糖尿病で透析が必要になったら、食事はどうすればいい?

2018/2/23 記事改定日: 2018/3/9
記事改定回数:2回

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

糖尿病腎症は糖尿病の合併症のひとつで、最後まで進行してしまうと腎不全を引き起こし透析療法が必要になります。では、もしも透析治療が必要になったら、食事面ではどのようなことに気をつければ良いのでしょうか? 

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

糖尿病で透析治療が必要になる理由、糖尿病腎症とは?

糖尿病腎症は糖尿病にかかっている人が起こす合併症の一つで、腎臓の機能が正常に働かなくなる病気です。糖尿病腎症を発症するかどうかは、糖尿病がどの程度コントロールできているかに関係しています。

糖尿病腎症の進行を抑えるためには厳格な血糖コントロールが必要で、運動療法や食事療法、必要に応じてインスリン療法などによる治療が進められます。
しかし、血糖コントロールがうまくいかない状態が続くと糖尿病腎症はどんどん悪化し、最終的には腎不全になります。腎不全になってしまうと通常は腎機能の回復は見込めないため、透析療法が必要になります。

透析治療中にはどんな食事をしたらいいの?

透析治療が始まったら、以下の5つの点に注意してください。

  1. 水分を制限する
  2. 塩分を控える
  3. カリウムの摂取量を制限する
  4. リンの摂取量を制限する
  5. 適切なカロリーと良質なタンパク質をとる

以下の項目で、それぞれの内容について詳しくご紹介します。

〈1〉水分をとり過ぎないように注意

腎不全になると尿が出なくなり、体の中に水分がたまりやすくなります。それによって、むくみ・体重増加・呼吸困難・血圧上昇などの症状が現れ、高血圧・心不全・肺水腫などを引き起こす可能性があるため、水分の量を調節する必要があるのです。

食事中の水分に関する注意

  • 水分の多い料理(鍋物、汁物、麺など)を控えめにする
  • 調理方法を工夫する(焼き物、揚げ物、炒め物をとり入れる)
  • 主食も一食はパンかおもちにする食事中の水分1日1000cc程度

飲み水に関しての工夫

(※飲みものはお茶、氷、ジュース、コーヒー、酒類などの他、うがいも含む)

  • 喉が渇いたら氷をなめる
  • お茶を熱くして少量を飲むようにする
  • 湯飲み茶わん、コップを小さくして飲み水は1日500~600ccまでに制限する

乾物や調味料の水分も忘れずにカウントする

わかめ、ひじき、麺類などの乾物は水でもどして使用しますが、膨らんだ分は水分です。
また、醤油、酒、みりん、酢、ソース、ケチャップなどの調味料やこんにゃく、ところてん、寒天、ゼリーなども水分とみなされるので、とりすぎないよう注意が必要です。

〈2〉塩分を控える

塩分をとりすぎるとのどが渇いて水を飲んでしまう原因になります。塩分の制限は水分の制限につながるので、調味料や食品の塩分量を覚えて無理のない減塩食を心がけましょう(※指示される1日の塩分量は患者さんによって異なるので、医師に確認しましょう)。
減塩のポイントは以下の通りです。

しょうゆや塩などの調味料を控える工夫をする

  • ネギやしそ、生姜、にんにくなどの香味野菜、ごまや山椒、カレー粉、唐辛子などの香辛料、レモンやゆず、すだちなどの香りや酸味を利用する
  • 醤油やソースは直接かけるのではなく、小皿に入れて少量をつけながら食べる
  • 竹輪、かまぼこ、ハム、ソーセージ、干物などの練り製品や加工食品は避ける
  • 塩分を含む調味料は、計量スプーンの大さじ・小さじを使って量る習慣をつける

〈3〉カリウムの摂取量を抑える

カリウムは多くの食べ物に含まれていますが、腎臓が悪くなると余分なカリウムを尿中に捨てることができなくなるため、「高カリウム血症」となって不整脈や心臓を止めてしまう危険性があります。そのため、食事の中でのカリウムをできるだけ減らす以下のような工夫が必要です。

野菜は1日200gを目安に
カリウムは水に溶ける性質があるため、野菜は水にさらすかゆでてから調理するようにしましょう。それでもカリウムを全て除去できるわけではないので、野菜は1日200gまでにしてください。
果物や芋類は1日50gを目安に
果物や芋類、中でもカリウムが多いバナナ、メロン、キウイはできるだけ食べないようにしましょう。
缶詰のシロップは飲まない
シロップ中にカリウムが溶け出しているので、調理に使ったり飲んだりしないでください。

〈4〉リンの摂取量を制限する

血液中のリン値が上がると関節や血管の石灰化や、心筋梗塞、脳梗塞、二次性副甲状腺機能亢進症などの病気を起こすことがあります。

インスタント食品を控える
リンは特にインスタント食品に利用される食品添加物の中に多く含まれているので、インスタント食品は避けるようにしてください。
低リン食品を利用する
低リンの牛乳、しょうゆ、タンパク調整食品など、一般市販品に比べてリン含量が3分の1~5分の1以下となるように調整されている食品があるので、それらを活用してみましょう。

〈5〉適切なカロリーと良質なタンパク質をとる

透析患者さんは貧血になりやすい傾向があるので、貧血を防ぐためにも必要な栄養素を充分にとって血が薄くなるのを防ぐ必要があります。適切なカロリーとタンパク質を摂り、献立や調理方法を工夫してエネルギーが不足しないようにしましょう。また、自分の1日の必要食品量を覚えておくようにしましょう

1日3食規則正しく食べる
朝食を抜く・夜食を食べるなどの習慣はやめましょう。
必要な栄養素をバランス良く食べる
好きなものばかりではなく、必要な栄養素が含まれる食べ物をバランス良く食べることが大切です。
食事は主食だけにせず、たんぱく質と野菜を必ず組み合わせるようにしてください。
(※食品は医師の指示に従って、決められた範囲内で摂取するようにしましょう)

おわりに:透析治療中には食事制限が必要

透析治療をしている間にはさまざまな食事制限が必要になります。
特にカリウムのとりすぎは命に関わるため、医師の指示に従いながら摂取量をきちんと管理しましょう。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

糖尿病合併症(13) 人工透析(13) 糖尿病腎症(6) 血液透析(8) 腹膜透析(5) 微量アルブミン尿(1)