記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
虚血性大腸炎は、腸内の血管が動脈硬化を起こすことで虚血状態になり、潰瘍や出血などを起こす病気です。軽いものであれば比較的早く回復するといわれていますが、重度のものは手術が必要になるケースもあります。
この記事では虚血性大腸炎の治療のポイントについて解説していきます。
「虚血性大腸炎」は、腸内の血管が動脈硬化を起こして血液が届かなくなり必要な酸素や栄養分が運ばれず、大腸粘膜にむくみや出血、潰瘍(かいよう)などを起こす病気です。
便秘などで圧力がかかることで発症することがあり、発症すると突然の左下腹部の激しい痛みや下血、下痢、冷や汗、おう吐、発熱などが起こります。
症状から推定し、大腸内視鏡検査などにより診断できますが、抗生物質の副作用である薬剤性腸炎や感染性の腸炎、クローン病などとの区別が難しい場合があります。
もともと高齢者に多い病気とされていましたが、近年は便秘がちの女性やストレスなどの多い若い世代の発症例が増えている傾向があります。
虚血性大腸炎は、重症度から「一過性型」「狭窄(きょうさく)型」「壊死(えし)型」に分類されます。
大半は数日で症状がおさまる一過性のものですが、1週間以上続く場合は腸管が狭くなる狭窄型の可能性があります。
基本的には、入院治療で絶食と輸液や抗生物質の投与などによる対症療法が行われ、約半数を占める一過性型は、短期間のうちに回復し後遺症もないといわれています。
重度の狭窄型を発症した場合には手術が必要となるケースもあり、非常にまれといわれる壊死型に関しては、緊急手術が必要になることもあります。
自己判断で放っておくと原因は変わらずに残ることになり、再発や重症化のリスクが高くなります。
虚血性大腸炎は、基本的には良性で再発も少ないとされています。
ただし、約1割に再発がみられ、生活習慣病を抱えている人などはとくに再発率が高いといわれています。
再発したものを放置すると、腸の壊死が始まり「腸間膜動脈閉塞症」または「急性腸間膜動脈閉塞症」を発症する危険があります。
こうなると短時間のうちに細菌や毒素が全身に周り、ショック状態から臓器不全を起こし高い確率で死に至ります。
また、一命を取り留めたとしても、腐ってしまった腸管を大量に切除しなければならず、生涯にわたって点滴や人口肛門が必要となる場合があります。
一度発症させると、再発や進行の可能性がないとは言い切れません。再発や進行を食い止めるためにも、症状が現れたら早めに受診することが大切です。
再発を防止するためには、日頃から動脈硬化や便秘を予防する食事や生活を心がけることが大切です。
生活習慣病を抱えている人や血圧が高い人、肥満傾向にある人は再発率が大幅に上がってしまいます。
糖分や脂肪、塩分を控え、食物繊維の多い食品や十分な水分をとるようにしましょう。
ただし、便秘解消のために強力な下剤や漢方、サプリメントなどを常用していると腸の機能が低下してしまう可能性がああります。
できるかぎり薬に頼らないで、便秘を解消するようにしてください。
薬やサプリメントに頼らずに便秘を解消するには次のような日常生活上の対策を行いましょう。
虚血性大腸炎は、ほとんどの場合良性で再発も少ない病気です。しかし、症状があるにも関わらず放置すれば、腸が腐り始めて全身を侵し、命に関わることにもなってしまいます。気になる症状があるときには、早めに受診するようにしましょう。
また、発症や再発を防ぐためにも、バランスのとれた食事と規則正しい健康的な生活習慣を送るようにしてください。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。