橋本病の症状にうつや記憶障害がある!?検査で調べる数値とは?

2017/12/11 記事改定日: 2018/4/10
記事改定回数:1回

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

20~40代の女性の発症率が高い甲状腺の病気に、「慢性甲状腺炎(橋本病)」というものがあります。では、慢性甲状腺炎(橋本病)とはいったいどんな病気なのでしょうか。ここでは症状と診断方法をお伝えしていきます。

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慢性甲状腺炎(橋本病)の症状にはどんなものがある?

慢性甲状腺炎(橋本病)は、さまざまな全身症状を引き起こしますが、40歳以降の女性が発症しやすいことから更年期障害と勘違いしてしまう人も少なくありません。

具体的には、むくみや便秘、慢性的な倦怠感や冷え性の悪化などが起こり、集中力が気力低下することから気分も落ち込みやすくなります。更年期障害によって起こりやすくなる自律神経による不調と似ていることから、婦人科で女性ホルモンを補充する治療を行っても改善せず、さらに検査をして慢性甲状腺炎による甲状腺機能の低下とわかることもあります。

ほかには、甲状腺の炎症によってのどぼとけの下方が腫れ、のどに違和感をおぼえることもあり、その症状から検査を受けて判明することもあります。

 うつや記憶障害

橋本病の典型的な症状の一つに、活動性の低下が挙げられます。
橋本病で減少する甲状腺ホルモンは、細胞の新陳代謝を担っています。ですから、甲状腺ホルモンが減少すると、疲れが溜まりやすくなったり、常に倦怠感を感じるようになります。また、脳内のセロトニンという物質が少なくなるため、抑うつな気分が引き起こされることも分かっています。精神的な活発性が失われることで、記憶障害や眠気などが生じることもあり、橋本病は身体的な症状だけでなく、情緒や精神への影響も非常に大きい病気なのです。

橋本病になると検査の数値がどう変化するの?

橋本病の診断には、血液検査で甲状腺に関連したホルモンの数値と抗体を調べる検査が必要になります。
ホルモン検査では、FT4(甲状腺ホルモン)とTSH(甲状腺刺激ホルモン)が調べられます。これらの値は橋本病の進行の程度によって異なります。

まず、甲状腺の腫れだけで何も症状がない場合には、どちらの値も正常値であることが多いです。一方、軽度な甲状腺機能低下がみられる場合は、FT4値は正常でTSH値が高値になります。これは、本来は甲状腺ホルモンが少ない状態であるものの、甲状腺刺激ホルモンが多く分泌されて、代償されている状態です。また、著しい症状が現れているときは、TSHだけではFT4の産生量を代償できす、今度はFT4が低値でTSHが高値になります。
また、抗体検査は甲状腺に対する自己抗体があるかどうかを調べるために行われ、抗甲状腺マイクロゾーム(TPO)抗体、抗サイログロブリン抗体が陽性となります。

橋本病の治療で薬は必要?

橋本病は、甲状腺が腫れているだけの初期の段階では治療は必要なく、多くは経過観察が行われます。しかし、甲状腺ホルモンの分泌が低下して種々の症状が出るようになると、薬でホルモンを補充しなければならなくなります。

薬は甲状腺ホルモン製剤であり、服用すると橋本病が根本から治るわけではありません。また、調節が難しく、過度な量を服用し続けると、甲状腺機能亢進症を発症することもあるので注意が必要です。
急激に甲状腺機能が低下する急性増悪期には炎症を抑えるためにステロイドが使用されることもあります。

血圧管理

橋本病の患者さんは、心臓の動きが悪くなり、脈拍数が少なく、血圧が低下します。血圧は高いよりも低い方がよいと考える人も多いですが、慢性的な低血圧は心臓に負担をかけて心不全などの原因になります。また、疲労感や倦怠感が生じ、めまいや立ちくらみが起こって転倒する危険もあります。
橋本病が原因で低血圧になっている人は、しっかりとホルモン製剤で治療を行い、正常な血圧の維持を目指しましょう。

慢性甲状腺炎(橋本病)は何が原因で発症するの?

橋本病とも呼ばれる慢性甲状腺炎は、甲状腺機能低下症の代表的な症状でもあります。発症原因は明らかにされていませんが、何らかの原因によって異常をきたした免疫機能が甲状腺を異物とみなし、甲状腺に対する自己抗体をつくり出して甲状腺だけを破壊、ホルモンの分泌を低下させることで、代謝機能の低下によるさまざまな症状を引き起こします。

慢性甲状腺炎は男性よりも女性のほうが患者数が多く、20代後半から30代、40代にかけて発症し、特に40歳以降に増えるとされています。

子供への遺伝

橋本病は自己免疫が関わる病気のため、なりやすさは体質によると考えられています。このため、橋本病は遺伝しやすいと考えられることもありますが、橋本病患者の子供が必ずしも橋本病になるわけではありません。橋本病はなりやすさの体質やストレスなどの環境因子が複雑に絡み合って発症するとされています。
しかし、近い親族に橋本病がいる人で、気になる症状がある人は病院での検査をおすすめします。

どうやって慢性甲状腺炎(橋本病)と診断するの?

病慢性甲状腺炎は、びまん性甲状腺腫と呼ばれる甲状腺全体の腫れがあることや、血液検査によって甲状腺に対する自己抗体が陽性であることを確認して診断します。甲状腺ホルモン値も測定し、甲状腺機能低下による症状の治療が必要かどうかも確認します。

ほかに、超音波検査によって甲状腺の腫れを画像で診断、腫瘍の有無なども調べます。悪性の腫瘍が疑われる場合など、甲状腺に針を刺して細胞を採取して炎症の具合を顕微鏡で確認するといった診断方法が実施されるケースもあります。

それぞれの診断結果によって、甲状腺機能低下に伴う全身症状にはホルモン補充療法、甲状腺の腫れが大きい場合には抗炎症剤の投与、あるいは切除手術などが実施されます。

おわりに:見過ごされがちな慢性甲状腺炎。むくみやのどの腫れなどの異変に注意

慢性甲状腺炎(橋本病)は、発症年齢やその症状から更年期障害と勘違いされることが多く、発見が遅れがちな病気です。特に女性の方は、むくみやのどの腫れなど気になる症状がみられたら、病院で検査を受けることをおすすめします。

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