記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/2/23 記事改定日: 2019/1/8
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
寝たきりなどがきっかけで起こる廃用症候群には、さまざまな症状があります。そのなかでも特に代表的なものとして、関節拘縮が挙げられます。この記事では、関節拘縮を予防するための関節可動域訓練の方法について解説します。
廃用症候群とは、長期にわたる安静状態や寝たきりなどによる心身の機能低下などがもたらす症状です。なかでも、関節拘縮は筋力低下とともに、この病気の典型的な症状といわれています。
関節拘縮とは、関節や筋肉を動かさないことで関節が硬くなり、完全に曲がらなかったり、伸びきらない状態のことをいいます。
関節拘縮になると、手指の関節が拘縮すると物をつかみにくくなるといった問題が起こるため、人の手を借りないと生活に支障が生じるようになります。また、足の関節が拘縮すると、自分の足で立てなくなったり、転倒しやすくなったりします。特に下肢の拘縮はADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)に不自由をきたす要因となります。
さらに、拘縮は褥瘡(じょくそう:床ずれのこと)や肺炎、尿路感染症といった二次的な廃用症候群を引き起こす可能性があることも大きな問題といえます。いったん関節拘縮が起こると治療に時間を要する傾向があるため、予防が重要です。
拘縮を予防するためには、拘縮が起こる前から肩、ひじ、手首、手の指、膝、足首などの関節の曲げ伸ばしを日常的に行い、関節の結合組織の弾力性を保つことが大切です。そこで、拘縮予防策として行われるのが関節可動域訓練(ROM訓練)です。
ほとんどの拘縮は、麻痺や痛みなどで身動きしない(できない)ことが原因で悪化していくものと考えられています。したがって、関節可動域訓練(ROM)で積極的に関節を動かしていくことが重要です。訓練を開始するのは、早ければ早いほどよく、発症当日から、遅くても数日~1週間以内に始める必要があります。
関節可動域訓練は、毎日2回(朝夕)程度を目安とし、日常生活に必要な全関節を対象に行います。本人の状態に応じて、「他動運動」「自動介助運動」「自動運動」の3種類の運動を使い分けます。
指の拘縮を解くコツは、指を伸ばす前に肘と手首の関節を筋肉が縮む方向に曲げることです。縮める方向に曲げることで自然と関節に余裕が生まれ、指を開きやすくなると考えられています。その後、肘と手首を曲げた状態を保ち、第3関節(MP関節:指の根元の関節)を支点に指を開いていきます。
拘縮が強く指が開きにくい場合は、介助者の手で手首を固定し、お互いの第1・2関節(DIP関節・IP関節)と第3関節(MP関節)を重ねた状態を作り、MP関節を支点に曲げ5秒程保持してから、重ねていた手の力を抜きましょう。そうすると指が開きやすくなる、といわれています。
まず、患者の手首を固定するため、相手の指全体を包むように手を下から入れます。次に、前腕を固定した状態のまま手首を内側に曲げ(屈曲)、その後手首を手の甲の方に曲げます(伸展)。その後、手首を親指の方向に最大25度曲げます(橈屈)。最後に、手首を小指の方向に最大55度まで曲げましょう(尺屈)。
肩関節のROM訓練では、腕の挙上・外旋・内転運動を行います。
腕の挙上運動では、横になった状態の患者の肘と手首を下から掴んでゆっくりと前方へ挙げていきます。痛みがある場合はそこでストップし、無理に関節を動かすのはやめましょう。また、内転運動では肘を伸ばした状態で側方へ開き、ゆっくりと頭上まで持ち上げ、外旋運動では肘を90度に立たさせてそのままの状態で前腕を頭上に倒します。
股関節のROM訓練では、股関節自体の屈曲・伸展、外転・内転、下肢の挙上運動を行います。屈曲・伸展運動は膝を曲げた状態で太ももを胸にくっつけたり離したりを繰り返し、外転・内転運動では膝を伸ばしたまま下肢を側方へ開いたり閉じたりを繰り返します。また、下肢の挙上では膝を伸ばしたままの状態で70度程度まで挙上させてその場でキープします。
膝のROM訓練では、膝関節の屈曲・伸展運動を行います。膝と踵を下から支えるように下肢全体を持ち上げて太ももと胸をくっつけるように持ち上げます。この際、膝は無理に屈曲させず、膝の裏側から押すようにします。
足のROM訓練では、足関節の背屈運動を行います。踵を下から支え、足の裏を腕や掌で全体的に支えるように抑え込み、脛側に倒します。この際、片手でアキレス腱に触れ、無理のない範囲で背屈を行うようにしましょう。
関節拘縮や筋委縮は、廃用症候群の他の症状を二次的に引き起こし、日常生活をさらに不自由にさせてしまう可能性があります。ROM訓練を中心としたリハビリや予防が重要です。ポイントをおさえて正しく行うためには、家族や看護療法士など関係者が連携して支えていくことが求められます。
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