記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/14 記事改定日: 2018/12/12
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記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
高安動脈炎(高安病)とは、大動脈や大動脈から枝分かれしている血管に炎症が起こることで様々な症状を呈する病気です。
この記事では、この病気の原因や症状、治療法について解説しています。
しい病気ではありますが、風邪と間違えてしまい治療が遅れるケースもあるので、病気の特徴をきちんと把握しておきましょう。
高安病は現在では高安動脈炎とよばれています。
高安動脈炎は、大動脈やそこから分岐する大きな血管に慢性的な炎症が生じることで身体の各部位にさまざまな症状が起こる病気です。脈が触れなくなる症状も出ることから脈なし病と呼ばれることもあります。
発症原因がわからず、発症例が少ないまれな病気です。ただ、初期症状の出方が発熱や全身の倦怠感、食欲不振といった風邪でも起こりがちな症状であることや、その後に出て来る症状も炎症が起きた部位によって異なることもあり、高安動脈炎と早期に疑って検査を受ける機会が少ないため、報告されている数よりも実際の患者数は多い可能性があることが指摘されています。
発症者のほとんどが若い女性ですが、近年は男性の発症者数も増えているといわれています。
巨細胞性動脈炎とは、側頭動脈などの比較的太い動脈に肉芽腫を形成しながら炎症を引き起こす病気です。
高安動脈炎と巨細胞性動脈炎は共に大動脈炎に分類されており、病変部位や症状に大きな違いが見られないことから、両者は極めて類似した病気と考えられています。
しかし、高安動脈炎は若年発症が多いのに対し、巨細胞性動脈炎は50歳以上の中高年者に発症しやすいという違いがあります。また、巨細胞性動脈炎は患者の3分の2が側頭部など頭部の動脈に病変が見られる一方、高安動脈炎は頭部症状は比較的少ないとされています。
上記でも簡単に説明していますが、炎症が起きた血管がどこにあるかによって高安動脈炎の症状の出方は異なります。
初期は発熱や全身の倦怠感、体重減少などが現れ、その後血管の炎症が進むと、血管の狭搾や閉塞もしくは拡張を起こすことでさまざまな症状があらわれます。
腕へと流れる血管の障害によって血圧の左右差が起こるケースが非常に多く、患者の半数近くにみられるといわれています。
また、腕が疲れやすくなって手首の脈が触れにくくなったり、頭部に流れる血管が障害を受けた場合にはめまいや失神、頭痛や視力障害が起こり重篤な場合には失明したり、脳梗塞を起こすこともあります。
そして、高安動脈炎に罹った人の約3分の1が心臓の大動脈弁の近くに障害が発生するといわれていて、弁膜症に発展し狭心症となるケースもあります。
腎臓の血管に障害が起きると腎機能が低下し、足への血管が障害が出た場合には歩行困難になることもあります。
高安動脈炎の発症原因は未だ判明していません。
しかし、炎症を起こした血管の組織の中にマクロファージやT細胞と呼ばれる免疫機能にかかわる細胞が見られることや、炎症を抑える治療の過程でステロイド剤や免疫抑制薬などによる免疫抑制療法が効果をあげることが多いことから、免疫異常が発症原因にかかわるのではないかと見られています。
遺伝する可能性はほとんどない病気とされていますが、特定のヒト白血球型抗原HLAとの関連や疾患感受性遺伝子SNPも見つかっていることから、発症する過程で体質的な因子が関係しているとも考えられています。
高安動脈炎の治療には血管の炎症を抑えるためにプレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイドが使用されます。効果が出やすく、2週間から4週間ほど様子をみて炎症が治まってから徐々に薬の量を減らして行きますが、その過程で約7割の人に再び炎症が起きるといわれています。炎症がステロイド剤で抑えきれない場合には免疫抑制薬の併用が検討されます。
血栓性合併症を生じやすくなっていることから、血管の流れを改善させる血管拡張薬や血栓を生じにくくするための抗凝固薬や抗血小板薬、血圧を下げる降圧薬なども症状によって処方されます。内科的治療では血管の障害を治し切れない場合、血行再建術やバイパス術などの外科的な治療が行われることもあります。
高安動脈炎の人が妊娠を計画するときには、適切な治療によって炎症症状をしっかり落ち着かせてからトライする必要があります。
治療を続けることで、多くの人は問題なく妊娠・出産することができますが、心臓や腎臓の機能などに問題がある場合は、妊娠の維持が困難な場合もありますので、必ず主治医と相談して方針を決めるようにしましょう。
また、稀に妊娠することで病気が再燃・悪化することもあります。妊娠中は特に体調の変化に注意し、何らかの異変を感じた場合はすぐに病院に行くようにしましょう。
以前に比べると予後は良好であり、副腎皮質ステロイドで症状を抑えることができるようになったとされていますが、およそ7割の人が再発(再燃)するといわれています。そのため、寛解した場合も定期的にチェックし、再燃初期のうちに治療が開始できるように備える必要があります。一度治ったあとも、定期検査は忘れずに受けるようにしてください。
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