記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/3/1 記事改定日: 2018/11/8
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
食道粘膜の静脈の壁が膨れ、瘤のようになる「食道静脈瘤」。現在、この食道静脈瘤に対しては、内視鏡手術での治療が主流となりつつあります。
詳しくは以降で解説していきます。
食道静脈瘤とは、食道粘膜の下にある静脈の壁が膨れて血管が瘤のようになる疾患です。食道静脈瘤を放置すると、瘤のようになった静脈が突如として破裂し、吐血(血を吐くこと)や下血(お尻から血が出ること)を伴うことから、緊急の治療を要する危険性もあります。出血多量で死に至ることも少なくないため注意が必要です。
食道静脈瘤は、出血しない限り自覚症状がほとんどありませんが、稀に胸のつかえ感などを認める場合もあります。突然の吐血や下血によって、初めて食道静脈瘤であることに気づくことが多いです。ただ兆候に気づくのが非常に難しいため、治療が手遅れになる場合もあり、最悪の場合死に至ることもあります。
食道静脈瘤の治療法には、「①内視鏡的治療」「②IVR:Interventional Radiology(画像診断)を施行しながら、カテーテルテクニックまたは穿刺術を利用した治療」「③外科的手術」「④薬物治療」「⑤保存的治療」の5つがあります。
いま、食道静脈瘤治療の主流となっているのは、「内視鏡的硬化療法(EIS)」と「内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)」と呼ばれる治療です。
内視鏡的硬化療法は静脈瘤を完全に消失させることが目的の治療で、静脈瘤の内外に小さな針を刺し、そこから界面活性剤を注入することで静脈瘤の破裂を防止します。
内視鏡的静脈瘤結紮術は、ゴムバンドを用いて食道静脈瘤を結紮することにより、血栓性閉塞を引き起こそうとするものです。静脈瘤を結紮することによって血流が阻害されるので、静脈瘤は壊死し脱落します。
食道静脈瘤の治療は非常に難易度が高いです。静脈瘤がある消化管の壁は非常に薄いため、瘤を剥ぎ取るのは非常に細かい手技が要求されます。そのため、一歩間違えれば胃や腸に穴があいて、胃酸や腸液が腹部に漏れ、腹膜炎という重篤な腹部の炎症を引き起こして緊急手術が必要となるリスクがあります。
また、食道静脈瘤の手術によって生じる頻度が高い合併症として、胸痛、発熱、食道潰瘍、食道狭窄、腎機能障害などが挙げられます。これらの合併症のほとんどは経過観察や内服治療によって改善します。ただし、合併症として高度の食道狭窄を起こした場合には食道を医療用バルーンで拡張するなどの処置が必要となります。
食道静脈瘤は、静脈瘤が形成された食道の一部を切除し、断端同士をつなぎ合わせる手術が行われます。非常に難易度が高い手術ですが、静脈瘤を確実に取り除くことができます。
しかし、食道静脈瘤は門脈圧の亢進に伴って形成されるため、門脈圧亢進の原因となる肝硬変やアルコール性肝炎などの疾患の治療を行い、門脈圧を低下させなければ、他の静脈に再び静脈瘤を形成する可能性もあります。
術後も再発予防のため、しっかりと適切な治療を続けましょう。
破裂の可能性が少ない軽度な食道静脈瘤では、薬物療法を行いながら経過観察されることもあります。使用される薬剤は、門脈圧を低下させるバソプレシンやβ遮断薬、亜硝酸薬などです。これらの薬剤は効果に個人差があるため、定期的に内視鏡で検査をしながら、食道静脈瘤の拡張がないかどうかを確認する必要があります。
また、血圧が高い人では降圧薬によって厳重な血圧管理が行われ、門脈圧亢進の原因疾患に対する薬物療法も同時に行われます。
食道静脈瘤の治療においては、実はストレスを解消することも非常に重要です。ストレスがたまるような多忙な生活を送っている人は、食事時間の不規則・早食い・夜食など、内臓脂肪のたまりやすい食習慣となりがちです。すると肥満を招き、糖尿病・高血圧・脂質異常、メタボリックシンドロームを引き起こします。
そしてメタボリックシンドロームとなると、血圧が上昇することから静脈瘤が破裂する危険性が高まります。食道静脈瘤は治療後であっても再発する可能性があるため、治療後もストレスを解消することを心がけ、血圧が高くならないようにすることが大切です。
食道静脈瘤の治療法にはさまざまなものがありますが、合併症のリスクを伴う治療もあります。食道静脈瘤の治療を受ける際には、各治療法のメリット・デメリットを把握した上で、適した治療法を選択することが重要です。
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