脳膿瘍の手術の合併症にはどんなものがある?防ぐ方法はあるの?

2018/1/23 記事改定日: 2018/12/5
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山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

脳膿瘍(のうのうよう)とは、本来無菌であるはずの頭蓋内に細菌などが入り込み、脳に感染して膿が溜まってしまう病気です。状態によっては開頭手術が必要になることもありますが、リスクはないのうでしょうか。この記事では脳膿瘍の手術の合併症について解説しています。

脳膿瘍の治療には、どんなものがある?

脳膿瘍は、細菌感染によって生じた膿が、脳の中に溜まった状態をいいます。

脳は通常全くの無菌状態ですが、中耳炎、副鼻腔炎、心内膜炎など身体の他の部位に細菌感染症があると、そこから血液によってあるいは直接に細菌が脳に到達して、膿が溜まることがあり、これを脳膿瘍とよびます。

脳膿瘍の主な原因はブドウ球菌や連鎖球菌などの化膿性細菌ですが、その他にも多様な原因があるといわれています。感染経路は、耳鼻科疾患からの波及、血行感染、直接感染(頭部外傷、脳の手術に際して)などがあげられます。

約7~8割に頭痛が見られる他、約半数に発熱や嘔吐、約3割にけいれんが見られます。その他、感覚麻痺や意識障害なども認められます。

脳膿瘍には「保存的療法」と「外科的療法(手術)」という2つの治療法があります。

保存的療法は抗生物質の投与が基本で、脳浮腫に対しては脳圧降下薬、けいれんに対して抗けいれん薬などが用いられます。発病初期には起炎菌が不明なことが多いので広い範囲の細菌に有効な抗生物質が投与されますが、起炎菌が確定したときには最も有効とされる抗菌薬に変更されます。

外科的療法としては、穿刺吸引での排膿の他、場合によっては脳を切開したうえでの被膜を含めた膿瘍全摘出が行われます。

脳膿瘍の手術の合併症とは?

頭蓋内感染

脳は皮膚、骨、硬膜などの組織に覆われ、正常な状態では全くの無菌状態です。しかし脳外科手術で人工的に脳、硬膜、皮下組織などを露出することになるため、微生物が侵入し頭蓋内感染が拡大するおそれが生じます。

脳梗塞、脳損傷

手術中に脳を栄養する動脈を損傷し、その結果脳梗塞を生じる可能性があります。また、現在機能している脳やその周辺の神経を損傷し、機能障害を生じる可能性があります。

麻酔、輸血、薬剤などのショック、肝炎

開頭手術のためには麻酔薬、抗菌薬をはじめ様々な薬剤を多量に使用するため、人によっては、薬剤アレルギーを起こしたり、予想しえない副作用を生じることがあります。また手術時に出血量が多くなると輸血が必要となります。日本においては、輸血用に用いる血液は日本赤十字社で、肝炎ウィルス、エイズウィルス、梅毒の検査を経ていますが、非常にわずかではありますが輸血による感染症を引き起こす可能性があります。

持病の重症化、他の病気の発症

糖尿病、高血圧、肺気腫、胃潰瘍、パーキンソン病、内分泌疾患、心疾患、精神疾患といった、これまで顕在化していなかった疾患が手術を契機に発症することがあります。また既往疾患として持っている病気がより重症化することもあります。

褥創(床ずれ)

手術中は麻酔のために体は全く動きません。手術台などに接触している手足、体部、胸部など圧迫部位に褥創(じょくそう:床ずれ)を生じることがあります。

美容的な問題

開頭する際、頭蓋骨を一部切除する可能性もあり、手術後頭蓋骨が変形し美容上問題を生じることがあります。

脳膿瘍の手術が、他の開頭手術よりも合併症が起こりやすいのはなぜ?

医療面で万全を期していても、他の一般的な脳腫瘍摘出術、脳血管障害などの開頭術に比べて脳膿瘍の手術は術中、術後の頭蓋内感染拡大のリスクが特に高いとされます。

これは、脳外科手術が人工的に脳、硬膜、皮下組織などを露出する行為であり、たとえ手術を無菌下で行っても微生物の侵入を100%防ぐことは現在の医学水準からは不可能だからです。加えて、脳膿瘍は手術を行う脳自身が感染を起こし膿がたまった状態にあるため、感染が悪化しやすいことも理由といえるでしょう。

脳膿瘍と耐性菌

脳膿瘍は、脳の中に細菌感染が生じて膿の塊ができる病気です。
手術で膿瘍を取り除いたとしても、細菌を死滅させるための抗菌薬の投与が行われます。しかし、近年、抗生物質の乱用などによって抗生物質が効きにくい耐性菌が多数出現していることが社会問題となっています。

脳膿瘍の原因菌は薬剤耐性菌である場合も多く、抗生物質が効きづらいため治るまでに時間がかかったり、手術を行っても再発を繰り返すケースが少なくありません。

脳膿瘍の手術の合併症は防げる?

脳膿瘍の手術は、他の開頭手術よりも髄膜炎などの合併症を引き起こすリスクが高くなります。
このため、手術では膿瘍内の膿を正常な部位に漏らさないよう細心の注意を払いながら行われます。また、術前には膿瘍内の細菌をできる限り死滅させるために抗生物質の投与が行われるのが一般的です。

さらに、術前にてんかん症状がある場合には、術後も後遺症としててんかん症状が残ることがあるので、抗てんかん薬の長期的な投与が行われます。

おわりに:生存率は上がったとはいえ、ある程度のリスクはある。術後に異常があるときは早急に病院へ

脳膿瘍の手術は、合併症のリスクが他の開頭手術に比べて高いのが現状です。特に感染症予防については、現在の医学の最善を尽くしても限界がありますが、近年、生存率は約75%に向上しているといわれています。手術自体にリスクはありますが、治癒のためには手術が必要になる場合もあります。万が一術後に異常を感じた場合は、すぐに病院を受診しましょう。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

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