上腕骨外側上顆炎(テニス肘)の治療法にはどんなものがある?

2018/1/25 記事改定日: 2018/6/21
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

上腕骨外側上顆炎(テニス肘)とは、テニスなどのように腕を酷使するスポーツで発症しやすい整形外科疾患です。基本的には保存療法で治療が進められますが、改善がみられない場合は手術が検討されます。この記事では、上腕骨外側上顆炎(テニス肘)の治療法について解説しています。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

上腕骨外側上顆炎(テニス肘)の痛みの原因と症状の特徴

肘の外側の骨が出っ張っている部分(上腕骨外側上顆)に炎症を起こすことを上腕骨外側上顆炎(テニス肘)と言います。手首を上に曲げる働きをする筋肉の柔軟性が衰えてきたときに、腕や手首を使いすぎたり、外傷を受けたりすることで骨に付着している腱に小さな損傷を起こし発症するといわれています。ものをつかんで持ち上げる動作や、タオルを絞る動作をすると肘の外側から前腕にかけて痛みを感じます。通常、安静時は痛みはありません。

手術以外の治療法 ― 保存療法

上腕骨外側上顆炎の初期段階であればサポーターを使用して固定したり、筋肉のストレッチ、湿布や外用薬を使用で対処します。

テニス肘用サポーター

テニス肘用のサポーターには、肘や手首に装着するタイプのものがあります。
これらのサポーターは肘関節の曲げ伸ばしで生じる衝撃を吸収し、手首を固定することで手首や指を動かすときに筋肉や腱が過度に伸びたり縮んだりするのを防ぐ働きがあります。
これによって炎症を生じている腱や筋肉を安静に保ち、症状を改善する効果が期待できるのです。

ストレッチとトレーニング

テニス肘を発症した場合には、痛みを生じやすい筋肉の柔軟性を維持し、筋力をアップすることで悪化を防ぐことができます。
ストレッチは、肩から手関節までの屈伸や前腕を回すものが効果的です。また、筋力アップのためには、軽めのダンベルなどを用いて肘の屈伸や改善、手首の屈伸などを行うとよいでしょう。
しかし、これらのストレッチやトレーニングは、痛みが強い時に行うとかえって症状が悪化することもありますので、医師や理学療法士と相談して行うことをおすすめします。

ステロイド注射

症状が強いときには局所麻酔薬とステロイドの注射を肘の外側に打つこともあります。腱は血流が少ないため、治るまでには4ヶ月から半年ほどかかるといわれています。
ステロイドの注射は一定以上の期間使うことで症状を緩和することができますが、繰り返し打つと組織を弱くしてしまうデメリットがあるので、多くても2~3回までにおさえるべきと考えられています。

テニス肘は「関節鏡手術」で完治が目指せる?

半年以上治療を行っても治らない場合には、腱の断裂が重度になっている可能性が高いので治療を繰り返しても効果が得られないと判断され、手術が検討されることがあります。MRIなどで断裂部位を確認し、根治治療として関節鏡手術を行います。

テニス肘は断裂部位と上腕骨の外側がぶつかってしまうことで諸症状が現れているので、断裂部分を削ることで骨とぶつからないようにします。
手術は通常1時間程度で終わり、術後はギプスなどは使わず、多くの場合で手術翌日から肘関節を動かすことができるといわれています。
この手術で大半の人は完治するといわれていますが、どんな手術にも必ずリスクがあることは理解しておきましょう。

おわりに:関節鏡手術は治癒率が高い治療法だが、リスクも理解したうえで検討しよう

上腕骨外側上顆炎(テニス肘)の関節鏡手術は治癒率が高い治療法といわれています。外用薬やステロイド注射で改善しない場合は、検討してみてはいかがでしょうか。ただし、どのような手術にもリスクはあります。受ける前にはきちんと事前説明をしてもらい、メリットだけでなくデメリットも理解したうえで意思決定をしましょう。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

テニス肘(7) スポーツ障害(26) 上腕骨外側上顆炎(2) 肘関節障害(3) 整形外科疾患(9) 肘関節関節鏡手術(1)