記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
重症筋無力症は、筋肉と神経のつなぎ目に異常が起こることで、脳から筋肉へ信号が伝わらなくなってしまうことが原因で発症します。発症者の1割に合併症がみられるといわれていますが、合併症にはどのようなものがあるのでしょうか。
この記事では、重症筋無力症の症状と合併症について解説しています。
重症筋無力症は、神経筋接合部(末梢神経と筋肉のつなぎめのこと)に異常が生じ、脳からの指令が筋肉にうまく伝わらなくなることで発症する自己免疫疾患です。
末梢神経の末端からはアセチルコリン(ACh)という神経伝達物質が放出され、これを筋肉側が受け取ることで指令が伝達されますが、なんらかの原因でこの受取り口(受容体AChR)を「異物」とみなす免疫作用が働き受容体を攻撃して破壊してしまい、アセチルコリンが受け取れなくなって筋肉を動かすことができなくなります。
重症筋無力症の代表的な症状や特徴として、下記のものが挙げられます。
とくに眼の症状だけの場合を眼筋型、全身の症状があるものを全身型とよび、眼筋型は全体の約1/3を占めるといわれています。
この他にも嚥下困難や構音障害(発声、発音が上手くできないこと)が現れることがあり、重症化すると呼吸筋が麻痺して呼吸困難になり、自分で呼吸ができなくなり人工呼吸器が必要となる状態(クリーゼ)に陥るおそれがあります。
重症筋無力症では次のような合併症が引き起こされます。
これらの合併症を予防し、万が一発症した場合でも早期発見するためには日頃から身体の状態をよくチェックし、いつもと違った症状がある場合にはできるだけ早く担当医に相談するようにしましょう。
重症筋無力症は自己免疫疾患の一種であり、同じ自己免疫疾患が合併症として発現する確率の高い病気です。治療法には共通性がみられ、合併症の治療をすることで重症筋無力症が快方に向かうこともあります。早期治療が重要になってくるので、疑わしい症状が現れたらすみやかに治療を受けましょう。