記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/12 記事改定日: 2018/10/10
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
誤嚥性肺炎とは、本来気管に入るはずがない唾液や食べ物が気管に入ってしまうことで発症する病気です。誤嚥性肺炎の予防には口腔ケアが大切とされています。この記事では、口腔ケアが大切な理由や正しいケア方法とともに、症状や治療法を解説します。
誤嚥性肺炎とは、本来は食道に入っていくはずの食べ物や唾液が間違って気管に入ることで、口の中の細菌や食物についている細菌が気管や気管支、肺に入ってしまい炎症を起こす病気です。一度胃の中に入った食物が逆流して食道に戻り、それが気管に入ることで発症することもあります。これは、胃の内容物には食物のほかにも胃酸などの消化液が含まれているため、気管が傷つき炎症を起こすからです。
また、高齢者になると咳反射が低下し、気管に異物が入ってもむせることが少なくなります。そのため、気付かないうちに気管に食物や唾液が入って発症することもあります。
そのほか、全身の栄養状態が悪かったり、免疫機能が低下している場合も発症しやすくなります。脳梗塞の後遺症があったり、パーキンソン病を持っていたりする人、寝たきりの人もなりやすいといわれています。
誤嚥性肺炎の予防に特に効果的なのが口腔ケアです。口の中を清潔にすることは、誤嚥性肺炎の予防に非常に効果的です。歯磨きやうがいなどを自分でできないときは、口の中をスポンジやガーゼで拭ってあげましょう。
また、唾液には自浄作用(口の中をきれいに洗い流す働き)があります。唾液が少なくなると、自浄作用が低下して口の中の細菌が増えてしまうため、誤嚥性肺炎の発症リスクを高めます。特に、飲み込む力が弱くなっている人の口の中は、唾液の分泌が少ないため乾燥しています。
唾液をしっかりと分泌させるには、食事のときにしっかりと噛んでゆっくり食べることも大切です。唾液は食べ物を噛んでいるときに分泌されるため、噛まずに飲み込んでばかりいると唾液が十分に分泌されません。こうしたことに気を付けることも、誤嚥性肺炎の予防につながります。
以下に、口腔内のチェック項目を紹介します。
歯垢は口腔ケアだけで取り除くことはできません。半年に一度を目安に、歯科医院で歯のクリーニングをおすすめします。
口腔ケアには以下の道具が必要です。
まず、歯がある人の場合、奥歯から前歯に向かって歯の裏側まで丁寧に磨きます。うがいできない場合は、磨いた後にしっかりと柔らかいガーゼで洗浄液をふき取りましょう。
ブラッシングが完了したら、歯茎や口腔粘膜、舌のケアを行います。スポンジブラシに洗浄液を染み込ませ、歯茎と口の間の溝や上あご・下あごの粘膜を優しく撫でるように汚れを落としてきます。舌は引き伸ばした状態で奥から手前にスポンジブラシでブラッシングしましょう。最後に、柔らかいガーゼで汚れをふき取るように拭ったら完了です。
歯がない人は、歯茎や口腔粘膜、舌のケアから行ってください。
口腔ケア中は、洗浄液や唾液などを誤嚥しやすくなりますので、座位の姿勢で行うのが望ましいです。座位が不可能な場合には、顔を横に向けてケアを行うなど誤嚥のリスクを最小限に抑えるようにしましょう。
誤嚥性肺炎の治療では、肺炎の原因となっている細菌などの原因微生物に対して有効な抗生物質を投与します。肺炎で呼吸がままならないときは酸素吸入が行わたり、人工呼吸器が使われることもあります。
痰をきちんと出さないと誤嚥性肺炎を悪化させるので、痰が出しやすくなるように援助したり、吸引を行ったりします。そのほか、むせにくい食事を用意したり、一時的に点滴や胃ろうで栄養補給することもあります。
誤嚥性肺炎は、唾液や食べ物が何らかの原因で誤って気管に入って発症します。予防するためには、口腔内の細菌を減らすことが大切です。歯みがきやうがいなどをできるだけ丁寧に行いましょう。また、寝たきりの人など、自分で歯みがきできない人に対しては、家族など身の回りのお世話をする人がサポートしてあげてください。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。
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