記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
椎間板ヘルニアや椎間関節症などの重度の腰痛は特別な治療が必要になりますが、軽度の腰痛であれば、体操やストレッチなどで改善・予防できることも少なくありません。以降ではおすすめの体操やストレッチ、セルフケアをご紹介します。腰痛持ちの方も将来的に腰痛を予防したい方も、ぜひ参考にしてください。
腰痛の原因は、長時間同じ姿勢でいることによる筋緊張、運動不足や筋肉退化による筋力低下、過剰な動きや無理な負担、背骨の変形などさまざまです。腰痛になると、体を動かしたときだけでなく、安静にしているときにも腰に痛みを感じます。このため、自然に体を動かすことに恐怖心を抱いてしまう腰痛患者さんは少なくありません。
確かに、以前までは腰痛を起こしたら安静にすべきと言われていました。しかし近年では、腰痛があってもなるべく体を動かすことが大切と言われています。体を動かさずにいると体が硬くなり、余計痛みに敏感になる恐れがあるからです。そこで、腰痛持ちの方や腰痛を予防したい方におすすめの体操をご紹介します。
<腰痛予防体操>
1.立ち上がった状態で足を肩幅より開き、肩の力を抜く
2.指を下向きにした状態で、両手をお尻に当てる
3.上体をゆっくり反らしながら息を吐く。3秒キープしたらゆっくり元に戻す
4.1〜3を一日2回行う(腰痛持ちの人は10回)
腰痛予防にはストレッチも有効と考えられています。おすすめのストレッチをいくつかご紹介します。
おなかのストレッチは、うつ伏せの状態で手のひらを床につけ両腕を頭のほうに伸ばします。そこから腕が90度くらいになるまで両肘を曲げながらゆっくりと上半身を起こしましょう。
背中や腰のストレッチでは、あおむけになって両膝を両手で抱えて曲げます。両膝を胸に引き寄せながら背中を丸めるようにして上半身をゆっくり起こします。この動きは、背中とお腹の筋力アップにも役立ちます。
また、仰向けに横になった状態で、上体の向きを変えずに腰から下をひねるのもおすすめのストレッチです。左右を交互に行ってください。
仕事中に行いたい場合は、立ったまま足を肩幅くらいに開いて腰に手を当て、腰を反らせてください。姿勢を戻したら、次は左右に腰を回すストレッチがおすすめです。
腰からお尻にかけてのストレッチは、両膝をたてて仰向けになった状態から、頭や背中を床につけたまま両膝を両手で抱え込みましょう。
ただし、ストレッチをするときは、腰の痛みが強くなったり、違和感が出るくらいまでやらないように注意してください。ストレッチ中に痛みなどが出たときはすぐに中止し、医師に相談しましょう。
日常生活では、まず、姿勢に気をつけるようにしましょう。調理台やアイロン台では前屈みにならないように自分に合った高さに調節することをおすすめします。
また、椅子は深くすわり、背筋を伸ばして過ごすように心がけ、腹筋と背筋を鍛えて姿勢を保ちやすい体作りをしていきましょう。ただし、腰痛があるときは無理のない範囲で行うようにしてください。
靴やバッグの持ち方も見直したり、ヒールの高い靴や厚底靴を避け、安定感のある靴を選ぶようにすることも大切です。日頃から重みが両肩に均一にかかるリュックサックを使うことをおすすめしますが、ハンドバッグを持たなければいけないときは、こまめに手を変えるようにしましょう。また、重いものを力まかせに持ち上げることは、腰を痛める要因になるので絶対に避けるようにしてください。
腰痛の治療は、代表的なものが4つあります。
ひとつは、薬物療法です。痛みの種類に合わせて薬剤を使用します。近年では、神経の痛みに効果のある薬も普及しつつあります。神経ブロック療法では、局所麻酔やステロイド薬で痛みの伝達をブロックして腰痛を軽減する治療法で、整形外科や麻酔科、ペインクリニックで実施されます。
また、運動やマッサージなどで代謝機能や身体機能を改善することでも腰痛を軽減できる場合もあります。その他、認知行動療法、リエゾン療法なども腰痛への有効性が指摘されています。認知行動療法は、痛みについての認識を修正する認知療法と、痛みと行動の関係を知って日常生活で改善する行動療法を組み合わせています。リエゾン療法は、肉体面と精神面の療法からアプローチをする治療法で、複数の診療科の医師が連携して治療を行います。
腰痛は日々の姿勢や座り方、体操やストレッチの慣行である程度予防できるといわれています。ただし、ストレッチをするときは痛みが出るほどの負荷をかけないように気をつけてください。また、体操やストレッチ中に限らず、痛みがひどくなったり、しびれや麻痺など痛み以外の症状が出てきたときは、状態が悪化している可能性があります。そのような変化を感じたときは、すぐに病院を受診しましょう。