記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
構音障害とは、言葉を聞き取り理解する能力はあっても、何らかの原因で相手が理解しやすい声として発することができない障害です。相手のペースを無視した速さで話しかけることが良くないことはもちろんですが、相手の言葉を先回りするようなコミュニケーションの取り方をすることも相手のプライドを傷つけてしまう可能性があります。この記事では、構音障害の人に対するコミュニケーションの取り方のコツを紹介していきます。
構音障害は、言語障害の一種です。言葉は理解し、正しい単語と文法を選んで、文を組み立てる能力はあるものの、声を出すことが難しかったり、対話の相手にとって聞き取りが難しい発音になってしまい、他人とのコミュニケーションに支障が生じる症状です。
脳の中の、しゃべるための運動機能をつかさどる部分に障害が発生していることなどが原因で起こる運動性構音障害、生まれつきや事故などの影響で、口や舌、唇、口蓋などに問題が起こることが原因の器質性構音障害、聴覚障害が原因で起こる聴覚性構音障害など、原因別に分類できます。
構語障害の方は、口頭でのコミュニケーションがうまくいかないだけであって、他の人が発する言葉は理解できますし、喜怒哀楽の感情も保たれています。ですから、正しく発音できず、満足に会話できない自分に悔しさや歯がゆさを感じている人も多いことが想像できます。そのような歯がゆさが劣等感や極度のストレスにつながり、積み重なっていくと、うつ病や認知症などの精神疾患を併発するおそれがあるのです。
そのため、構語障害の状態にある相手方に対してコミュニケーションを取ろうとする人が、うまく話せないことを責め立てたり、何度も聞き返したり、焦らせたりするのでは、その方の心を深く傷つけてしまい、ますます他者との接触を避けるようになりかねません。
また、構音障害の方が言いたいことを先回りして話したり、過剰に励ましたりすることも、かえって自尊心を傷つける可能性があるので注意しましょう。
構音障害の人の会話に対する苦手意識は、言葉を口に出せないことが起因していることが大半といえるでしょう。
話しかけるときは、自分のしたい話を一方的にまくしたてるのでなく、相手のペースにあわせることが大切です。
以下のことに注意してコミュニケーションを取ってみてください。
・話し始める前に、これから話し始めることを伝えてあげる
・相手の返答が短くても済むように、会話の一文が長くならないようにする
・はっきり、ゆっくりと話すようにする
・内容は具体的に。まわりくどい表現は避ける
・相手が興味がありそうな内容から話し始める
・ジェスチャーや筆談など、言葉以外のコミュニケーションも取り入れる
・重要なことはメモ書きを渡すようにする
構音障害は言葉をうまく声に出せないというだけで、話しかけてきた内容は理解しています。会話がうまくできないことに対して抗議をしたり、馬鹿にするような態度をとったり、相手に先回りするようなコミュニケーションの取り方をしてしまうと、自尊心が傷つけられ心を閉ざしてしまうことも少なくありません。構音障害の人とコミュニケーションを取るときは、今回紹介したポイントを意識しながら、相手を尊重して話しかけるようにしましょう。