記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/10/26
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
肝臓がんとは、肝臓にできるがんのことで、原発性のものと転移性のものがあります。いずれの場合も放置しておくと肝臓の機能そのものが失われてしまい、生命の危険につながります。
肝臓がんになると、どのような初期症状が出るのでしょうか?また、原因はお酒によるものなのでしょうか?
肝臓は、「沈黙の臓器」とも呼ばれ、何らかの不具合が起きても自覚症状がないことがほとんどです。肝臓がんの場合も初期には全くの無症状であることが多く、気づかれにくいため発見が遅れてしまいます。
肝炎・肝硬変などの肝臓障害の場合は症状が出ることもありますが、多くは食欲不振や全身倦怠感、腹部膨満感などの漠然とした症状であり、黄疸や吐血などの症状も進行した肝硬変と診断されてしまうことが多いです。つまり、肝臓がんを疑う特有の症状は存在せず、症状が出たとしても重篤なものと自覚していない場合がほとんどなのです。
肝臓がんで症状が出るのは、肝臓全体の働きが損なわれるレベルまで進行してしまった状態になってからです。浮腫・黄疸・腹水・肝性脳症(神経症状)のほか、みぞおちに固いかたまりがあるのが触ってわかったり、腹部のしこり・圧迫感、痛みなどを感じる人もいます。
また、がんの大きさの大小に関わらず、がんが破裂して腹腔に大出血を起こす場合があります。破裂が起こると腹部の激痛と血圧の低下が起こり、貧血のみならず急速に生命が危険な状態になることもあります。がんが肝臓内の門脈という大きな血管に進展すると、食道静脈瘤破裂を引き起こすこともあります。
こうした破裂の状態になると、治療は困難を極めます。すなわち、手遅れになってしまうことが多く、症状が出たときには余命1ヶ月と診断されることも少なくありません。したがって、肝臓がんは自覚症状が出る前に腫瘍を発見し、早期に治療を始めることが必要不可欠なのです。
肝臓は、本来はがんができにくい臓器です。これは、肝臓自体に解毒作用があることに関連すると考えられています。実際、原発性という肝細胞自身ががん化した肝臓がんは肝臓がん全体の25%程度なのに対し、他の臓器から転移してきたがん細胞によって引き起こされる肝臓がんは肝臓がん全体の75%を占めています。
肝臓ががん化する原発性の肝臓がんの場合、原因は慢性的な肝炎や肝硬変を繰り返すことだと考えられています。B型・C型肝炎ウイルスに感染した状態が長期に渡ると、肝細胞の破壊と再生が繰り返されます。肝臓は再生力の強い臓器であり、破壊と再生を何度も何度も繰り返してしまうことで、遺伝子の突然変異がどんどん積み重なっていき、最後にはがん化してしまうのです。
これらのことから、肝臓がんの原因はお酒よりもウイルスによるところが大きいと言えますが、肝炎ウイルスに感染している人が飲酒をすると、発がん率は高くなります。また、近年では肝炎ウイルスを伴わない肝臓がんが増えているという報告もあり、その主な原因は脂肪肝と考えられています。脂肪肝の原因には多量の飲酒・肥満・糖尿病なども含まれますので、お酒が無関係であるとは言い切れません。
肝臓がんの予防のためには、肝炎ウイルスに感染しないことが何よりも重要です。また、既に肝炎ウイルスに感染してしまっている人は、がんを発症しないために予防することが大切です。
B型肝炎ウイルスは、ワクチンで感染予防ができます。C型肝炎に対抗するワクチンは開発されていませんが、感染経路は感染者の血液からであることがわかっています。ですから、感染者の血液には触らず、歯ブラシやカミソリなどを共有しないことが重要です。
既に肝炎ウイルスに感染してしまっている人は、ウイルスの増殖を抑え、活動を抑制する抗ウイルス剤を用いることで発がん率を下げることができます。また、3〜6ヶ月ごとに腹部超音波検査など、定期的な検診を受けることは、肝臓がんを発症したときの早期発見につながります。とくに、C型肝炎ウイルスは高確率で治療することが可能ですが、肝炎ウイルスが消失した後に肝臓がんを発症する例も報告されているため、定期的な経過観察は必要です。
そのほか、食生活や生活習慣で、以下のようなことに気をつけると良いでしょう。
標準的な体型を保ち、肥満や糖尿病を放置せずにきちんと治療することも、肝臓の負担を減らすという上で非常に大切です。
肝臓がんの主原因は、肝炎ウイルスです。ですから、まずはB型・C型肝炎ともにウイルスにかからないよう予防することが重要です。禁煙や節酒など、日頃から肝臓に負担をかけないような生活を送ることも大切です。
また、肝臓は沈黙の臓器とも呼ばれ、手遅れになるほどの時期になるまで症状が出ないことがほとんどです。しかし、定期的に検診を受けることで早期発見につなげることができ、治療によって助かる確率を上げることができます。
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