記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/9 記事改定日: 2018/10/25
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
糖尿病、高血圧と並ぶ生活習慣病の一種「脂質異常症(高脂血症)」。この脂質異常症とは、具体的にどんなリスクを伴う状態なのでしょうか?合併症には、どんな病気あるのでしょうか。
関連する病気を詳しくご紹介していきます。
脂質異常症(高脂血症)は血液中の脂質が異常に多くなったり、少なくなったりする状態です。しかし、脂質の量に変化があってもよほどのことがない限り自覚症状はでません。そのため、血液中の脂質の量が正常がどうかを知るためには血液検査を行う必要があります。
脂質異常症と診断されるのは、悪玉コレステロールと呼ばれているLDLコレステロール値が140mg/dL以上、HDLコレステロール値が40mg/dl未満、中性脂肪値が150mg/dl以上になる時です。
脂質異常症になりやすい人の特徴は過食、運動不足、肥満などです。また喫煙をしている人はLDLコレステロールをさらに酸化させて、動脈硬化を進行させるため注意が必要です。
脂質異常症と糖尿病、高血圧はどれも動脈硬化のリスク因子です。しかも、これらのリスク因子は、単独よりも数が多くなるほどより動脈硬化を引き起こしやすくなることが分かっています。
このため、脂質異常症・糖尿病・高血圧を同時に発症している状態は動脈硬化を引き起こすリスクが極めて高い状態であると言えます。動脈硬化を引き起こしたとしても特に症状はありませんが、徐々に進行して心臓や脳の動脈の弾力性や強度が失われると心筋梗塞や脳卒中など命に関わる恐ろしい合併症を引き起こしやすくなります。
脂質異常症になると、全身の血中の脂質の量が異常になるため、様々な病気を引き起こします。
まず、血液中のLDLコレステロールが多くなると、血管の壁に付着する脂質の量が増えて動脈硬化を促進します。その結果血管の中の血液の通り道が狭くなり、血管が詰まりやすくなってしまいます。
血管が詰まった場所によって病気の種類は異なりますが、心臓の血管が詰まった時には心筋梗塞を起こします。詰まった血管が脳への栄養を送る血管だった場合には、脳梗塞を起こします。それぞれ詰まった場所から先には血流が途絶えてしまうため、その部位の細胞は機能しなくなってしまいます。
脂質異常症が引き起こす病気は他にもあり、閉塞性動脈硬化症もそのひとつです。これは手足の動脈が動脈硬化を起こし、血液の通り道が狭くなることで様々な障害が起こる病気です。血液が完全に通れなくなる前には、通れる血液の量が少なくなる時期があります。その時には血液は通っているのでなんとか手足の機能は保たれていますが、血流が悪いことでしびれなどの症状がでることがあります。
また、血流が悪くなっている部位は冷えて青白くなることがあります。歩いているうちにふくらはぎが痛くなり休まないと歩けないという症状もでます。完全に血流がなくなるとその部位の組織は壊死を起こすこともあります。
膵臓は、消化機能のひとつである脂肪を分解し、酵素を出すという働きがあります。しかし、脂質異常症になると、血中の脂質の量が増えているためにたくさんの脂質を分解しようとして、膵臓から脂質を分解する酵素が多く出るようになります。この酵素が必要以上に出ることで、血液中の脂質だけでなく膵臓自身も消化してしまうことがあります。そういった状態になることで急性膵炎を引き起こします。
急性膵炎になると軽症のうちは治療できますが、重症化した時には命の危険性が出てくることもあり、危険な病気です。
元々肝臓では脂肪をため込んでエネルギーの貯蔵を行っています。つまり、蓄える脂肪の量が多いと肝細胞に脂肪がどんどん貯まっていくことがあります。脂肪の量が増えていき全肝細胞の中の30%以上を脂肪が占めるようになった状態を脂肪肝といいます。
肝臓は状態が悪くなっても症状が出ないことで知られますが、脂肪肝の時も同様に自覚症状としてはなにもあらわれません。脂肪肝になっても何も改善策をとらずにいると、どんどん肝臓の機能が低下してしまいます。そうなる前に脂質異常症を改善することが重要です。
脂質異常症の合併症リスクを下げるには、やはり脂質異常症を改善するほかありません。
脂質異常症は体内の中性脂肪やコレステロールを下げる効果のある薬物療法を行うこともありますが、まずは食生活や運動習慣などの生活習慣改善を心がけるようにしましょう。
食事は適正カロリーをしっかり守り、高脂質・高糖分のメニューは避け、食物繊維の豊富な和食中心の生活がお勧めです。また、運動はウォーキングや水泳、サイクリングなどの有酸素運動を定期的に取り入れるようにしましょう。
血中の脂質の量が多いために動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞につながったりする恐れのある脂質異常症。診断を受けたら、一日も早い治療と生活習慣の改善が求められます。
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