肥満の人では脂質異常症を発症しやすいと考えられています。
遺伝的な要因で発症するタイプの人は、特にLDLコレステロールが高くなる傾向があり、動脈硬化を進行しやすいといわれています。

続発性脂質異常症

甲状腺や副腎の病気などでホルモンの分泌異常が起こっているときや、糖尿病や腎臓病によるもの、薬の影響で発症するものを続発性脂質異常症といいます。原因となる病気を治療したり、原因となる薬を変更することで改善を目指します。ただし、薬を自己判断で中止すると治療中の病気が悪化する可能性があるので、必ず医師に相談したうえで行いましょう。

脂質異常症の検査内容と診断基準

脂質異常症は血液中の脂質の量が正常の範囲内からはみ出し、体にとって良くない影響がある状態まで脂質の量が増えている病気です。脂質には中性脂肪(トリグリセライド)と悪玉コレステロールといわれているLDLコレステロール、善玉コレステロールといわれているHDLコレステロールの3種類があります。

脂質異常症は特に痛みなどの症状がないために血液検査でしか発見できません。特に症状がないからといって、脂質異常症を放置していると動脈硬化が進み色々な臓器への悪い影響が出てきます。近年は欧米化した食生活や夜型の生活習慣の影響で脂質異常症を起こす人が増えているといわれています。

脂質異常症(高脂血症)の診断基準は、中性脂肪とLDLコレステロールは基準値よりも低いほうがよく、LDLコレステロールは基準値よりも高いほうがよいとされています。LDLコレステロールが140mg/dL以上になると「高LDLコレステロール血症」、LDLコレステロールが120~139mg/dLのときには「境界域高LDLコレステロール血症」と呼ばれます。

そしてHDLコレステロールが40mg/dL未満のときには「低HDLコレステロール血症」、中性脂肪が150mg/dL以上の時に「高トリグリセライド血症」と診断されます。

これら検査は空腹時に採血をした血液で調べます。

コレステロール値による脂質異常症の分類

脂質異常症の中で一番患者数が多いといわれているのが高LDLコレステロール血症です。LDLコレステロールは動脈硬化を起こす大きな要因のひとつであり、数値が高くなればなるほど他の病気を引き起こす可能性が高くなります。

低HDLコレステロール血症は、体の中の余分なコレステロールを回収する善玉コレステロールが少ないことでコレステロールの値が高くなってしまう状態です。

高トリグリセライド血症は中年男性に多く見られます。中性脂肪が高いとHDHコレステロールも高くなるということがわかっています。

上記3種類の他に、もう1種類の脂質異常症があります。それが家族性高コレステロール血症です。これは遺伝子の異常で起こる異常であり、若いときでもLDLコレステロール値が高くなってしまいます。

おわりに:脂質異常症は、原因によって様々な種類に分けられる。専門医の指示に従い原因にあわせて改善していこう

脂質異常症は、原因ごとで様々な種類に分けられます。ただしどの脂質異常症も、それ自体に初期症状はないので、不安な人や中年以降の人は定期的に検査して状態を把握しておくことをおすすめします。
治療は生活習慣の改善が主体になりますが、続発性脂質異常症のように他の病気が原因になっている場合もあるので、必ず医師に相談しながら適切な方法で改善を目指しましょう。

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