慢性胃炎の治療に使われる薬剤について

2018/2/7

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

慢性胃炎になると、胃酸を分泌している腺細胞が萎縮して胃酸や粘液が分泌されない状態が続きます。このような状態になった場合、どのような薬剤が使われるのでしょうか。慢性胃炎の代表的な治療方法とともに解説します。

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慢性胃炎はどんな病気?

慢性胃炎は胃酸を分泌している腺細胞が胃炎の長期化によって萎縮を起こし、修復されないまま進行していく胃粘膜の病気です。長期にわたる慢性的な萎縮とともに、胃酸や粘液が分泌されない状態が続きます。
慢性胃炎は、かつては加齢が原因で発症するものと考えられていましたが、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)が発見されて以降、ピロリ菌の長期感染が原因であることが明らかになっています(ピロリ菌が原因ではない慢性胃炎として、メネトリエ病やクローン病、潰瘍性大腸炎などに合併する肉芽腫といった特殊型胃炎がありますが、その発症はまれと言われています)。
胃炎は臨床的には出血とびらんのある胃炎、びらんのない胃炎、特殊型胃炎に分類されていますが、慢性胃炎の場合はびらんのない胃炎と考えられています。

慢性胃炎の代表的な症状と治療法とは?

慢性胃炎に特有の症状というものはなく、胃潰瘍や胃癌と同じような症状がみられます。比較的多い症状は、上腹部の不快感や膨満感、食欲不振などで、炎症が強い時には吐き気や上腹部痛といった急性胃炎のような症状も出てきます。
慢性胃炎の治療法は、症状ごとの対症療法になります。薬を服用する場合、胃酸による過剰な攻撃を抑えて不快感や痛みを抑える薬や、胃の粘膜を保護する薬、自律神経に作用して消化管の機能を改善させる薬などが使われます。また、食事療法も行われます。1回の食事量を少なめにし、刺激の強い食べ物や脂肪分の多いものを避け、栄養価が高く消化の良い食事を摂ります。
慢性胃炎そのものは特に心配する必要がない病気と言われます。ただ、自覚症状のみでは診断できないため、胃癌など他の病気に罹っていないことを確認するためにも、1、2年に1回の内視鏡検査を受けることが推奨されています。

薬物療法で使われる薬剤について

慢性胃炎の治療で使われる薬剤にはいくつかの種類があり、症状に合わせて最適なものが使用されます。
健胃薬(胃の運動、胃液の分泌といった機能を高める薬)は、苦みや香りによる刺激で唾液や胃液の分泌を促します。消化薬(食物の消化を助け、食欲を増進させる)は、でんぷんやタンパク質、脂肪を分解して消化吸収を高めます。また、制酸剤(消化薬の効果を助けるため過剰な胃酸を抑える薬)も慢性胃炎に使われる薬で、消化酵素に最適な胃酸の状態に整えます。
消化管機能の調整薬は、消化管の働きを司る副交感神経に作用するものです。機能低下薬は胃痛や腹痛の治療に、機能亢進薬は胸やけや吐き気に使われます。
消化性潰瘍の治療薬には、胃粘液などの防御因子を増強する粘膜防御因子増強剤と、胃酸の分泌を抑える胃酸分泌抑制薬があります。
ピロリ菌が発見された場合、プロトンポンプ阻害剤(胃壁のプロトンポンプに作用して胃酸の分泌を抑制する薬)と抗生物質が除菌に使うことがあります。

おわりに:症状に合った薬剤を選ぶことが大切

慢性胃炎の症状を改善する薬剤として、健胃薬や制酸剤、消化管の機能を調整する薬があります。こうした薬は、症状に合う適切なものを選ぶことが大切です。どのような薬を選べばよいかわからないときは、自己判断せず医師に相談してみましょう。

厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】

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