重篤な薬疹「中毒性表皮壊死症」の症状・原因・治療法について

2018/1/17

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

薬疹とは、薬剤の投与が原因で現れる症状です。軽症であれば薬の中止で改善しますが、重症化すると中毒性表皮壊死症やスティーブンス・ジョンソン症候群などに進展してしまう可能性があるのです。下記の記事で詳しく解説していきましょう。

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薬疹とは?

薬疹とは、薬剤が原因で皮膚や粘膜に生じる発疹のことです。
薬剤を用いてから発症までの期間はさまざまであり、症状も多岐にわたります。麻疹や風疹のような細かい赤い斑点がでるときもあれば、じんま疹や湿疹、光線過敏症などが出たり、薬を用いるたびに同じ場所が丸く赤くなって色素沈着を残すこともあります。

発熱とともに大きな赤い斑点や水ぶくれが全身に現れたり、さらにそれらの皮膚症状に加えて結膜や唇などの粘膜に症状を伴う「スティーブンス・ジョンソン症候群」などのような重症例もあります。

薬疹のひとつ、中毒性表皮壊死症はどんな病気?

中毒性表皮壊死症は、高熱や全身倦怠感などと共に、口唇・口腔、眼、外陰部をはじめ全身の広範囲に紅斑や水疱、ただれが出現する病気です。

中毒性表皮壊死症とスティーブンス・ジョンソン症候群は同じ疾患群「重症多形滲出性紅斑」に属し、大部分の中毒性表皮壊死症はスティーブンス・ジョンソン症候群から進展して生じます。日本では、水疱、びらんなどで皮膚が剝けた状態が体表面積の10%未満の場合をスティーブンス・ジョンソン症候群、10%以上の場合を中毒性表皮壊死症と診断しています。

幅広い年齢層で発症し、詳細な原因は解明されていませんが薬剤や感染症などがきっかけで発症すると考えられています。原因になる薬剤は、消炎鎮痛薬(痛み止め、熱冷まし)や抗菌薬(化膿止め)、抗けいれん薬、高尿酸血症治療薬などです。また、総合感冒薬(風邪薬)のような市販薬が原因になることもあります。

中毒性表皮壊死症の代表的な症状と経過について

スティーブンス・ジョンソン症候群と症状(全身症状、全身の発疹、水疱の出現など)は似ていますが、それに加えて表皮がより重篤に障害されることが特徴です。
全身の皮膚は炎症を起こして真っ赤になり、かすかに表皮に触れただけでも皮膚が大きくはがれ、剥ける体表の割合は全身の皮膚の30%に達するとされ、脱毛や爪の剥脱も生じます。重症のやけどと類似しており、表皮がなくなってむき出しになった真皮部分から体液や塩成分が浸出します。

そのため悪化すると感染症にかかりやすくなります。肝臓や腎臓、肺、消化管などの内臓の障害を伴うことも多く、適切な治療により回復するといわれていますが、敗血症や多臓器不全により死亡するケースもあります。特に、皮膚や粘膜の病変の範囲が広い場合や、高齢者やコントロール不良の糖尿病、重症の循環器疾患や腎疾患を有している人では死亡率が上昇するといわれています。

また、皮膚が治癒した後も呼吸器の病変が長引くと、閉塞性細気管支炎という合併症を発症することがあります。眼が侵された場合にはまぶたと眼球結膜の癒着、角膜の潰瘍、視力障害、ドライアイなどの症状が残ることがあり、重症の場合は失明の恐れもあります。

中毒性表皮壊死症はどうやって治療するの?

副腎皮質ステロイド薬の投与を中心にした入院治療が一般的です。短期間に大量の副腎皮質ステロイド薬を点滴で投与するステロイドパルス療法が行われる場合や、免疫グロブリン製剤の大量投与や血漿を入れ換える血漿交換療法を併用して治療することもあります。

おわりに:薬を飲んで湿疹などの皮膚症状が出たときは、すぐに病院に相談しよう

薬疹は軽症であれば該当薬品の服用中止のみで完治しますが、重症になると生命が危ぶまれるほどの症状が現れます。中毒性表皮壊死症は重症薬疹の代表ともいえる疾患で、集中的な治療が必要になります。薬剤により疑わしい症状が現れた場合は、ただちに受診し適切な治療を受けましょう。

厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】

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