脂質異常症(高脂血症)の治療方法と進め方のポイントとは

2018/1/9 記事改定日: 2018/10/24
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

生活習慣病のひとつである「脂質異常症(高脂血症)」。この脂質異常症を治療するには、薬物療法だけでなく、食事療法と運動療法が欠かせません。
この記事では、脂質異常症の治療を進めるうえでのポイントを紹介していきます。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
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脂質異常症(高脂血症)になってしまうのはなぜ?

脂質異常症(高脂血症)とは、血液中に含まれる悪玉コレステロール(LDLコレステロール)や中性脂肪の量が多くなったり、逆に善玉コレステロール(HDLコレステロール)が少なくなってしまうために引き起こされる病気です。

これら善玉・悪玉コレステロール及び中性脂肪の量が変化する原因として、生活習慣と遺伝があります。ただ、大半は食生活や運動不足、喫煙・飲酒といった生活習慣が原因で、遺伝によるものは少ないです。したがって、食事の見直しと運動でコレステロールの量をコントロールすることが、脂質異常症の治療の上では大切です。

脂質異常症と診断される基準値とは?

脂質異常症は、LDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセライドが異常になることで発症します。それぞれの基準値や診断基準を以下にご紹介します。

高LDLコレステロール血症
LDLコレステロール140mg/dL以上
低HDLコレステロール血症
HDLコレステロール40mg/dL未満
高トリグリセライド血症
トリグリセライド150mg/dL以上

また、LDLコレステロールは120~139mg/dLの範囲では脂質異常症と正常との境界型とされ、高血圧や糖尿病など他の疾患がある場合には治療対象となることもあります。

脂質異常症の食事療法

脂質異常症(高脂血症)の治療をしていく上で、極めて重要なのが食事療法です。病気を引き起こすLDLコレステロールや中性脂肪の量を下げるためには、栄養バランスを見直していくことが欠かせません。

すでに脂質異常症と診断されている場合は医師の指示に従うことになりますが、食事療法のポイントとしては、摂取カロリーを適切な範囲に抑えることが大切です。食事では天ぷらやフライなど油であげたものや、バターやマヨネーズを使ったものを食べすぎるのは避けましょう。

次に大事なのが、肉などの動物性脂肪を控えて植物性脂肪を多く摂ることです。植物性脂肪では、オメガ9系脂肪酸と呼ばれる不飽和脂肪酸がLDLコレステロールの量を下げるとされているので、積極的に摂取をしましょう。

それから食物繊維も、コレステロールの吸収を防ぐ効果があるといわれているので積極的に摂取しましょう。

脂質異常症の運動療法

運動は体を活性化させ、代謝を良くして血糖値やコレステロール値を正常な数値にする働きがあります。

脂質異常症の治療をするのであれば、ウォーキングや水泳など有酸素運動を少なくとも1日あたり30分以上を目指すと良いでしょう。ただし、あまりにも軽い運動だと効果は乏しいですし、逆に過度な負荷がかかるスポーツは持続することが難しく、体が壊れてしまう恐れがあるので避けましょう。

運動する時間が取れないというのであれば、通勤や仕事の移動などでエレベーターや電車・バスなどの利用をやめて歩いてみれば、無理なく体を動かすことができるのでおすすめです。

脂質異常症の薬物療法

食事療法や運動療法を行っても脂質異常症が改善しない場合、糖尿病や高血圧など他の疾患がある場合には動脈硬化などの合併症を予防するために薬物療法が必要になることもあります。

薬物療法を開始する基準としては、LDLコレステロール180mg/dL以上が目安ですが、薬物療法の導入については個々の患者の状況によって決定されます。

最もよく使用される薬物はスタチン系と呼ばれるタイプのもので、特にLDLコレステロールを下げる効果が強いです。スタチン系は脂質異常症治療の第一選択として使用されますが、中には筋肉痛や肝障害などの副作用が生じることがあります。副作用が強い場合や、スタチン系のみで脂質異常症の改善が見られない場合は、フィブラート系や陰イオン交換樹脂、小腸コレステロールトランスポーター阻害薬など他の薬剤が使用されることがあります。

禁煙やストレス発散も重要!

なお、LDLコレステロールを抑えてくれるHDLコレステロールの減少には、喫煙習慣が関わっているとされています。禁煙は始めの頃は辛いかもしれませんが、喫煙は肺がんや動脈硬化など命に関わる病気の要因となる悪習です。健康のことを考えるのであれば禁煙を試みましょう。

それから、ストレスの溜めすぎもよくありません。慢性的なストレスは血圧や血糖値を上昇させる作用があるのですが、するとストレスに対応するために副腎皮質ホルモンが必要になり、副腎皮質ホルモンをつくるためにLDLコレステロールが増えるようになってしまうのです。

スポーツや音楽鑑賞・エステなど、自分の好きなことでストレス発散をしましょう。ただ、食べることが好きだという人は暴飲暴食をしてしまうことがありますが、それは脂質異常症につながるので別の発散方法を探すようにしましょう。

おわりに:必要に応じて薬を使いながら、食事と運動に気をつけて生活を改善しよう

脂質異常症は動脈硬化を招き、心筋梗塞につながるリスクの高い状態です。ご紹介したことを日常生活の中で意識的に取り入れ、健康的な生活習慣に一歩ずつ近づけていきましょう。
もし医師から薬を飲むように指示された場合は、必ず用法用量を守り、自己判断で薬を中止したり薬の量を増やしたりしないでください。

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